村の顔役
「私も随分と驚きました。ここは私の知人と同族の人が多いのですね」
ゾウがそこでお義父さん達の会話に入りますぞ。
「知人さね?」
「ええ、ラーサズサという奴なんですけどね」
「ほう……あの子を知っていてその巨漢……種族、出で立ちからしてゼルトブルの闘士、エルメロと判断するがこの村に何のようさね?」
「! このような場所にまで私の話が来ているとは驚きです」
ゾウはゼルトブルで有名な闘士ですからな。
パンダとは闘技場でライバルとしてよく戦っていたそうですぞ。
パンダの養父は商売関連で顔が広いそうですからな。きっとゼルトブルの話は色々と耳にしているのですぞ。
「エルメロちゃん有名人なのねーお姉さんサイン貰っちゃおうかしら」
「あなたね……むしろあなた参加したら有名人なんてすぐになれるでしょ」
お姉さんのお姉さんは相当に腕が立ちますからな。
クラスアップしてなくても技術は一流なのですぞ。
「その女王様の足で踏まれたいわー」
「貴方知ってるでしょ! 何処で耳にしたのよ!」
ゾウがお義父さんと俺を見てますぞ。ただ、ゾウとお姉さんのお姉さんの問答に苦笑もしてますな。
お義父さんもどう答えるのがよいかと判断しているのですな。
パンダの養父は気の抜けた様子のお姉さんのお姉さんに若干警戒が緩んだようにも見えますな。
「彼女は俺が雇用していましてね。どうやらこの村はそのラーサズサさんという方の同族の村だったようですね」
「そのようさね。けどあの子は村には帰ってきて無いさね」
「そうですか。もしや腕の立つ者とはそのラーサズサさんの事でしょうかね」
「昔という話からして違うんじゃないさね?」
会話の切り口としてパンダを引き合いに出してお義父さんとパンダの養父の攻防が進みますぞ。
そんなやり取りをしているとかなり面倒そうにパンダの祖父がノシノシとやってきましたぞ。
パンダの養父がこれ以上来るなと視線を送ってますが知らないとばかりに近づいてきましたぞ。
「なんだ。こんな所で妙な空気を漂わせて」
「そんな空気は無いさね」
「ええ、初めまして、本日この村に立ち寄らせていただいたものです」
パンダの養父とお義父さんがパンダの祖父に問題ないと各々応答しますぞ。
「はあ……警戒しすぎだ。確かにこんな村にわざわざ人間共が来るって所で怪しむのは分かるけど、妙な真似したら力で追い返せば良いだけだ」
気持ちはわかるが話が進まないとパンダの祖父がお義父さんと俺へと殺気をこれでもかと飛ばしてきましたな。
ふむ……この程度、カほども怖くないですぞ。
お義父さんは比例攻撃を受けると怖いでしょうが下手に争う気配を見せねば平気でしょう。
「!!」
「あらあら」
ゾウとパンダが殺気に反応してますな。
ですが直後にフッと殺気が霧散しますぞ。
「で? 何の用でここに?」
「隠居した腕の立つ者に会いに来たそうさね」
「ああ、たぶんワシだな。それでワシに会えた訳だがどうする? 勝負でもしに来たのか?」
相手になるぞとばかりにパンダの祖父が背中に背負ったキセルを持ち出しますぞ。
お義父さんは違うとばかりに手を振りましたぞ。
「いえいえ、そこまで腕が立つ方なら俺の配下に色々と教えて貰えないかと思って確認に来たにすぎません」
「ほう……配下か」
「はい。腕が確かなら……来ていただいても良いですしこの村で稽古をつけてもらうでも良いです。報酬は……金銭は興味が無さそうですね」
「まあな」
「ならば……あなたが断ったらメルロマルクの方で腕の立つ方、噂に聞くあなたとよく似た戦いをする方に声をかける予定ですのでそちらに頼みます」
「! 奴を知ってやがると? 本当か?」
ここでパンダの養父、クジャク獣人の方が何か気づいたのかハッとした顔をしてましたぞ。
「おいさね。もしかしてこの方……盾の勇者様じゃないさね?」
「あ? なんでそうなんだ?」
怪訝とするパンダの祖父に養父が答えますぞ。
「シルトヴェルトの密かな情報にあるさね。盾と槍の勇者が密かにメルロマルクとシルトヴェルトを行き来しつつセーアエット領の領民の保護活動をしてるって」
なんと、こんなところにまで噂が流れているのですかな?
と、思いましたがどうやらパンダの養父の情報網の能力が非常に高くシルトヴェルトの情報を掴んでいたにすぎないそうですな。
お義父さんは本物であると証明するために盾の形状を変えてますぞ。
俺も合わせて槍の形状を色々と変えてやりましたな。
「では軽く手合わせをしますかな? 実力を見れば本物だと思うはずですぞ」
「ほう……良いだろう」
パンダが一歩前に出た俺に向けて構えますぞ。
なので俺も構えましたな。
「元康くん、相手は強くても老人なんだから、手加減というか殺したりしないでね?」
おお、シルトヴェルトに行った時のお義父さんと同じことを言われてしまいました。
懐かしいですな。
「当然ですぞ」
「本当に槍の勇者なのか試そうじゃないか」
「いつでも来いですぞ」
「でりゃあああ!」
パンダ老人が煙管を俺に向けて叩きつけてきますぞ。
前にも見た動きですな。
流れるように気を折りまぜて切り上げて来るのでそれを往なして逆に気を流し込んで跳ね飛ばしは……上手く流されるのは分かってますぞ。
「おお……!」
それでも跳ね飛ばしてやるとパンダの祖父は楽し気な表情に変わりましたぞ。
パンダの祖父は空中制御を上手くして着地すると煙管を地面に叩きつけて突進してきましたな。
何度も稽古をしてるので動きは分かりますぞ。
肉弾連撃に蹴りからのたたきつけですな。
それを全部往なして流し込まれた気をそのままパンダの祖父に返して怪我をしないように地面に叩きつけてやりました。
「おおう! 血が滾る! やるじゃないか!」
まだまだ行くぞー! っとパンダの祖父が楽しい相手を見つけたとばかりに笑顔になってこっちに猛攻をしてきますぞ。
戦いを心の底から楽しんでいるスタイルなのは知ってますぞ。
執拗な連続攻撃、息切れするまで続くのですぞ。
老婆と再会すると毎日戦っていましたからな。
そうして往なし終えるとパンダの祖父は息切れをしてましたな。
「ゼェ……ゼェ……なんだかんだ、ワシも衰えたもんだ。もっと……やりたいってのに体がついていかねえ」
「おお……さね」
そんな戦いをパンダの養父が言葉を失うようにしてみてましたぞ。
「これで信じてくれますかな?」
「ああ……お前が、腕が立つってのは認めてやる……が、お前が教えりゃ良いんじゃねえか? こっちが相手してほしいもんだ」
「そこは色々とありましてね」
俺もそこまで暇ではないのですぞ。フィロリアル様達と遊ぶという大事な仕事がありますからな。
ゆくゆくはフィーロたんと楽しいドライブをするのですぞ。
ユキちゃんやコウとも楽しくですな。
稽古もたまにはいいですが毎日は嫌ですぞ。
「では話を聞いて貰っても良いですかな?」
「ああ、勇者が本物か偽物かは関係ない。その技術はあいつしか知らないはず。あいつに会えるってなら話に噛ませてくれ」
パンダの祖父は気を老婆との戦いの末に独自に模倣して習得したという人物ですからな。
老婆と会って再戦を望んでいるとの話ですぞ。
「交渉は成立って事で良いでしょうかね」
「そのようさね。しょうがないさね」
上手くまとまってしまったとばかりにパンダの養父は手を上げますぞ。
「とても良い村みたいですね。あなたとその方が守っている場所なんですね」
「そうさね」
「ラーサズサさんは幸せ者ですね。俺は会った事は無いですが、わかりますよ」
「そう言って貰えると嬉しいさね。ただ、あの子は最近、全然ここに帰ってこなくて寂しいさね」
寂しがるパンダの養父にお義父さんがポンと肩に手を置きました。
「……なんとなく、あなたはあの子が気に入りそうさね。見つけたら話をして欲しいさね」
「はい。むしろ色々と困らせてしまいそうな気もします」
「ははは、お手柔らかにさね」
とりあえず交渉は上手く行ったようですぞ。




