やんごとなき疑惑
「他に血筋や資質の関係で異なる獣人化が体に出て寿命を縮めたと言う者の話もあります」
「あーオオカミとヘビとかが同時に出てキメラみたいになってしまったみたいな?」
「はい。滅多に存在しませんがこの場合は遺伝性混成獣化という病になります。治療に関しては片方の獣人化を抑制するように意識する事になります」
「そう言った病もあるのが実に異世界らしいなぁ……」
「まあ、短所でもありますが長所にも出来るのがこの症状の強みですね」
「あ、場合によってはオオカミ、場合によってはヘビみたいな?」
お義父さんの返事にシルトヴェルトの使者は頷きました。
「はい。ちゃんと制御出来れば複数の獣化が可能な優れた者となります。仲間との合唱魔法を引き金に使いこなすものもいるとの話や勇者の協力で使いこなしたと言う逸話もあるそうです」
ライバルがコロコロと姿を変えるのを思い出しました。
そう言えば助手とモグラと一緒に魔法を唱えてライバルの変身を制御していましたな。
「マイナス面だけ見ずに良い方向も見て行かないと、上手くクラスアップやLvアップで症状の改善が出来れば完治の可能性だってあるって事だし」
「はい」
「後はそれこそ薬とか医学、錬金術の研究とかで治せたり出来ないかな?」
「出来なくは無いと思いますぞ」
俺の返事にお義父さんがこちらを見ますぞ。
そんなに見つめると照れてしまいますな。
ですが事実ではありますぞ。
この元康、フィロリアル様が空を飛びたいとお願いしたらフレオンちゃんさえ居ればフィロリアル様を空を飛べるようにして差し上げるのですぞ。
なので人体改造などお手の物ですな。
「え? 元康くん出来るの?」
「出来ますぞ。人体改造ですな。今までのループで手に入れた技能の中にあるのですぞ」
ちなみにお義父さんもある時出来ましたな。何やら呪いの武器で解放された代物だそうですが俺の場合は別コースで取得した正式版みたいなものだそうですぞ。
世界各地の素材や武器などを槍に記憶させる事で錬金術系の技能は網羅したのですぞ。
フィーロたんに呪いの武器は使うなと言われておりますのでこの元康、約束はしっかりと守りますぞ。
「俺がお前を人体改造してやりますかな? 何ならウサギではなくリスにしてやりますぞ」
このウサギ男、屁理屈を捏ねるところやサッと雑種のリザードマンを盾にしている所が錬を盾にする樹を彷彿とするのでリスがお似合いな気がしているのですぞ。
樹はリスーカになりますからな。
何より、樹を相手に正義を語っていた所から似たもの同士なのでしょう。
あのお義父さんがウサギ男を選んだのは樹に嵌められたと思ったからですから印象が重なっていたのかも知れませんぞ。
ならお前はどうなんだ? と思うかも知れませんがあの状況を盗み見て俺と印象が重なる奴隷がいなかったからお姉さんになったんだと分析しますぞ。
いえ……俺でもこのウサギ男がギリギリでしょうかな? 今、改めてウサギ男の顔を確認すると中々に顔が整っていますぞ。
身なりを整えていれば悪くはない見た目になってますな。中々のイケメンの素質があるのですぞ。
アレですな。前にどこぞの姫豚に憑依した豚が脳裏に描いていたシナリオで周囲にいるイケメン達の中に混じっていても不思議じゃ無い顔ですぞ。
実は奴隷の身分に落ちて居るやんごとなき立場の者というお約束ですな。
……あり得ますな。
お姉さんのお姉さんがお姉さんを大事にする反応から俺の直感でお姉さんも何かある気がしますぞ。
生憎、それらしい話は殆ど見聞きしませんがな。
お姉さんのお姉さんは口が堅すぎてお姉さんの両親が小金持ちの家の出かな? と言う認識程度ですがな。
考えを戻して、そんな顔の程よいウサギ男に俺を重ねても不思議ではありませんな。
ウサウニーになれる変身魔法を持つ俺からしてウサギは見過ごせませんぞ。
ウサギは可愛いのですぞ。お義父さんに撫でられたいですな。
なのであの時、お義父さんがお姉さんを選んだのは何か別の理由があるのかも知れませんぞ。
「ヒ!? け、結構です。ボクにそこまで配慮しなくても大丈夫ですから! ちょっと走ってきます」
サッとウサギ男は雑種のリザードマンとお義父さんを盾にしてその場から離れて行きますぞ。
「なんでテオを脅してるの?」
「脅してはおりませんぞ。ただウサギよりリスの方が似合うと思ったので提案したまでですぞ」
「齧歯類繋がりとでも言う気? さすがにそんな改造をテオは望まないと思うけどな……」
「あんまり怖がらせるような真似をするのはどうかと思うぞ……」
雑種のリザードマンがため息交じりにお義父さんの意見に同意してますぞ。
「まあ、さっきは発作で腕が獣化しちゃったけど頻度はかなり減ってきてるからもう少し様子見で良いと思うよ。それこそLvアップやクラスアップをして問題が出てきたらお願いする形でね」
「……そうだな」
雑種のリザードマンが何故かそこで同意してましたぞ。
後に分かる事ではあるのですが雑種のリザードマンは獣人化出来ないのがコンプレックスで望まぬ症状で出るウサギ男の変身を複雑な気持ちで見ていたとの事ですぞ。
「むしろ槍の勇者様に出来ない事を探す方が難しいような気もしてきました」
「あはは……まあ、元康くんだからね」
「あの酒女を相手にはさすがに出来ないらしいがな」
と、雑種のリザードマンが呟いていました。
確かにお姉さんのお姉さん相手は難しいですな。パンダもですぞ。
そう言えばパンダを改めて勧誘するのを忘れてました。
お義父さんに相談しておきましょう。
「そうですぞ。お義父さん」
「ん? どうしたの?」
「実は――」
「ここにエルメロさんの戦友がいるの?」
「この国に来た際にはよく使っている酒場ではありますね」
「あらー良いお酒あるかしら」
シルトヴェルトの酒場に俺たちは来てますぞ。
俺とゾウ、お義父さんにお姉さんのお姉さんとでパンダの勧誘へと再度来たのですな。
シルトヴェルトの使者はこちらに来たので報告に行ったようですぞ。
まあ定期的に奴隷をこちらに降ろしていますがな。
ついでにクラスアップ関連の手配を事前にしておくとの話ですぞ。
お義父さん曰く、波では意図的にLvは40以下にしておくつもりだそうですな。
怪しまれないようにする配慮だそうですぞ。
という話は後にしてパンダの勧誘ですぞ。
俺ではパンダを上手く説得できませんでしたがお義父さんにお姉さんのお姉さんが居れば間違いなく出来るでしょう。
更に念には念をでゾウの裏付けまですれば絶対にパンダを連れていけますぞ。
客寄せパンダとしてお義父さんがサーカスで雇用するのは間違いないのですぞ。
酒場に入って俺たちはそれとなく酒を注文して待ちますぞ。
あ、ゾウが顔見知りという事で酒場のマスターなどに声を掛けに行きますな。
「ここのお酒はどんなものかしらねー」
「サディナさんはシルトヴェルトに来たことは無いの?」
「立ち寄った事はあるけど、通り過ぎただけね」
などと話をしていると酒が運ばれてきましたぞ。
お姉さんのお姉さんが豪快に一気飲みをしますぞ。
「あら、中々いいお酒があるみたいねー」
「元康くんが紹介したいって人と会うんだから程々にね」
「分かってるわよ。お姉さんもナオフミちゃんたちと内緒でお話したい所だったし」
「何かある感じ?」
「そうねー具体的にはラフタリアちゃんたちになるのかしらね」
お姉さんのお姉さんが若干困った様子で俺たちに打ち明けてきましたぞ。
どうもお姉さんのお姉さんもお義父さんと同じ方針でサーカスにお姉さんたちを参加させるのはどうするか曖昧にしていたそうですな。
ですがお姉さんたちの熱意がどんどん膨らんでおり、ゼルトブルのサーカスなどを巡って研究をかなりしていらっしゃるとの話でしたな。
そしてお姉さんのお姉さんを観客として日々練習の成果と熱意を語ってきていてお義父さんを説得してほしいとお願いしているそうですぞ。
さすがにお姉さんのお姉さんもお姉さんたちの熱意に押されてお義父さん達に相談することになってこうして打ち明けているとの話ですぞ。




