クラスアップ治療
お義父さん曰く、三人の奴隷の中でウサギ男は一番Lvアップが早いそうですぞ。
雑種のリザードマンがLv25の所をウサギ男はLv33という速度で上がっているとか。
種族差とかいろいろと理由があるのかな? と判断しておりました。
ちなみにお義父さんはクロちゃん達フィロリアル様と一緒に魔物を倒しにいって大幅にLvを上げて強化方法をすべて行っているので儀式魔法でも倒せないようにはなっていただいてますぞ。
しかし……Lvアップが早いけれどステータスの伸びが悪い。魔法資質が全属性とは……そうですな、リースカみたいですぞ。
ただリースカよりもステータスは伸びているのではないですかな?
奴はLv80までほとんど伸びないのですぞ。のびているだけマシな領域ですかな。
Lvアップが早いのでしたら資質向上でステータスを伸ばすなど造作も無いですぞ。
「……Lvだけが全てではないだろう」
「ええ、わかってますよ。今は魔法も覚えようとしてるだけです」
「ちゃんと、戦闘稽古にも戻って来い」
「……はい」
何やらウサギ男が複雑な感情の籠った様子で頷いていますぞ。
ふむ? アレですかな? お姉さんの代わりをウサギ男がした場合、ほかに比べる相手がいなかったから近接で短剣を振るっていたとかでしょうか。
ですが今回は雑種のリザードマンやヴォルフがいるので役割を考えて魔法を覚えようとしているとかでしょうか。
お姉さんがループ次第で剣を使わずに魔法をメインにしているようなものなのかもしれませんな。
「そんな機嫌悪くしないでください。ボクだっていつまでもシオンに遅れは取りませんよ」
と、雑種のリザードマンの期待に応えるように苦笑しながら腕を上げるウサギ男ですがその腕がビクっと痙攣して毛がビシっと生えますぞ。
「う……いたたた……あはは。締まりませんね」
関節が曲がったのを困ったようにウサギ男は苦笑してました。
なんだかんだ時々発作のように体の一部が勝手に変わってしまっていますからな。
そんな獣化したところを雑種のリザードマンは見つめていました。
「獣人化か……制御できないのは大変だな」
「ええ、最近は大分症状がよくなっては来てますよ。岩谷様が日々ボクにマッサージしてくださっていますので」
ほら、と発作が収まって元に戻った腕をウサギ男は見せますぞ。
折れることなく元の腕には戻ってますな。
そういえば片手が使えない様子でしたが今は両方の手が使えるようになってますぞ。
「もっと根本的に治すか症状の劇的な緩和が出来れば良いんだけどね。そうすればテオも自由に動けるようになると思うし、ステータスの伸びとかもその辺りが関わってるかもしれない」
お義父さんがそう呟きますぞ。
「今でも十分です。むしろ恵まれた環境だと思っていますよ」
ウサギ男がそう答えますぞ。
雑種のリザードマンも同意と言った様子でため息をしてますな。
「勇者様、どうしました?」
ここでシルトヴェルトの使者がテントの中に入ってきて休憩中のお義父さんに聞いてきましたぞ。
「ああ、テオの病気ってシルトヴェルトの方だと治療法とかわかって無いのかな? 治し方とかあれば良いんだけどさ」
「確か遺伝性獣化不全でしたでしょうか?」
「うん」
「何分……シルトヴェルトは弱肉強食な所がありまして生まれつき劣る者への配慮に関して足りない所があります」
「そういった研究はしてない感じ?」
「いえ、何かが劣っていたとしてもそれを補う何かの可能性があるので、無いとも言い難いです。ただ全体的にこう……力に重きを置くところがありまして、知将は中々……」
「ゾウの養父が知略に優れた将軍だったそうですぞ。確か……ジャノンとか言った気がしますな」
よく忘れる俺ですがコウやフィロリアル様と仲良くしているゾウに関してはしっかりと覚えてますぞ。
「ジャノンですか……ええ、確かに過去の戦いで名を馳せた知将ですね。エルメロはあの知将に教育された騎士でしたか……道理でプハントの者にしては教養があると思いました。納得です」
そうですぞ。ゾウの実家は愚かな脳筋一族ですからな。
ゾウが本気になれば簡単に倒せる雑魚共ですぞ。
「私も専門家ではありませんので何とも言えませんが獣人化には高いLvが必要な者が居ます。ほかにクラスアップすることで資質が開花する者もいる事が分かっています」
虎男などが確かLvアップをすることで獣人化することが出来るようになったとの話がありましたな。
他にクラスアップで資質が開花……思い出しました!
お姉さんがラフ種のクラスアップをすることでラフ種の獣人になっていましたな。
余計な事を思い出すなとお姉さんが怒っているような気がしますが気のせいでしょう。
お義父さんに撫でられて満更でもない顔をしていますぞ。
フィーロたんがそんなお義父さんとお姉さんの所に突撃して混ぜてもらおうとしておりました。
俺も混ざりたいですな。
ですぴょんですな!
「クラスアップって確かLv40以降から上げる方法だったね。もしかしたらLvを沢山上げたりクラスアップしたら制御できるようになるかもしれないって事?」
「確証を持って言えるわけではありませんね。何分……クラスアップは国が認めた者に施すものなのでホイホイと施せるわけではありません」
治療が目的でクラスアップをするというのはさすがにどうかと思うというニュアンスでシルトヴェルトの使者は言いますぞ。
「メルロマルクだと有料で許可も必要なんだっけ。確か」
「お義父さんは許可が下りないでしょうな」
「あー……うん。そうだろうね」
国の背景を思えば女王が来るまで許可は下りませんな。
「波の被害が出ている状況で嘆かわしい事だ」
雑種のリザードマンが吐き捨てますぞ。
「ええ! 波という災害が来ているのにこんな状況で争い合う事に義があるとは到底思えません。物語などで出てくる悪人がする暴挙だと何故察する事が出来ないのでしょうか」
本当にその通りですな。
ウサギ男の言葉に同意ですぞ。
「……クラスアップをしたからといって獣人化出来たら苦労はしない」
そう雑種のリザードマンは続けますぞ。
「シオンはクラスアップを経験した事があるのかな?」
お義父さんがそう尋ねると雑種のリザードマンは顔をそらしました。
それ以上踏み込んでほしくないといった顔ですな。
Lvリセットもありますからな。もしや雑種のリザードマンはLvリセットも経験しているのでしょうかな?
獣人化をしたいと思って居るけど出来なかったと言う事でしょうか?
ですが……以前のループで雑種のリザードマンは獣人化していましたが?
今は出来ないと言う事ですかな?
ふむ……していたと言う事は出来ますが言う義理も無いですな。
お義父さんに相談されたら答えるとしましょう。
「……それでテオの病に関する治療法だけど手立てとしてはLvアップとクラスアップって事で良いのかな?」
「そうも言い切れないのが厳しい所でしょうか。獣化不全が悪化するような結果にもなりかねない事もあります」
「そうなの?」
「はい。獣人化はそれだけ変化を起こす訳でして、本能に支配されて自我を失う例も散見します」
と、シルトヴェルトの使者はヴォルフを見ますぞ。
ああ、そう言えばヴォルフは獣の本能に支配されているそうですな。
「わう」
気性は荒い方ですぞ。
お義父さんに手懐けたお陰で大人しくしているとも言えますぞ。
「体の一部が獣化したまま固定化してしまう事も多いですので注意しなくてはいけないでしょう」
「……そうだね。テオは爆弾を抱えているって事だから気を付けないといけないか」
「……」
ウサギ男が悔しそうに拳を密かに握って居ますな。
焦りを感じているようにも見えますぞ。
あんまり気にするなとばかりに雑種のリザードマンが肩に黙って手を置いてますな。
良い心がけですぞ。
お義父さんのお役に立てる様に切磋琢磨するのですぞ。




