ガサ入れ
「ゾウ! 歌の練習ですな!」
「あ、うん」
「あそこにいる寝ている怠け者をフィロリアル様と協力して歌で起こすのですぞ」
「あー……難しいんじゃないかと思いますよ。昨日も寝てましたから、きっと睡眠導入として聞いているかと」
く……ゾウとフィロリアル様達の歌は不快要素は無いですからな。
「確かに怠けては居るのでしょうけど、やる事はやってるのは分かりますからね……金の目敏さはラーサに匹敵する気がするわ」
パンダは守銭奴ですが金の使い道に寄付が含まれるので怠け豚とは違うと思うのですぞ!
「勇者様に購入した奴隷をそこそこ育てて高額で売るのを提案してましたよ。勇者様が嫌がったのでため息交じりに引いてましたけどね。愛着を持っていたらこの商売はやってられないでしょって……否定のしようがありませんでした」
く……ゾウも言い返せないのですな。
確かにフィロリアル様を育てて売るというのは俺も出来ませんぞ。
奴隷なら容易く売れますが、お義父さんはお優しいですからな。
くっそですぞ。良いでしょう、お前はこのサーカスの闇の部分だけを担当するのですぞ!
そもそも行商じゃなくても関わるとはどういう了見ですかな。
まあ良いですな……赤豚を処分する際に敢えて察知させてそのままフェードアウトさせますぞ。
と、来たるべき時への計画を立てたのですぞ。
「ブブー!」
そして手土産に加入したキールはお姉さんの所に送られましたぞ。
「キールくん!」
「キールくんだ」
「ブブブー!」
ゼルトブルの治療院でお姉さん達と対面ですぞ。
大分症状もよくなったので別口で拠点を作ってそこで生活してもらうかとの話になっているそうですな。
みんなして再会を喜んでおりますぞ。
「キールくんまで連れてきて頂き、ありがとうございます」
お姉さんとご友人が揃ってお義父さんと俺に頭を下げますぞ。
「気にしなくて良いよ。君達は辛い経験をしてるんだからね」
「何度も言ってますけど……何か手伝いをさせてください」
「うーん……」
お義父さんは毎度お姉さん達のお願いをそれとなく逸らして休んでもらっているようですぞ。
ちなみにお姉さんの友人も大分回復して歩ける様になっていましたぞ。
「私たちの村の事ですから、助けられるだけじゃダメだと思うんです」
「気持ちは分かるんだけどね……」
「ブブブ!」
キールが拳を前に出して何やら言いましたぞ。
「あー……うん。サーカスをしてるね。それはエレナさんから聞いたのかな?」
「ブ!」
キールが肯定だとばかりに頷きますぞ。
「うーん」
まだ小規模ではありますが演目はそこそこ充実してるのですぞ。
お姉さん達で何が出来るのかをお義父さんは考えていらっしゃるのでしょう。
「前向きに検討はするよ。君達が今しなくてはいけないのは十分に休息を取ること、そうだね……サディナさんだっけ? その人と会った時に決めようか」
熱意は十分に評価しているとお義父さんは言ってお姉さん達の回復を待つ選択をしたようですぞ。
何でもお姉さんのお姉さんと合流して話をしてからでも遅くはないという事だそうですな。
「……わかりました」
「はーい」
「ブブ!」
お姉さん達は素直に引き下がってくれましたぞ。
というのは建前で後で判明するのですがお姉さん達は密かにサーカスの練習を始めていたのですぞ。
お手玉などのジャグリングや投げた物を受け取る練習などのようですぞ。
「さて……それじゃ、ちょっとみんなで出かけてくるね」
そう言ったのはお義父さんですぞ。
今回はゼルトブル方面に雑種のリザードマンとウサギ男、それとヴォルフを連れて実戦訓練を行うとの話ですぞ。
単純にLvを上げるだけなら俺やフィロリアル様達に任せれば出来るのですがお義父さんのお考えではこの三人の奴隷を使ったPT行動を少ししたいとの話ですぞ。
ちなみにですが監視の目を抜ける方法として全員でローブを羽織って人混みに紛れ込み曲がり角で俺がポータルを瞬時に使う等で目を抜けるのですぞ。
結構効果がありますな。
他にもサーカスに結構な頻度で街の衛兵から監査が来るのですぞ。
三勇教の干渉ですな。
その辺りは魔物商の配下と怠け豚が応対して問題無く帰ってもらっていますな。
奴隷売買をメルロマルクは禁止してませんぞ。
なのでそれを名目には出来ませんな。
まあ、人間の奴隷をここでは扱っている! ってタレコミで隈無く探されますが既に処分済みですな。
「本当に大丈夫ですか?」
「だいじょうぶー?」
と、心配そうに声を掛けるのはゾウとコウですぞ。
「そんな過保護にしなくて良いよ。さすがに守ってもらったり強い人たちに警護されながらだとみんな実戦の経験が積めないからね」
ゼルトブル方面に密かに行くので三勇教の刺客は絶対にいない状況ですな。
どうもお義父さんなりの考えで組んだパーティーらしいですぞ。
真の愛に目覚める前の俺が今のお義父さんの状況を見たら非常にむさ苦しい構成をしていると思いますが、お義父さんなりに最初の奴隷達を上手く運用しようと思っているのでしょう。
奴隷達も各々お義父さんを相手に慣れて親しく思ってきているようですな。
「なんだかんだ波という災害が近づいているんだからみんな自衛の手段を覚えておかなきゃね」
まだお義父さんは奴隷達を波に参加させるかは決めていないとの話ですぞ。そして詳しく話しもしていないとか。
ただ、それでもこの人員でどれくらい戦えるのかを確認したいとかなんとかですな。
「それなら良いのですが……」
ゾウは戦闘顧問として雑種のリザードマンとウサギ男を相手に教えているのですぞ。
支給品として斧と片手で持てる短剣をそれぞれ持たせて教えてましたな。
雑種のリザードマンは多少心得があるようで構えは様になっていたとかで、ウサギ男は短剣自体は使った事があるという程度だとか。
お義父さんはなんだかんだ色々と物資を盾に入れておりますしクロちゃんを始めとしたフィロリアル様達に少し上げてもらっているので十分に防御力が上昇してますぞ。
少なくとも刺客の攻撃を受けてもビクともしないでしょう。
「バウ!」
と、ヴォルフが自身の仕事と声を上げていますがどうやらお義父さんはヴォルフに資質向上を施してLvをダウンさせたとの話ですぞ。
雑種のリザードマンとウサギ男に合わせたLvにしているとかなんとかですな。
「行ってらっしゃいませ」
シルトヴェルトの使者も心配はしてましたがお義父さんの命令は絶対なので見送る事にしたようですぞ。
「ではコウさんも一緒に出かけるのでしたね」
「うん。リファナ達の所で遊んでくるー」
コウもお姉さん達の所に遊びに行く手はずなのですぞ。
ゾウとお姉さん達のセットでコウはしっかりと学んでもらわねばなりませんからな。
絶対に恐い思いをさせないために覚えてもらいますぞ。
「それじゃあ元康くん」
「わかりました」
「出発ですわー!」
と言う訳で俺達はゼルトブルへと飛び、お義父さんは奴隷の三人を連れて狩りへと出かけて行きましたな。
「ナオフミ様行ってらっしゃいですわー!」
「随分元気よくユキちゃんが俺を見送るなー元康くんに引っ付くその姿はどうなんだろ?」
ユキちゃんは俺の背中から引っ付いて、元気よくお義父さんを見送りますぞ。
「じゃあコウも行ってくるねー」
「後で迎えに行きますぞ」
「うん。じゃあねー今度クロも連れて行くと良いと思うー」
クロちゃんもですかな?
そういえばクロちゃんは錬を気に入りますがキールとも仲良くなるのですぞ。
ルナちゃんの確保も予定しているのでクロちゃんと連ませるのも良いかもしれませんぞ。
「元康様、ユキはみんなへの土産話が欲しいのですわ」
「はいですぞ」
俺はユキちゃんもお出かけしたいと言う事でゼルトブルのフィロリアルレース会場へとお出かけしました。




