異世界追放
「あ、あの? 挑戦致しますか?」
魔物商の配下が俺に聞いてきますな。
一応、俺も金を持っていますぞ。
昔、ライバルになる卵を持った時と同じですな。
「これをいただきますが大きく騒がないで欲しいですぞ? 後であそこにいる魔物商に報告しておけですぞ」
「は、はぁ……ですがその卵は……」
「黙っていろですぞ。金は十分渡しますぞ。これからの商売の邪魔をするのですかな?」
「い、いえ……」
「んー? もとー何してるのー?」
くっ……とクロちゃんが俺の持つ卵を見て眉を寄せますぞ。
「それ、育てるの?」
「育てませんぞ。ですが放置出来ないのですぞ」
「ふーん……」
育てないのを知ってクロちゃんは卒無く頷きますぞ。
シルトヴェルトの使者も俺のやりとりを見ておりましたが、特に何か言う気は無いようですな。
「ではお義父さん達の話もまとまって来ているので俺とクロちゃんはフィロリアル様達を回収し、お姉さん達の所へ合流しますぞ」
「わかったー早くいこー」
クロちゃんはここがどんな所か分かった様ですぐにテントから出て行きましたぞ。
そうして俺はクロちゃんとお姉さん達の所へと合流しました。
しばらくしてからお義父さんを回収して今後に備えるのですな。
ですがその前に俺は……そっと拾ったライバルが宿ったと思わしき卵を持ってとある場所にポータルで飛びましたぞ。
「ここならまず来れないですな」
飛んだ先は……何を隠そう、グラスとやらがいる方の世界ですぞ。
どうやらポータルで行く事が出来るのがコレまでのループで分かったのですぞ。
そして、ぼんやりと槍の精霊とやらが言っていたこの世界は俺達の方とグラスとやらの世界が存在するそうなので、こっちにライバルの卵を捨てておけば奴はまずこっちに来れないですぞ。
そこのフィーロたんライブツアーでしたか、何かで記録した地点に飛んで近くの草むらに奴の卵を投げ捨ててやりました。
「こっちで転生者共を相手にドンパチして魔王でもしていろですぞ! HAHAHAHAHA!」
こちらの世界は俺に任せておけですぞ!
貴様は不要なのですぞ。
「今度こそ貴様にお義父さんは渡しませんぞ! フハハハハハハー!」
と、俺はポータルのクールタイムが終わると同時に笑いながら飛んだのですぞ。
やりましたぞお義父さん! フィーロたん! ライバルはコレで来られませんぞー!
と、笑っているとライバルに寝取られたお義父さんが脳裏に浮かび、苦笑いをしておりました。
何? ライバルならしぶとくこっちの世界に来る?
知りませんな。
奴が間に入れないようにしっかりと足場固めをしてくると同時に仲間にさせないようにしますぞ。
お前の席、ねーから! をしてやるのですぞー!
奴にお義父さんの童貞は渡しませんぞ。
奴が来る前にお義父さんにはしっかりと相手を見つけてもらわねばなりませんぞ。
槍の精霊が君が寝取れと言っていた気がしますが、お義父さんは普通の恋愛がしたいと仰る方ですぞ。
人妻になったお義父さんはとても魅力的になるのですぞー!
さて、確保していたユキちゃん達を持ち出しますぞ。
お義父さんに紹介しなくてはいけませんな。
フレオンちゃんはいつ頃迎えに行きますかな?
クロちゃん達を連れていけば仙人は快く協力して下さるとは思いますぞ。
何にしても近々フレオンちゃんも確保ですぞ。
そうすれば今回のループで調子に乗っている樹を上手いこと懐柔して下さるでしょう。
と言う所で脳裏で前回のループの樹が激しく抗議していますぞ。
『いい加減にしないと僕にも手がありますからね。ループ出来るからと言って調子に乗らないで下さい』
等と前に言っていた様な覚えがありますぞ。
フレオンちゃんの正義に目覚めさせる以外の方法をしろと言ってましたな……。
ワガママな注文ですぞ。あの調子に乗ってお義父さんを嬉々として糾弾した樹には何をしても良いと思いますが、面倒ですが多少は配慮してやりましょう。
槍の精霊が言っていた別の手立てという奴ですぞ。
とは思いますが……面倒ですな。しばらく樹は放置しますぞ。
「元康くんお帰りー」
ライバルを投げ捨て、ユキちゃん達の卵を持ち出した後、俺はお義父さん達と合流するとお義父さんが出迎えて下さいました。
「ただいま戻りました」
「あれ? 新しいフィロリアルの卵? 既に居るのにまだ確保するんだ?」
「そうですぞ。このループから数えて次のループから力になって下さったフィロリアル様であるユキちゃん達を確保させて貰ったのですぞ」
「へー。レギュラーって奴?」
「そうですな。タイミングを逃すと出荷されてしまったりするのですぞ。この卵がユキちゃんになる卵なのですぞ。別の可能性でホワイトスワンとなるのですぞ」
コウは出荷されずにフィロリアル生産者の所で保管されているのですが、ユキちゃんとサクラちゃんは出荷されてしまうのですな。
ユキちゃんはサラブレッドで競走馬としてホワイトスワンとなるのですぞ。
ホワイトスワンもユキちゃんの別の可能性なのでしたな。
「名前が違うみたいだけど……」
「ホワイトスワンは競争羽として牧場で育つとなってしまうお姿ですな。クロちゃんがブラックサンダー、本名クロタロウになるように気性がより荒々しくなってしまうのですぞ」
「そうなんだ? クロちゃん。男の子のはずなのに女の子みたいになってるけどコレも差異かな?」
「ですぞ。ブラックサンダーは男の子でしたぞ」
クロちゃんとブラックサンダーと同じような変化ですぞ。
「じゃあその……ユキちゃんも男の子なのかな?」
おや? お義父さんがユキちゃんが男の子として想像していらっしゃる様ですな。
「ユキちゃんは女の子ですぞ。お義父さんがお好みでしたら男の子として育てますかな? キールのように」
「キールって誰? ってのはともかく別にそんな困った親みたいな育て方はしなくて良いよ。と言うかクロちゃんは何でちゃん付けなの?」
「本人がちゃん付けで呼んで欲しいとの事で呼んでますぞ」
そうですぞ。クロちゃんはちゃん付けを望んだのですぞ。
ですのでクロちゃんはクロちゃんとして呼んでますな。
クロちゃん自体は自分の事をクロと呼びますがな。
「ではユキちゃんはユキちゃんとして自由に育って貰いますぞ」
色々と違いを出すためにユキちゃんを確保せずに後日ホワイトスワンとしてスカウトする事も考えましたが……ユキちゃんのリーダーシップは頼りになるので早めにお願いしたい所ですな。
他にも頼りになるフィロリアル様に育つ子はいらっしゃるのですが、一番手堅いのがユキちゃんですぞ。
最初の世界のヒヨちゃんやみどりは世界毎にその辺りが変動しますからな。
再現が難しいのですぞ。
となると自然とユキちゃんが一番リーダーに向いてますな。
「ユキちゃんに他のフィロリアルの指揮をお願いするのですぞ」
「クロちゃんにはお願い出来ないの?」
お義父さんの質問ですな。
「クロちゃんはお世話はそこそこ出来るのですが、その場合、育ったフィロリアル様達がみんなクロちゃんみたいな口調になる可能性が出るのですぞ」
フレオンちゃんと再会したループでのお義父さんが仰った話では中二病汚染でしたかな。
ブラックサンダーと同じくクロちゃんにはその因子があるのであまり専属でリーダーにするのは向かないでしょうな。
フレオンちゃんに任せるというのも同様の可能性がありますぞ。




