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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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新たなる選択

「そもそも俺ではなくお姉さんやお姉さんのお姉さん、パンダが行う事なのですぞ! 奴が初めてを奪ったのは許せない蛮行なのですぞ!」


 お義父さんの初めてをライバルが奪うのがダメなのですぞ!


「わー……どんかーん。君が寝取りなさい」

「悪いのはライバルなのですぞ!」

「はあ……もうちょっと君への精神攻撃をしてから本題に入ろうかな」

「精神攻撃言いましたぞ!?」

「車軸にされた件の仕返しなんだからこれくらいは我慢しても良いと思うよ。君はどれだけ俺を車軸にして……これからもするでしょうが」


 おのれですぞ。

 俺は出来ることをしただけですぞ。弾かないお前が悪いのですぞ!


「君の専属の聖武器になってあげたんだ。こっちだって少しくらいは好き勝手させて欲しいもんだね。俺の代わりに別の槍の精霊を用意して後を任せたんだし」

「そっちとチェンジですぞ!」


 おそらく元・杖の聖武器をアーク達が槍に作り替えていたのでアレが槍の聖武器として俺の後の勇者が持つと言う事でしょう。


「ダーメ、そもそもあっちは君に愛着無いし。選んだ俺で我慢する」


 くっそですぞ。


「さてさて、まず君が歩んだ平行世界だけど、分岐して存在する……大きく事象の世界の話をしようかな。君も忘れているだろう?」

「何を報告するつもりですかな?」

「そうだね。あんまり変わらなかった再度ループしてすぐの世界はともかく、次にループした弓の勇者が死んだ後の世界の話をしよう。あの世界は後に亜人獣人が優勢となったね。魔王でもある彼女が長いこと平和維持の統治をしたよ。まあ……人間は融和して行く内に亜人獣人の血筋の中に消えて行ったから亜人獣人と魔物の世界になったよ」


 ある意味、魔王軍設立にして人類の敗北って感じとも言えるけど平和ではあるよ。

 と、槍の精霊は言いましたぞ。

 グフ……お義父さんがライバルに寝取られた世界のその後など聞きたくなかったですぞ。


「次のループはー……その吐血具合から言わないのが良いか」

「ヒィイイ……」

「精神ダメージが酷かったか……まあ、前の周回のお陰で最悪の事態は避けられたもんね。感謝しないとね。時々アーク先生が君の様子を見に来るけどその時に会わなくてよかったね。やめさせられかねないからね」


 俺はここでライバルの犠牲になったお義父さんに感謝の祈りを捧げますぞ。

 槍の精霊が激しく性悪で俺の古傷を抉ってくるのですぞ。

 アークは時々俺に会いに来てくださっているのですな。


「そこから何個か分岐をするけど……君が覚えてそうな最初のフィロリアルのタイミング。俺が狙って飛ばしてあげたんだけどどうだった?」

「フレオンちゃんと再会したのはお前のお陰なのですかな?」

「まあね。じゃないと生きる屍状態でループし続けるって事になりそうだったし」


 くう……性格は悪いけど俺の精神回復をしてくれたのは事実な様ですな。


「あの世界は繋がらなかった二つの世界を架け橋に文明が発展していったね。時々二つの世界で戦争とかしたりしてるみたいだけど二つの世界で成り立つ形になっていったね。ま、彼女が本懐を成し遂げた世界だとあっちの世界も最終的には魔王軍の勝利に終わったね。転生者共は駆逐されたよ」

「俺のループしている世界は一体どういう構造なのですかな?」

「知りたい? 具体的には最初の世界で融合した、グラスと君が呼ぶ彼女の世界とこちらの世界の二つしか存在しない時空だよ。基点となる世界とはそこは違うね」


 そうなのですな。


「で、今回君が巡った世界は他の世界とは異なり高度な魔法文明が構築された世界となっていくようだよ。少なくとも君が寿命を迎える範囲でも劇的な文明発展が起こっていたじゃないか。未来からの使者があれだけきたのはそれが理由だ」


 ラフえもんにフィロ子ちゃんですな。

 ラフミ? 知りませんぞ。


「まあ、開拓地の秘密を解き明かすと地脈の流れが活発化するのが原因なんだが、どうだい、いろんな世界の未来の話は」

「平行世界が出来上がっていくのですな」

「そうなるね。最終的に精霊達が気に入った時間軸を受け持って新たな世界として本当に分割される事もあるだろうけど、少なくとも今は平行世界さ。ラフタリアって子が言ったロードできるデータが一つの状態では無く、消えた訳でも無い世界さ」


 さて、と槍の精霊は話を区切りますぞ。


「愚問だろうけど、君はこれからどうしたい? 北村元康でいるのがもう辛くてイヤなら何もかも忘れて元の世界に帰る?」

「帰りませんぞ。俺はフィーロたんとお義父さんの為に前に進み続けるのですぞ」


 アークやホー君が俺の為に道を作って下さいました。

 救えなかったお義父さん達との新たな出会いや出来事が無数に待っているのですぞ。

 後悔なんて無数に重ねて行くのですぞ。

 振り返り、それでも前に進み、フィーロたんとお義父さんの力になるのですぞ。


「そうかい。じゃあ次はどうするかね。選択して遡行するか? 例えば……彼女が最終的に君に勝ってしまった世界で君の脳内に浮かんだ選択肢の所とか」


 サッと槍の精霊はぼんやりとあの時の映像を浮かべますぞ。


 

 →サクラちゃんを婚約者の所に行かせる。


 サクラちゃんを婚約者の所には行かせない。



 あの時の選択ですぞ。

 もしもここでサクラちゃんを婚約者の所に行かせたらどうなりますかな?

 お義父さんがテラスでお疲れだった際に寝ぼけ眼のサクラちゃんが来て逃げられてしまいましたぞ。

 もしも……あの時に戻れたらですぞ。

 ですが……既に平行世界が出来ていると槍の精霊は仰っていましたし、アークやホー君が教えて下さっていました。


「質問ですぞ」

「何だ? なの」


 嘘くさく語尾を付けるなですぞ。お前がライバルの真似をするのは激しく遺憾ですぞ。

 野郎が語尾で「なの」と言っていると思うとライバル以上に気色悪いですぞ。


「もしもその選択を俺が選んだとして、ライバルがお義父さんと恋仲になってしまったあの世界は巻き戻って再構築されるのですかな?」

「お? そこに気づけるのか、やっぱり賢くはあるな。なの」

「答えろですぞ」

「北村元康。君はどっちであってほしい? なの」


 その問いに俺は再度考えますぞ。

 元康、お前にとってライバルを選んだお義父さんはお義父さんでは無いのですかな?

 だからこそ選択肢で巻き戻して無かった事にして良い存在だと思うのですかな?

 否! 俺は消えてしまったお義父さん達が居るのだと決めた男ですぞ。

 都合が悪いから消えて貰う等してよい選択ではないのですぞ。


「巻き戻らないのですぞ。そこから分岐するのですな」

「ご名答、また別の平行世界が出来るだけだけど、どうだい? そこの分岐で始めれば砕かれるフィロリアル達の卵を事前に助けられるよ」


 グラッと心が激しく揺さぶられる選択を槍の精霊は提示してきますぞ。

 ですがそれもまた平行世界での話ですぞ。

 あのお義父さんの世界は既に変えられないのですな。


「もちろんいずれは行きますぞ。回し車を回すためですぞ」

「それは何より、君の気が済むまで頑張って行くと良い」


 ここでならぼんやりと思い出せますが、しばらく家出はしましたが戻ってしっかりとお義父さんを祝福したのですぞ。

 ああ、お義父さん……真意を理解は出来ずに居たのを申し訳なく思いますな。

 全ては俺の為だったのですぞ。

 ライバルを大人しくさせないとその後のループで暴れるのが分かって居たから鎮めたのですな。


「……いずれその平行世界の彼とも君は再会出来ると良いね。行き着く先は一緒なんだし」


 何やら槍の精霊はよく分からない事を言ってますぞ。


「まあ、ここまで来たからには君にしっかりと教えてあげないといけない事を説明しなくちゃね」

「何をですかな?」

「君の目的は無かった事になった世界でもう一度するためにループを始めた訳だけどその先にある……アーク先生が言ってた果てなく夢がより長く続ける、因果を繰り返す事でフィーロの強さも増すけどその上がり幅が変わる。同じような行動だと効率が悪いって事」


 俺がループする事でお義父さんとフィーロたんのお役に立つのでしたな。


「つまり最初の召喚直後に飛ばないのは……」

「必勝パターンを君は既に構築してしまっているだろ? 他の勇者達に犯行現場を見せつけてメルロマルクの女王を連れてきて陰謀をはね除けるって流れ、別の選択肢を考えて行動すると良い」


 槍の精霊からの助言という事ですかな?


「ま、飛ぶ先は俺がサイコロで決めたりしてる訳だけど、君もループする際に浄化されて記憶がかなり欠落するから同じにはなりづらいけど限度はある」


 重複は避けねばならないのですな。


「こっちも色々と君を使って可能性の模索はしてやるから、やっていくと良い」


 ここでフワッと浮遊感と共に俺の体が浮かんで行きますぞ。


「さーて、ループの影響で君も色々と知ってできる事が増えた。この事実から次は何をするのか見させて貰うよ」

「次も車軸にしてやりますぞ」

「減らず口だな君も、まあ行ってこい。思うがままに可能性を模索して行けば良い」


 じゃあなとばかりに槍の精霊は俺を見送ったのですぞ。

 く……俺の手に槍があれば一発グングニルでぶっさしてやりますぞ。

 いえ、ドライブモードで走るのが良いのですな。

 覚えていたらやりますぞ。

 なお、俺は嫌がらせの為にドライブモードをするのを忘れました。

 直後にするのですがな。


 ……。

 …………。

 ………………。


 選択遡行


 サクラちゃんを婚約者の所に行かせる。


 虎娘を優遇する。

 虎娘を優遇する。

 虎娘を優遇する。

 虎娘をお義父さんに斡旋する。

 虎娘をお義父さんに斡旋する。

 虎娘を虎男からかっ攫ってお義父さんに薬と一緒に預ける。


 虎娘、その情熱は感心するなの。でもなおふみは大人しいお前の方が好みだと思うなのー上位互換なの。

 私は私ですわ! 絶対に私に続くのですわ! 諦めませんわ!

 優しいなおふみだとお前も性格変わると思うなのー。


 ランダム遡行←


 第二座標…………参照…………照合…………遡行開始――



 ……。

 …………。

 ………………。



 ふと気付くと俺は賑やかな市場に居て、手にはフィロリアル様の卵を何個も抱えておりました。


「ここは……」

「もと、どうしたのー?」


 声に視線を落すとそこにはブラックサンダーではなく、ブラックサンダーが生まれる卵を俺が育てた場合に至るクロちゃんがいらっしゃいましたぞ。


「クロちゃんですな」

「うん。クロだよ。愛の狩人<ドライブ>のもとがクロの服を作ってくれるんでしょー?」


 まだクロちゃんの服が出来ておらずマントを羽織っている形ですぞ。

 ここは何時で何処でしょうか。

 少なくとも今までのループ、再度ループする前の状況でクロちゃんがいらっしゃるループとなると限られますぞ。

 錬や樹、女王と共に陰謀をはね除けたループ……でしょうか?


 ひやりと嫌な汗が背筋を通り過ぎますぞ。

 お義姉さんに回収される際のループの合間にクロちゃんと出会っていた事はありましたが、それでもお義父さんはしっかりと救いましたからな。


「クロちゃん。教えて欲しいですぞ。お義父さんは何処ですかな?」

「え? なお? なおは昨日何処かの国に行くって別れたの、もとは忘れたー?」

「ッ!!」


 つまりこのループはほぼ初期のループですぞ。

 まだ俺がループするルールを良く知らずにお義父さんを冤罪から救った後にシルトヴェルトの使者に預け、フィーロたんを探してのんきにフィロリアル様育成をしようとしている最中という事ですぞ!


「ピヨピヨ!」


 足下には成長中のフィロリアル様もいらっしゃいます。

 明日には天使の姿になって下さるでしょうなと未来の姿すらも俺は鮮明に思い出せますぞ。


「これは緊急事態ですぞ!」


 つまり少なくとも明日の何処かにはお義父さんに何かあって死んでしまわれるループですぞ!

 槍の精霊、厄介なタイミングにぶち込みましたぞ!


「クロちゃん。急用を思い出しましたぞ。一刻も争う事態なのでこのフィロリアル様の卵とみんなを連れて先に宿に戻って居て欲しいのですぞ」

「えー何か面白そうな闇聖勇者冒険記<ダークブレイブクロニクル>の避けられぬ事象<ミッション>がありそうだからクロも行きたいー」

「そうも言ってられないのですぞ。クロちゃんには後で遊び相手になる運命<ディスティニー>を紹介してあげるので我慢して欲しいのですぞ」


 錬を後でクロちゃんの遊び相手にさせてやるのですぞ。

 クロちゃんはブラックサンダーなのできっと錬を上手く覚醒させられるはずですからな!

 おや? 脳内でイヌルトになった事のある錬が辞めろ! と叫んでいるような気がしますが、別のブラックサンダーと仲の良い錬がフッとかっこつけているので大丈夫ですな。

 ポータルは……く、的確な位置に丁度取得してませんでした。


「えー? そうなのー? わかったークロ、みんなとお留守番してるねーディスティニー!」

「では行きますぞ! ドライブモード!」


 早速俺は槍を使ってドライブモードになり、車輪を高速回転させて爆走しますぞ。


「ブヒャ!?」

「うわ!? なんだありゃ!?」

「気色悪!?」


 ブルンブルンと俺は城下町を爆走して城門を突っ切り、一路シルトヴェルト方面へと向かったのですぞ。

追想編終了です。

次回から奴隷商人編……チュートリアル編アナザーに移行します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 槍の思考回路はいつだって面白いなw [気になる点] 虎娘は盾に治されるか槍に治されるかで性格決まってそうなんだよな
[気になる点] 1.この時のクロちゃんってまだ目覚めてなかった気がする。目覚めるきっかけが錬が内緒でそういう事してカッコいいって思うようになってからか、元康がそういう喋り方でブラックサンダーを勧誘した…
[一言] 別の世界の元・杖の聖武器が後任の槍の聖武器になれたのはアークたちの干渉だけじゃなくて槍と近い形状だからってのもありそう
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