表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
1082/1280

転生無き者


「世界の想定外の死だと君は本当に死んでしまう。それは世界としても困る流れだったって話さ。精霊が助けたのは色々と理由があるって事」

「で、君は元いた世界の柱の一つでね、この世界には借り受けて呼び出されているようなもので、寿命を迎えたら元の世界に帰るんだ。その際にこの世界の記憶を全て忘れて世界を回す事になる」

「名前も変わる場合もあるっぽいね。元康くん、次はどんな名前になるんだろう? これで転生じゃないんだよね。一部記憶を継承するみたいだし」

「何も知らない朝、中学生かもしれないし高校生かも知れない。定められた時間で愛によって世界を回す運命にあるんだ」


 うぐ……なんですかな? その地獄のような世界は。

 つまりフィロリアル様もフィーロたんもお義父さんも居ない世界で全てを忘れて豚と恋愛を永遠にし続けると言う事なのですかな!?

 それは俺ではない別の誰かですが、俺の将来なのでしょう。

 嫌ですぞ!


「僕が立ち寄った世界ってそうだったなー。出て少しした所で巻き戻しが掛かってたね。永遠の20世紀前後の時代背景な世界だったよ」


 ホー君が信じられない事を言い放ちましたぞ。

 間違いないという事なのですかな!? 知りたくない俺の世界の真実ですぞ!

 道理でこの世界に来て思い出すと妙に学校が長いのですぞ。引っ越しもお義父さん達から聞くと少ないのですな。


「絶対に嫌ですぞ! 俺はそんな所に戻りたくないですぞ! 槍の精霊、お願いですからそんな世界に返さないで欲しいのですぞー!」


 ここで願いを叶えてくれる槍にお願いするのですぞ。

 保留にしていましたが願いますぞ。


「そうは言っても君の魂に由来する代物だからね」

「イヤだって願いを僕も察しているからこうして話をしてるんだよ。正直ね、尚文くんの事を抜きにしても出発前に聞こうと思ってたんだよね。今夜さ。それがまさかこうなるとはね」


 おお、アークとホー君が俺の為に何かしてくださっているのですな。

 元の世界に戻って豚の顔色を伺う毎日など絶対にしたくないですぞ。

 選択肢一つで機嫌を損ねる連中なんてごめんですな!

 今までの友好は何処へ行くのですかな! アイツらは身勝手なのですぞ。

 腐った転生者ですぞー!


「ただ、君がどうしても辛いと思ったり、やめようと思うのも自由だ」

「どういう意味ですかな?」

「言ったままの意味だよ。尚文くんもフィーロちゃんも諦めることはいつでも出来るって事さ」


 どうにもアーク達の話は理解するのが難しい所があるのですぞ。


「諦めませんぞ!」

「だろうね。元康くん。僕はね、元康くんが怒ることを承知で言うし、嫌われると思っているから言うけれどね。尚文くんに関してだけで言えば一番、どうでも良いと思っているんだ」


 なんですと!?


「お義父さんをどうでも良いとはどういう事なのですかな!? お義父さんはフィーロたんに匹敵する至上の存在ですぞ!」


 ここに来てアークはとんでもない事を仰いますぞ。

 アレですかな? どうでも良いお義父さんに似てると言われて困ってるとかそれですかな?


「わーここまで堂々と言われちゃうのってどうなの? ねー?」

「はいはい。わかってるって、ある意味どうでも良いと言うのはね。元康くん、君の優先順位と同じだよ」


 俺の優先順位? 転生者との違いとしてアーク達が仰った事でしょうかな?

 転生者は自分が一番で俺は誰かの為と仰っていました。

 つまり……? はぐらかしてばかりなのですぞ。


「何かするようですが、させませんぞ! お義父さんはお義父さんなのですからな!」


 何やら分かりませんがお義父さんを意のままに操るとかそう言った話ですかな?


「お義父さんを解放しろですぞ」


 またそれか! と、この世界のお義父さんが仰いそうなセリフですが引き下がれませんぞ。


「うん。その為に僕は来たんだよ」


 と、アークは微笑みかけました。

 拍子抜けですぞ。解放してくださるのですかな?


「……君が元の世界に戻った際に歩む事と似たように、尚文くんも……転生が無いんだ」


 お義父さんも転生が無い?


「そして解放するのが難しい。ラフタリアちゃんを彼女のように悲しませたくないんだ。あまりにも短い幸せで終わらせる事なんてね……どうか幸せな夢が果てなく続いて居て欲しい。永遠なんて無いからこそね」


 ふと、予言の碑文を思い出しますぞ。

 であると同時に……アークが予言の碑文を記した妖魔の少女の話をしていました。


「君が想像する以上に時間が無いんだ。確実に終わりは近づいてくる」


 怒りの感情を集めた存在……憤怒の……。

 ここでフィーロたんに振りかけていたホー君の作った羽で構築された玉が俺の槍に吸い込まれて行きましたぞ。

 槍が光を放ち、新しい槍が解放されるのですぞ。


 真・龍刻の長針 0/300 LR

 能力解放済み……装備ボーナス、能力『時間遡行』『選択遡行』『ランダム遡行』

 専用効果 並列分岐する世界


 これは……新しい龍刻の長針ですぞ!


「元康くん、君が寿命や死が近づくと槍に記憶された情報から新たな平行世界が生まれ、そこで回し車を回す。それは新しい世界とも言えるし、この世界と重なるもう一つの世界でもある」

「僕……達、猫じゃなくね。僕達と元康くんがあの世界に居たのはそういう特性との接点って感じだね」


 ホー君がアークの言葉に続いて言いました。

 僕達?

 もしやホー君は一人ではないのでしょうかな?


「鳥は本当、結局僕を数に入れてないよね」

「入れなくても良いでしょ。何にしても始まって終わる……だから、また始めれば良いのさ」


 ホー君の事情はよく分かりませんが……なるほど、始まって終わってまた始める、ですな。

 確かに俺は回し車……ループを何度もしていました。

 二人の言っている事の意味はわからない所が多いですが、俺が何かを回す事に意味があるのならば、お義父さんやお姉さん、フィーロたんの為にいくらでも回しますぞ!


「元の世界に返さないって願いは叶えてあげる。鳥、最後の仕上げは任せるよ」

「わかってるよ」

「その世界を巡る事で尚文くんという存在が強固に確立し……君が大事に思う尚文くんの力となる。そして君がループする事でフィーロちゃんの因果が束なり、力にもなる」

「まさに一石二鳥。名案だね」

「茶化すのは程々にしてよ本当……君は元康くんのツッコミをするのが丁度良いよ。まったく」

「ふふふ、そんな元康くんへのツッコミもそろそろ終わりさ」


 つまり、やがて俺はループして、ループする毎にお義父さんの力になる。

 そしてフィーロたんにも……つまり俺がループする事でフィーロたんと一緒に居られると言う事なのですな。


「けど、この世界にいた尚文くんには感づかれちゃいけない。気付かせてもいけない。思い出させてはいけない。その全てで夢が覚めてしまう事に繋がり、ラフタリアちゃんとフィーロちゃん……みんなが悲しむ。その先に居るのは君達の知る尚文くんじゃないから」


 そう、全てはラフタリアちゃんを悲しませない為に僕は今回来たんだ、とアークは俺に魔法を施しながら言いました。


「僕はね……魂と呼べる代物を持ってない。意志ある無とか言われたことがあるね。だからそこに居るのにいないと感じる。魔法とかいろんな代物も対象に出来ないし下手に狙うと虚無に消えてしまう」


 アークは苦笑いをしながら自身を語りますぞ。


「生きてるブラックホールみたいなものだね!」

「鳥も茶化さない。しかも誤解するし、まあ……曖昧なのは否定しないか」


 アークとホー君のトークはとても仲が良さそうで良いのですぞ。


「僕は眠る事さえ出来ず、ぼんやりと白昼夢を時々見る。過去、人に憧れてた……実の所、元康くんの事はここだとよく見るんだ」


 ふわりとアークがネックレスを振った後に俺の槍に手を合せて祈りますぞ。

 ホー君に呼び止められた時に厨房に居たアークが独り言を仰っていたのは……もしや無くなってしまった世界の残滓としてのお義父さんをくみ取っていたのですかな……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 元康のいた世界は『現代もののギャルゲー』という舞台そのものだったわけか。 名前や立ち位置が変わるのは『別タイトル』になるから舞台装置も役者もそれに合わせて変化するって事なのかな。 世界…
[一言] 0/300がなんの数値なのか、気になります。盾は勇者というより姫のポジションですな。そういった感じのことを弓が過去に言っていたような…
[良い点] 元康はまどマギのほむらポジションだった! 繰り返すことで因果を束ねてフィーロを最強のフィロリアルにする計画。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ