面倒な信仰
「まあ……そうポンポン蘇生できる世界は希だけどね。奇跡だったりするのが大半か……それこそ定められたシナリオに沿った世界なら目的達成までは許されるとか見た事あるよ」
「シナリオですかな?」
「人によっては運命とか言うけどね。元康くん、君は心当たりがあることかもね?」
アークに言われて考えますぞ。
ふむ……そう言われてもピンと来ませんな。
「魂の問題もあるけど肉体の方も長持ち出来ない様にしてるなー……本気で酷い。全能を気取る愚か者共め……反吐が出るね。やり方がスマートじゃないんだよね」
「同感だね」
ちょっとそこで横になってね、とホー君は女王に横になるように指示をしますぞ。
女王は言われるがまま診察台に横になりますぞ。
「ちょっと燃えるけど我慢してね。痛みはできる限り少ない様にするけど、耐えてね」
ホー君が翼を指の様に人差し指を立ててその先から炎を出しましたぞ。
その炎が女王の周りを飛び回り、その炎が女王の体に降り注いで燃え始めますぞ。
「く……うううう……」
女王が苦悶に顔を歪ませますがクズと婚約者がそれぞれの手を握り、すぐに心配ないと微笑みました。
ジュ……と何かが焼ける様な音と匂いがしていきましたが不快な匂いが徐々に消えて行きましたぞ。
「はい。処理は完了したよ。これで……君の旦那さんの寿命くらいは生きられるよ」
「あ、ありがとうございます」
女王が自身の様子を確認しながらホー君にお礼を述べましたぞ。
クズと女王はそこそこ年の差がありますから相当寿命が縮んでしまっているのですな。
「先ほどよりも遙かによくなりました……気付かないものなのですね。あんなに体が重かったのが消えました」
「まあ、徐々に腐ってきてる所だったからね。元が腐ってるならともかく辛いだろうさ。ともかくこれで問題無くなったね」
心なしか女王の顔色が良くなりましたぞ。
「これで良いかい?」
「うん。相変わらず良い腕をしてるねー」
「褒めたって何も出ないよ。まったく……こんな真似する主犯一味を僕自身が焼き焦がしたかった所だよ」
とホー君はアークへと愚痴りました。
「……似たような人がいるならサッサと処理しておきたいから早くね」
「他にもいるな。ラフタリア、ババアを連れてこい」
「誰か分かりますが、ナオフミ様せめて名前を覚えて下さい」
変幻無双流の老婆をお義父さんはご指名してホー君に治療して貰いましたぞ。
「ホー君、凄いですぞー! かっこいいですな! 素敵ーですぞ!」
「元康くんの野太い声援を受けても全く嬉しくないなぁ」
「鳥ー素敵ー!」
「素敵ー!」
アークとお義父さんが俺に続きますぞ。
ご一緒ですな!
「そこも悪乗りしないで良いから! 全く! 便乗する所は同じとか……」
「君は実際に有能ムーブしているって言うのにテンション低いね」
「テンション高めにアピールする事も出来ないくらいドン引きな現場だったからだよ。休暇を中断して八つ当たりに馬鹿を焼き焦がしに行くか迷う次元だよ!」
どうやらホー君的に不愉快な現場だったのですな。
「お疲れ様ですぞ、ホー君。お礼に俺が毛繕いしてあげますぞ」
「いや、なんで? お礼じゃなく君が僕の毛繕いしたいだけでしょ!」
「そんな事は無いですぞ」
ホー君の匂いをくんかくんかですな。
こうしてどうやらホー君のお陰で女王と変幻無双流の老婆は赤豚本体の所為で起こった問題を処理できたという話でしたぞ。
「ともかく色々と助かった。で、暴れたい様なら丁度良い話が来てるぞ。お前等も暴れるか?」
「何? 何かあるの?」
「ちょっと色々と話が立て込んでいてな。1時間くらい時間をくれ。それまで各自ゆっくりしていて欲しい。元康もな」
「ラジャーですぞ!」
「はいはーい。んじゃ僕は自由にして貰おうかなー」
と、ホー君が仰って行くので俺も付いて行きますぞ。
「元康くんはそこの鳥に付いてくヒナみたいだね」
「えー勘弁してよー!」
スタタ! っとホー君が小走りで走るので俺も追いかけますぞ。
待ってくださいですぞホーくーん。
そうして1時間後ですぞ。
お義父さんが俺を呼んだとの事で集合場所の村の広場に行くと、お義父さんがお姉さんやお姉さんのお姉さんと一緒に待っておりました。
「呼びましたかな?」
「ああ、元康も一緒に行け。お前が適任だ」
おお、お義父さんからのご指名ですぞ。
必ずや任務を達成すると誓いましょう。
「何か俺に頼み事ですな。この元康、お義父さんの命令とあらば何でもやってみせますぞ」
「ナオフミ様、言い方には注意してくださいね」
「わかってる」
「あらーモトヤスちゃんは頑張り屋さんだものねー」
お姉さんのお姉さんがケラケラと笑っております。
「さっき、クズや錬、各国から複数の転生者疑惑の報告が舞い込んで来てな。クズも判明次第処理をするそうだが手分けして調査に行ってくれとの話だ」
「では遭遇と同時にデストロイすれば良いのですな?」
「……」
お義父さんが俺を見つつ何やら渋い顔をしているような気がしますが、きっと気のせいでしょう。
「……まあ、鳥が居れば大丈夫か? アークとホー、元康の面倒は任せる」
「なんか一番面倒な人材を僕に押しつけてる気がするなー」
「頼まれたらやっても良いとは思うけど新参の僕たちによく任せるねー」
「もう分かってきてるだろ。アイツの残党退治で、お前等の管轄でもあるだろ」
「まあ、そうだね。常識に関しちゃ大分分かってるよー鳥は元康くんの舵取りをお願いするねー」
「はいはい。ま、本気で面倒だったら猫に任せるかな」
という訳で俺はホー君組に分けられましたぞ。
クー達が遠目でいらっしゃいますな。
お義父さんの命令なのでしょうが無いですぞ。
「三色フィロリアル共はアイドルグループとして、とある地方の転生者の偵察な。元康と一緒に行きたいなら許可するぞ」
「うー……」
「まりん達の気持ちを分かっててこんな人事をするなんてー」
「ひどーい!」
「文句を言うならホーに絡む元康に言えよ」
俺は寂しくしているホー君とフィロリアル様達と仲良くさせたいだけですぞ。
現に俺が取り持っているお陰でフィロリアル様達も徐々にホー君と仲良くできてきていますぞ。
クー達はまだ馴れないだけですぞ。
ちなみにフィーロたんも時々ホー君と話をしていらっしゃるようですな。
「それで僕たちは何処へ行けば良いんだい?」
「ああ、何でも地方にクソ女神を信仰していた連中の生き残り……信仰は捨てて生き残った連中が集落を築いていたが、活発化の傾向があるって話でな。どうも首謀者がいるらしい。とりあえず視察からの調査をして黒なら処分しろ」
つまりホー君達に俺の雄姿を見せて良いと言う事ですな。
お任せあれですぞ!
「正直こういうのは樹辺りに任せたいがそっちも出撃しててな。俺は別の転生者をラフタリア達と調査に行くから任せる」
「よくもまあ残っているものですな」
世界を滅ぼそうとした赤豚本体と転生者の無様な姿とお義父さんの雄姿を見て、まだ潜伏して機会を伺う根性は呆れを通り越して感心しますぞ。
「ああ……どうも不自然な発生頻度だ。一度掃除したはずだが……状況的に何かあるかもな」
「そうだね。ちょっと見えなくなっている所もあるしね」
赤豚本体を倒した後、チラホラと現われた残党の転生者を処理して久しいですな。
時々現われて場を荒らす事はありましたがどうも数が増しているようですぞ。
ですが奴等も運が悪いですな。
この俺が向かうのですからな。
ここは一つ、ホー君に俺の雄姿を見せる場面ですぞ。
「まー……信仰って信仰対象を倒したから洗脳が解けるとか安易なものじゃないんだよね。むしろ聖人化して団結が強まるというのかな。あるいは倒された者は偽物だったとか都合の良い幻想に思考をすり替えたりもするね」
アークは呆れ気味に呟きますぞ。
その辺りの理解が深いという事ですな。
曰く『心の底から慕っている自分を不幸から救い出してくれた恩師が尊厳を奪われた上に惨たらしく殺されたとしたら、君はどうする?』との事ですぞ。
それだけ人の心というのは難しいものという事なのでしょうな。
しかし……信仰対象、頭を潰す……。
「んじゃ出発しようか」
「おーですぞー!」
という事で俺達は件の赤豚本体を信仰していたという怪しげな連中をデストロイするために向かいました。




