ジョークグッズ
「鏡の眷属器にそう言った攻撃があったな。あれの常時展開で全身を覆っているのか……普通の方法じゃ当てようがないな。その癖、相手はこっちを攻撃出来るとか別の次元に存在をずらしているとか酷いもんだ」
チート、不正って奴だな、とお義父さんは続けました。
「僕の描く文字を施した代物を使えばそのズレを相殺出来る。だからしっかりと相手を切り裂ける様になるって訳さ」
「なるほど。まあそれが出来たからと言ってアイツを仕留められたかというと怪しいがな」
「そうだねー。話によると相当な相手だったみたいだし、これだけだと厳しいね」
赤豚本体の展開するバリアを突破出来ても、それだけでは仕留められないという事ですな。
面倒にも程がありますぞ。
「ちなみにこの魔法文字を応用すると大技を放った所為で自分の服が燃えるなんて事が無い様にする事も出来るよ。服だけ空間をズラすから破けない、汚れない、濡れない服にね。あ、この程度ならこの世界の理的に不正認定される事は無いよ」
「フィロリアル共の服に良さそうだな、元康」
「そうですな! ホー君教えてですぞー!」
「えー! イヤだよ! なんか君に教えたくないなぁ!」
ホー君は素っ気ない方ですなー。
「相殺する魔法文字を仕込むだけならそんな難しく無いけどー……この世界ではまず不要かな?」
「……そうだな」
お義父さんはアークのセリフに同意しましたぞ。
お姉さんも静かに頷いております。
この世界は平和になりましたから余計な技術なのですな。
「自らの領分を考え無い技術って事なのね。それこそ聖武器や七星武器、眷属器が監視する程の」
「そうなるんじゃないかな」
なんて感じに主治医はアーク達から錬金術に関して問題の無い技術を教わっていました。
ホー君達が村に来てしばらく経ちましたな。
「むぅ……兄ちゃんとアークさんの料理の見分けが出来なくなってきたぞ」
夕食時にキールが出された料理を食べながら呟きましたな。
「そりゃあ尚文くんと一緒に作ってるからね」
「合作の料理も多いからな、合わせて来るから楽だな」
何度も料理をしているうちにお義父さん達は勝手が分かったそうで各々息の合った料理作りをしている様ですぞ。
「んまんま! 尚文くんと猫の料理おいしいれふ!」
どうやっているのかホー君はくちばしで啜るように食べておりますぞ。
ジュルジュルと音が響いて、美味しそうに食べておりますな。
「むしろお前は時々ネタで啜り食いをするのをやめろ」
「最低限の品は大事だと思うよ。ネタでやるにしてもさ」
「何処の芸人かは知らんが周囲が不快になる食い方はやめるべきだな」
お義父さんとアークの両者から氷点下の眼差しをホー君は受けておりますが、ホー君は何処吹く風と言ったご様子。
「美味しいけどさー妻の料理が恋しいよー」
ホー君が逃げられたとの話である奥さんの料理を望んで居ますぞ。
「君の奥さんの味付けねー」
「どんな味だ?」
「んーその時々で変わるねー……だけどー法則があって、重要なのは火だから――」
「そこ! 再現しようとしなくて良いから! 大事な思い出が塗り替えられる事になりそうだからやめてよね!」
やめて欲しいとばかりにホー君はお義父さんとアークに注意しております。
確かにお義父さんは料理の再現はとても上手ですからな。
店の味の再現などを容易く行います。
アークもお義父さんに負けない腕前のようなので両者がいたらホー君の望む奥さんの味付けを再現はきっとして下さいますと思いますぞ。
「いい加減そこの鳥がウザいときがあるから好みの味付けを研究して飯以外は考えられずになるようにするか、失言したら好みの飯を作らないって手をさ」
「いいねー」
「ナオフミ様、私に内緒でキール君で実験した事を忘れたとは言わせませんからね」
ここでお姉さんが悪巧みするお義父さんとアークに声を掛けつつ念押ししましたぞ。
お義父さんの料理がとても美味しいという事でお義父さんはキールを実験台に何処まで好みの料理を食わせられるかの研究をしていた事があるのですぞ。
食い過ぎにならないけれど満足感を得られるよう、やる気をより向上させるのが目的だった様ですな。
キールが選ばれたのはキール自身の性格とフィーロたんに負けない人気によるやる気と収益に対する褒美だそうですぞ。
ついでに転生者が料理で洗脳をしている事があるという情報からそんな事が出来るのかという実験でもあったとか……。
最初の数日は特にキールに異変はありませんでしたがしばらくするとキールの様子が徐々におかしくなっていき、異様に仕事に打ち込むようになり、料理の時間になると血走った目でお義父さんの元へと向かうようになっていたのでしたぞ。
この頃になった所でお姉さんに見つかりお義父さんは注意されて実験を断念したのでした。
「兄ちゃんが俺の為だけに作ってくれた料理、超美味かったのになー」
「味付けが変わって私にしつこく文句を言うキール君を宥めるのに苦労したんですからね!」
「ラフタリアからNGが出てしまった。とはいえ鳥が面倒なら研究も視野に入れるとしよう」
「酷いなー。あ、そうだ。元康くーん」
「なんですかなー?」
ホー君が俺を呼んだので近づきますぞ。
「なんだ? 元康が何か言った程度でお前の食い汚いお仕置き案は没にならんぞ」
「ふふ、僕がその程度で懲りると思ったら大間違いだよ。その話はそれくらいに元康くん。君はここ最近、ずっと僕をフィロリアルと同類扱いをするからね。ちょっとしたお礼を準備したんだ」
ホー君は翼を広げてくちばしで翼の中から何かを取りだして俺の前に置きますぞ。
それは一見するとフィロリアル様のお尻を向けたお姿のプレートでしたぞ。
「これがタダのプレートだと思ってそうだし、何なのか分からないだろうから教えてあげるね。これはね。壁に掛けて瓶の蓋をここに引っかけて開ける代物だよ」
と、ホー君はフィロリアル様のお尻の穴の部分を翼の先で指さしました。
「うわ……凄いジョークグッズを嫌がらせの為だけに作るもんだー……」
「センスがどこぞのスカトロ親父と同じだぞお前。悪意を持って作って贈るだけ性質が悪いか? いや……明確に悪意があるだけマシか?」
お義父さん達が何やら引いてますぞ。
「ありがとうございますですぞ!」
フィロリアル様を模したグッズをホー君が作って俺に下さったのですからどんな代物でも俺は大切にしますぞ!
フィロリアル様から貰ったプレゼントは俺の大切な宝物ですからな。
そう、光るものなら何でも気に入るフィロリアル様が大切な宝物をプレゼントしてくださる事がありますぞ。
赤豚本体みたいな奴を倒して回っている方のプレゼントですから一生の宝物にしますぞ。
「いや、あのね? これはこういう風に使う物で、君はドン引きするか激怒する反応をしなきゃいけないんだけど」
「俺の為に作って下さりありがとうございますですぞ!」
「わー……全く皮肉が効いてないや。そこの鳥がそんな反応するなんて本当、面白いねー」
「元康にフィロリアル認定されたら何をしても効果は無いか……分かっていたが何処までも徹底している所は賞賛する」
ここでお姉さんのお姉さんが懲りずにお義父さん達に酒瓶を持ってやってきますぞ。
最近は、毎日楽しそうというより安心したような表情でお姉さんのお姉さんは平和を心から満喫しているような様子ですぞ。
「ナオフミちゃん達ー今日も一緒にお酒飲みましょー!」
「毎日酔い潰れてるのに君も懲りないねー」
「本当にな」
「お姉さんのお姉さん! ホー君が俺にフィロリアル様型の壁掛け栓抜きを作って下さいましたぞ!」
「あらー? そうなの?」
お姉さんが酒瓶を持って俺が壁に付けたホー君のプレゼントで栓抜きをしますぞ。
その直前ですな。
「ここに闇聖勇者は――」
ブラックサンダーが錬を探してお姉さんのお姉さんの後ろから食堂に入って来ました。
丁度タイミング良くお姉さんのお姉さんがキュポっと栓を抜いた所でしたな。