ディメンションシールド
「さてと、じゃあ次はエクレールさんかな?」
「あ、ああ私か。貴殿と手合わせをして良いのだろうか」
「大丈夫だよ。気軽に気軽にー」
「ああ、錬くん。そこの猫はくそが付くほど真面目な人物に甘いから気を付けないと取られちゃうよー」
ホー君が茶々を入れますぞ。
「NTRですな! 錬は助手もいますぞ。ふらふらですから大丈夫ですぞー!」
「な、何を言ってるんだ、お前等!」
錬が真っ赤になって俺達に抗議してますぞ。
笑わせてくれますなー!
「色ボケ鳥と一緒にしないでくれない? まー真面目な子に甘い自覚はあるかな。この前話した覗き騒動での女子側の代表が真面目な子だったし」
「私はそもそも恋愛はまだするつもりは無いが」
「わー婚期を逃すか何処かの争いで負けてくっころ言いそー」
ホー君は時々お義父さんがふざけた時に言いそうなオタク的な冗談を仰いますな。
「で、エクレールさん。君はどれくらいの力量で稽古する? 錬くん並かい?」
「貴殿の腕前は十分見せられているのでな。独自の型などをレクチャーして欲しい」
「なるほどなるほど、型に興味を持つタイプなんだね」
なんて話をしながらアーク達は朝の鍛錬に参加して色々と情報交換をしていたようでしたぞ。
そんな情報交換をしているのを目撃した後、フィロリアル様の健康状態を主治医達に相談に行くとアークとホー君、そしてお義父さんとお姉さん、ラフちゃんが研究所の研究室で何やら話をしていましたぞ。
折角なので俺も輪に交ざるように近づいて話を聞きますぞ。
主治医がアークを相手にウンウンと何度も頷いておりましたな。
「ここをこうして、こうやってー弾丸を用意してー」
「また昔取った杵柄で君は妙な武器を錬金術の講座で作ってるねー」
「良いじゃ無いか、お手本だよ。はい完成、合成魔法弾丸銃・エレメンタルブリットと弾丸一式ー」
「……召喚獣とか呼び出せそうな武器だな」
アークがガチャガチャとパーツを組み立てて銃を作って居たのですぞ。
「これを弓の勇者である川澄樹くんに持たせれば中々の戦闘力が得られると思うよ。属性を任意に選べるしこの世界だと……人数を多くしないと発動出来ない魔法とかも練れるんじゃないかな?」
「相当強力な武器みたいだな」
はい。と、この中で勇者による制約の無い主治医にアークは銃を持たせましたぞ。
試し撃ちとばかりに引き金を引くポーズをするので主治医が引き金を引くと、銃から火の魔法が出たりしてますぞ。
更に主治医がガチャリと弾丸を複数銃に入れて引き金を引くと室内に雲が発生して雷が起こってますぞ。
「実験用の弾丸は極小にしてたけど、こっちの弾丸を使えばもっと高威力に出来るよ」
「異界の錬金術って凄いのね。私の知らない技術が無数にあって勉強になるわ」
一時期フィールドワークをして居た影響で人間の言葉を話して居なかった主治医ですが、お義父さんが村での勤務を命じたお陰で人の言葉を思い出したとの話ですぞ。
フィロリアル様やフィーロたんはしっかりとお話が出来て不便ではありませんでしたぞ。
尚、助手も一時期変な笑い方をしていましたぞ。お義父さん曰く、主治医と助手は魔物の生息地で過ごすと変になりやすいので程々に人里で過ごさせないと行けないとの話ですな。
「昔、この世界にあった技術なんだけどね。ここで問題を起こしていた奴の所為で随分と技術の断裂が起こっていたみたいだね」
「みたいだな。女王とかもその辺りは薄々気付いていたな」
「ま、あんまり文明が発展しすぎるとそれはそれで問題が起こる可能性があるから一長一短なんだけどね」
ため息交じりにアークが呟きましたぞ。
なんとなくですがしっかりと経験した者だからこそ言える苦労のようなものを俺は感じましたな。
「悪い教訓として後年に伝えられる様に努力するしか無いわね」
「君なら大丈夫かな? アンスレイヤかー、昔この世界に来た時にも出会った事のある名字だね」
「私の先祖と会った事があるみたいな話ね」
「会った事あるよ。前世の知識とかそう言ったのじゃなく、文字通り本物の天才で世界の文明よりも何段も優れた技術を編み出してたね」
君はその先祖を超えられると良いね。とアークは微笑んでおりますぞ。
「先祖……どんな人だったのかしら? あいにく家って技術屋な人多いのだけど親戚も多くて把握仕切れないのよね」
「ドラゴン嫌いだったねー」
「先祖から代々ドラゴン嫌いか……お前のその考えは先祖返りだったのかもな」
お義父さんが主治医に微笑を浮かべましたぞ。
「どうなんだろうね。ちなみにー、鞭の勇者になった人だよ。よくよく見ると特徴は似てるかな。子孫なのは間違い無いと思うよ」
「勇者になったって血族の記述には時々あるけど真偽は不明なのよね。ただ、歴史の生き証人が断言するなら良いんじゃない?」
「私に押しつけたじゃないの。今からでもなりなさいよ」
助手が主治医に鞭を押しつけようとしていますが、主治医は要らないとばかりに無視をしてますぞ。
「一体どんな人だったのかしら?」
「魔物はドラゴンが頂点であるというのに異議を唱えて研究してたね。この世界に居るバルーンって魔物を負けない位強くするとか色々とこの世界の魔物に改造を施してたよ」
「似たような事をお前も言ってたよな」
「ラフー」
お義父さんが元気だった時に作られたラフ種を主治医は研究しておりますぞ。
「具体的にはどんな改造をしてたんだ?」
「色々としてたみたいだけど腐った魂が魔物の体に入れないようにしてたみたいだよ」
「……この世界じゃ転生者の魔物転生は絶対に出来ないって事か」
「魂が腐ってないなら出来ると思うよ? 元々この世界出身とか、色々と複雑に条件はあるけどね」
「ラフー」
お姉さんがラフちゃんを抱き上げて手を上げたり下げたりしておりますぞ。
お義父さんはそんな様子のお姉さん達を微笑ましいという目で見ておりましたな。
ホー君もそんなお姉さん達へと顔を向けております。
「会話に交ざれなくて寂しいのですな、ホー君」
「いや別に……そんな訳じゃないけど?」
「遠慮しなくて良いですぞ。ホー君は何が得意なのですかな? 俺に教えて欲しいですぞ」
「変に気を遣われるのって辛いからやめて欲しいなー」
「そこの鳥は魔法文字系が得意だよ。この世界だと勇者文字もそれかな」
おお、カルミラ島や勇者が残した記述などで読める代物ですな。
「文字が書けるだけって事か?」
「ううん。しっかりと習得すれば、話に聞く世界融合を起こした主犯が展開していた防御膜、ディメンションシールドとも呼ばれる代物を無効化する事も出来るね」
ホー君がサラッと説明しますぞ。
赤豚本体を攻撃する際に感じた妙な感触の奴ですな。強固なシールドのようでしたが変な手応えだったのですぞ。
「突然の専門用語だが……0の武器で貫通出来たアレか」
お義父さんの質問にホー君はため息をしましたぞ。
「はぁ……その方法は正攻法による対処じゃないね。それは世界に認められていない不正な代物を無効化させる代物でー……君の世界で言うウィルスに感染したパソコンをクリーンインストールで対処するような大雑把な感じだね。適切とはほど遠い」
「じゃあどうやって突破するんだ?」
「そもそもディメンションシールドの構造を理解してもらうのが先かな?」
0の武器で無理矢理攻撃していたのを正しい手順で打開する。
さすがはホー君。とても詳しいフィロリアル様ですぞ!
「ほう……」
「とは言っても仕組み自体は空間転移の応用と点による狙撃と同じだけどね。本人のいる空間をズラしてどんな攻撃も別空間に逃がす代物を貼り付けているんだ。逆は無い様に設定してね。一方的な干渉が出来る障壁を作ってるんだよ」
なんとなくですが仕組み自体は分かったような気がしますぞ。
つまり攻撃が接触する瞬間に転移スキルで別の場所に移動する、もしくは攻撃の先を逃がしているのですぞ。
クーが持っている鏡の眷属器という代物に鏡を介して攻撃を誘導するスキルがありますぞ。




