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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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死より恐ろしい事

 その日の昼には隣町に居たパンダやエクレア、婚約者などとアーク達はお義父さんを介して自己紹介をしておりましたぞ。

 他にも主治医の研究所などにも出入りしているのを俺は見ましたな。

 夕方頃には厨房の方に来てお義父さんと一緒に晩ご飯の準備をしていましたぞ。

 俺はホー君に絡んで遊んで居ましたな。


「神狩りってもっと凄い存在なのかと思ったけど、結構普通なんだな」

「ラフー」


 キールは物怖じせずにアークに尋ねますぞ。


「そう言って貰えると僕は嬉しいかな。神狩りなんて大層な事を名乗ったけど率直に言えば自らの領分を弁えずに他世界に迷惑を掛ける連中を取り締まる自称処刑人って感じだし」


 アークは微笑んで答えておりますな。

 なんと言いますか非常に温和な人柄なんだろうというのは今日だけでも分かりますぞ。


「あんまりそこの猫を馬鹿にして下に見ると死んだ方がマシな事されるから注意しなよー。謙虚に振る舞ってるけど自称と呼ぶのはおこがましい化け物だからねーそういう連中の所為で多大な迷惑をそこの猫は被ってるんだよ」


 ホー君がそこで茶々と入れますぞ。


「アイツらの因果応報的存在って感じ?」

「そんな怖がらせるような事を言わなくてもいいじゃないか。むしろそこの鳥の機嫌を損ねると面倒だよー」

「ふふふ、今の僕は機嫌が良いからね。3億年くらいはご機嫌さ。今日一日、元康くんに絡まれてたけど揺らがないよ!」

「いや、お前は単位がおかしい事を言っている自覚を持てよ」


 3億年とは随分と長い時間、ご機嫌なのですな。


「いつだっけ? 他世界に寄生する奴で死んでも記憶を持ったまま中途半端な転生を繰り返す相手に怒って、ちゃんと転生するまでミジンコに転生させる様に書き換えをしてたよね」

「……どこの鳥と同じ事してんだお前」

「えー腐りきってどうしようもない奴に反省を促すのがそんな悪い事かなー?」

「まー……俺達基準だと被害に遭ったから酷いとは言えないな」

「確かにそうですね」


 転生者共は基本的に害悪ですからな。

 タクト然り、未だに世界に暗躍する連中を思うと碌な奴がいませんぞ。


「例外もあるにはあるんだけどねー。認められてない転生って大体魂が腐ってくんだよね」

「そうなのですな?」

「ああ、君達勇者の場合は違うから安心して良いよ。精霊に認められた死亡回避が挟まれていて、そもそも死んでないみたいだね」


 おお、俺は死んでいなかったのですな!

 ホー君の太鼓判をもらってしまいました。


「なるほど、わかりました!」

「返事は元気だねー、君は」

「そこの鳥には良い相手だな。同じ世界出身同士で仲良く漫才してろ。永遠にな」

「あー! 酷いなー! それを言ったらそこの猫は不死で身勝手な事をしてる奴を肉塊に変えて世界の終わりまで放置とかしたじゃん」

「世の中には滅より辛い事があるって事をたたき込んであげたんだよ。死なない事に調子にのって無数の悲しみを振りまく下衆にさ」

「どこの悪魔だお前は……しかし、死より恐ろしい事とやらは星の数ほどあるみたいだな」


 と、お義父さんは一定の理解を示しておりますぞ。

 なんて話をしている所でお姉さんのお姉さんが酒瓶を持ってやってきますぞ。


「あらーナオフミちゃん達ーお姉さんも混ぜなさいよー」


 ほろ酔いのお姉さんのお姉さんがお義父さん達に酒を振る舞いますぞ。


「アークちゃん達との出会いを祝って乾杯しましょー! ほら飲んで飲んでー」

「サディナ……お前って奴は」


 お義父さんがそんなお姉さんのお姉さんに呆れつつ酒を飲んでますぞ。

 お姉さんには程々に、お義父さんとアーク、ホー君には多めに振る舞っております。

 これはアレですな。お姉さんのお姉さんによる洗礼ですぞ。

 酒が飲めるのなら何処まで飲めるのかを推し量って居るという事ですな。


「あ、飲み口が良いね」

「度数が地味に高めだねー」


 アークとホー君はグビグビと出された酒を飲んで行きますぞ。


「うわ……竜殺し飲ませてるなの。容赦ねえなの」


 ライバルが遠巻きにドン引きしているのが印象的ですな。

 何でもドラゴンを酔わせる効果が高い酒をお姉さんのお姉さんは振る舞っているらしいですぞ。

 ですがアークとホー君は何処吹く風とばかりに出された酒を飲んで行きますぞ。


「ネクタルとかより僕は良いと思うな」

「あれってこう……傲慢な味がする事あるもんね。本物はもっと飲み口良いし、ソーマも贋作多くて困るよねー」

「規模がいちいちおかしいなお前等」

「ナオフミちゃんはこっちもあるわよー」


 お姉さんのお姉さんはルコルの実を房ごとお義父さんに差し出しました。


「ああ」


 お義父さんはそのルコルの実を摘まんで口に入れましたな。

 コレばかりはお義父さんしか出来ない芸みたいなものですな。

 余所の酒場などで同じ事をしていると周囲の者たちがドン引きしてテンションがダウンするという話ですぞ。

 お姉さんのお姉さんはお義父さんがこのルコルの実を食べれる事が良かったそうですな。

 今でもうっとりと見ていたりしますぞ。


「あ、ルコルだね。そういえばこの世界にもあるんだったねー」


 プチッとアークが粒を摘まんで口に放り込みますぞ。

 モグモグとお義父さんと同じく頬張っております。


「あらー……」


 お姉さんのお姉さんが驚きの表情をしておりますな。

 確かお姉さんのお姉さんの好みはお姉さんのお姉さんより酒に強い方ですぞ。

 お義父さん以外に一気に候補が増えますな!


「お前もこれ食えるのか。美味いよな」

「そりゃあね。ルコルの実って相当昔からある代物なんだよ。他の世界でも時々あるし」

「そんな古い代物なのか」

「うん」


 ホー君もプチッと取って食べ始めましたぞ。

 さ、さすがは神狩りの方々ですな。

 お義父さん以外で食べて平気な方を見るのは驚きですぞ。


「よ、酔わないのですか?」


 恐る恐るお姉さんがアークに尋ねますぞ。


「そうだね。僕は酔わないよ」

「僕も酔わないねー。そっちの猫が酔わないのは別だけど僕は火の化身的な側面があって酒って燃料って側面が強いかな」


 おお、ホー君は酒が燃料で燃えてしまうという事なのですな。

 車みたいなものでしょうかな?


「性格が常時酔っ払ってるみたいなもんだもんね」

「あ、それ言っちゃう? 酷いなー」

「そうか。そこのサディナって奴は自身よりも酒が強い奴が好みなんだ。俺へのアタックが強いがこれで分散出来るな」

「あらーナオフミちゃんったらいけずー。お姉さんよりお酒が強かった最初の人がナオフミちゃんなんだから目移りはしないわよー。一途なのよー」

「して良いぞ」

「いやーん! お姉さん、アークちゃんとホーちゃんが素敵とは思うけどナオフミちゃんから乗り換えないわー!」


 キャ! っとお姉さんのお姉さんがお義父さんの隣でテンション高くはしゃいでおりましたな。


「あはは。元気だねー」

「僕達は妻がいるからそこの猫に譲るよ」

「そうだな」

「いやーん!」

「はは、尚文君との方がお似合いだよ」


 と、アークは和やかにお義父さんへと誘導しておりましたぞ。


「ちなみに僕が知ってるルコルの実のエピソードって言うと……もの凄く酒に強い妖魔の女の子がさ。片思いの男の子に告白する為の後押しの為に服用したってのがあったねー」

「酒の勢いで告白ね」


 アークが思い出に浸るように顎を肘に乗せて目を瞑りながら微笑んでおりましたな。


「敵対関係だった子達なんだけど、幸せそうで良かったなぁ……」

「神狩りの敵対者か? 神を僭称する連中か?」

「んー……僕がやさぐれてた頃に止めてくれた人たちの話さ。神を僭称する連中と比べるのは失礼な良い子達だよ。お陰で今の僕が居るんだから感謝してるよ」

「アークさんがやさぐれてですか……」


 お姉さんの意見に賛成ですな。

 温和な方なのでやさぐれていたというのはパッと想像は出来ませんな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ループ世界って神刈り的にどう言う扱いなんだろう?
[一言] アークとホーの会話に耐えられなかった!「俺普段は大人しいけど怒らせたらマジヤバイよ…記憶なくして殴るから~」的なイキリオタク語録を思い出してしまった。完全に黒歴史じゃないか…。
[一言] >そこの猫は不死で身勝手な事をしてる奴を肉塊に変えて世界の終わりまで放置とかしたじゃん 某クソ女神にやってあげたいOSHIOKI
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