壁画の猫
「絶滅したとか語られていたっぽいけど何処かへ旅立って行ったって事なのかな……何処へ旅立って行ったんだろう」
「新たな解釈ね。母上」
「そうね。まさかこのような事実があるとは」
と、ダンジョンの最後まで来た頃には女王も見に来ていたのですぞ。
過去の歴史調査などが趣味の女王は見つかる代物に目を輝かせて調査しておりましたぞ。
「勇者様方、後ろの壁画が気になるのでそちらにも近づいてくださると嬉しく思います」
「はいはい。分かりましたよ」
樹が壁画の方へと近づきますぞ。
するとそこには尻尾がトカゲに似た形をした猫の獣人みたいな人物がペックル達や勇者達と一緒に並んで立っている様な壁画でしたぞ。
端には鯨のような物が二頭描かれていますな。
この壁画……フィロリアル様の聖域でも似たような代物を見た覚えがありますぞ。
「なんて言うか……記念撮影的な代物に見えるなぁ。完成記念みたいな感じ」
「間違ってなさそうですよね」
「だな。観光地とかの資料館で見たような構図にしか見えん」
錬と樹はなんとも言えない表情で壁画を見ていたのでしたな。
機材に関してですが、どうやら島での魔物の繁殖などの調整や季候関連に干渉する事が出来る代物だったようですぞ。
それと機材の中にペックルのジーンという代物が見つかりましたぞ。
主治医曰く、このジーンに収められた因子を使うとペックルに近い生き物を再現出来るとか仰っていましたな。
お義父さん達の考察では育てた魔物をクラスアップでペックルに近づける事で聖武器の技能でペックルを強化というスキルでバフを掛けるとか仰っていましたぞ。
そんなこんなで島の調査を終えて俺達は改めて人に戻って村での日常に戻ったのですな。
村に帰ってきた俺達は夜、村の食堂で各々食事をしながら雑談をしていたのですぞ。
「とんだ災難だ。最後まで行かせてあれか」
「ですね」
錬と樹は相変わらずダンジョンへの愚痴ですな。骨折り損とするには大量のレアアイテムや経験値、武器などが手に入っていますぞ。
「樹、次の休みにはドラウキューア山脈に行くか? きっと俺達をおちょくる仕掛けがあるぞ!」
「ノースフェラト大森林も良いですね。プラド砂漠もです。こうなったら何処まで行けるか、コンプリート出来るかも調査してやりますよ! そしてダンジョン内に制作者が居たら報いを受けさせてやりますよ! 本物のリスーカを血祭りにするんです!」
「なんて言うか……二人とも嵌まりすぎてるような気がするんだけどなぁ……」
お義父さんが苦笑いしながらそんな二人へと感想を述べますぞ。
ちなみにお義父さんはペックル姿に変身出来る魔法を覚えたお陰でお姉さんのお姉さんと海を泳いだりしているそうですぞ。
パンダともお散歩に行ったり、村でもペックル姿じゃないと見えない側面などを視察しているとの話ですぞ。
俺はウサウニー姿で人姿のお義父さんに毛並みを整えて貰いましたぞ!
フィーロたんやフィロリアル様、ラフ種やキールがお義父さんに撫でて貰う時の気持ちが分かりましたぞ!
「勇者達が満ち足りた生活をしている様で何よりなの」
「満ち足りてなんて居ません! 意地で攻略してやっているだけです! この世の全てを解き明かしてやりますよ!」
「冒険心が果てしないなの」
「隠しダンジョンが他にもありそうって事なんだろうね。まだありそうだし」
そうですな。赤豚の本体が潰したんじゃないかと考察されるダンジョンや宝などが他にもあるのは否定しきれないでしょうな。
「ある意味、元康さん達のこれからのループでも役立つ知識になり得るんですから悪く無い事でしょ」
「それはまあ、否定はしないなの」
「そういえばさ……よく疑問に浮かぶ事だけど、なんで元康くんはループをまたする様になってしまったんだろうね?」
これはよくお義父さん達と疑問に思う問題ですな。
結局は答えが出ない事なので深く考える事はありませんが。
「僕の命中の異能で正解を引き当てれれば良いのですが、さすがに分かりませんね。当てずっぽうで言っても当たるか分からないですし」
最近では樹が時々適当な事、お姉さんが俺への復讐にループさせているとか俺がフィーロたんに振られた所為で理想のフィーロたんと結ばれる為にループしている等腹立たしい事まで言っているのですぞ。
樹はいい加減にしないと次のループで地獄を見せますぞ。
「もしかしたら元康も最初の世界でこんな感じでダンジョン巡りをした結果、ループする武器をもう一個手に入れてしまったから……とかかも知れないな」
錬も考察に参加しますぞ。
そんな出来事がありましたかなー?
なんとなくですが違うような気がしますな。
「元康くんもあやふやに覚えている所も多いからなぁ。ガエリオンちゃんは元康くんがループする前後の時期とかは分からないの?」
「調査中としか言いようがないなの。しっかりと分かる様にマメにガエリオンも記録してるけど上手く行かない事が多いなの」
「……何かしらの対策は取るべきだな」
「ですね。僕たちでも出来る手立てがあるならやって置いて損は無いでしょう。他のループの僕たちの為に」
「元康は不要だと判断したら俺達を容易く見捨てるのは分かってるからな」
と、錬と樹が何やら打ち合わせを始めますぞ。
「ま、結果的にフォーフェアリーモーフって面白い魔法を覚えられたから良いよ。樹、ポリモーフは結局習得出来たのかい?」
「もちろんですよ。尚文さんに掛けてあげましょうか? アレですよ。尚文さんに似合うポリモーフは猫ですかね」
――ッ!
何やらズキンと頭痛がしたような気がしますぞ。
なんでお義父さんがポリモーフするという出来事で頭痛が少しするのですかな?
「猫かーそれも悪く無いかもね」
「猫と言えば……あのダンジョンの壁画に描かれて居た猫の獣人っぽい方は誰なんでしょうね? 歴史とかにそれっぽい方が居ましたっけ?」
「どうなんだろ? 女王かシルトヴェルト辺りの考古学者に聞いて見るのが良いのかなー? ガエリオンちゃん何か知らない?」
「な、なの……し、知らないなのー」
ここでライバルがここぞとばかりに怪しげな態度をしましたぞ。
なんとなくですがこの壁画の人物を見たような記憶が蘇って来ましたぞ。
「そういえばドラゴン共の上司って奴がいるって話を何処かで聞いた覚えがありますぞ! ライバル!」
「バッカおめー! あの人を怒らせたら堪ったもんじゃねえなの! 世の中死ぬより恐い物があるって事を知れなの!」
焦った様子でライバルが俺に言い返して来ましたぞ。
「元康に根に持たれて何処のループでも惨たらしく殺されるようなものか」
「似たようなもんなの」
「そんな方がいるなら何にしてもガエリオンさんのいたずらに対して、僕たちで遊ばないように窘めてほしいですね」
「だな。一体何処に居るんだ?」
「そんな恐い上司……ドラゴンなの?」
「恐いかと言えばただ存在するだけで恐い方なの。ただ……出会った感想で言えば滅多に怒るような方じゃないなの。ドラゴンの本能が恐れてるだけで勇者達は全然恐く感じないと思うなの」
「よくわかりませんね」
「ガエリオンや竜帝はグレーラインな事をしているから感じているだけなの。人柄は……穏やかだったなの」
「……そうですな。怒るような方とは俺も感じませんでしたぞ。ただ……」
俺はふと、お義父さんへと視線を向けますぞ。
あの方は……確か……。
「元康くんも会ったことあるんだ?」
「ですな……あれは何処で会ったのでしたかな?」
ループ中でしたかな? それより前でしたかな?
遙か昔で曖昧なのですぞ。
「何にしても探し出してガエリオンさん達の悪行を暴露して叱って貰いましょうかね」
「ガエリオンは文句を言われるような事はしても怒られる謂われはないなの! それを言ったら槍の勇者にもフィロリアルの上司に注意して貰ってやるなの。確か同世界に居たことあるって言ってたなの!」
「そんなのも居るのか」
「フィロリアルの上司なんているんだね」
「正確には鳥類の上司と言うべき存在なの。めっちゃ軽い様に見えて面倒な奴だったなの」
――ッ。
思い出そうとしてお義父さんの事を考えて居ると……激しい頭痛と共に、俺は……とある記憶が蘇って来たのですぞ。
もふもふの章終了~~からの追想の章です。
 




