中華まん
「わー露骨にウサウニーしか通れないってギミックだね」
「元康さんにすぐチェンジですか。アレを取って下さいね」
「樹は注文が多いですなー」
と、俺はすぐにキャラクターチェンジをして壁を越えて祭壇に触れますぞ。
すると光が俺を包み込みましたな。
お? 体が勝手に動きますぞ。
ピョン! っとジャンプしたかと思うと何もない空間を足場にジャンプしましたな!
「なんですかな?」
もう一度実験にジャンプして意識した所で何もない空間で着地してジャンプ出来ましたぞ。
「二段ジャンプ……もしかして開拓生物の種族特徴がパワーアップするギミックまである感じかな?」
「さっきの段差を二段ジャンプで超えて行けって事でしょうね。マップを確認すると特に強化無しで行けそうな道が他にもありましたね。そっちにもボスが居て倒した先にこう言ったギミックがあって集めないと進めないとかありそうですね」
「厄介な……パワーアップしたくないぞ。どうなるか分かったもんじゃない」
二段ジャンプですぞ!
ピョンピョンですぞー!
「どんどん行きますぞー!」
という訳で来た道を戻って二段ジャンプで壁を乗り越えて進みますぞ!
そんな感じで俺達は場内の行ける所を進んで行きましたぞ。
ボスドロップ品で手に入ったのはクラスアップ変化アイテムなどが多いですぞ。地中整備に使われているデューン等の魔物の特殊ボスのクラスアップアイテムだったり、昆虫系の魔物を特殊クラスアップで強化するアイテムだったり色々と種類毎にいろんな道具が手に入りましたな。
その先で開拓生物のパワーアップも出来ましたぞ。
俺は先ほどの二段ジャンプですな。イヌルトである錬は壁抜けが出来て同じ動きをする分身を作り出す能力を得ましたぞ。
リスーカである樹は滑空が出来る様になったようでジャンプすると落下速度が大幅に下がるようになりましたな。
ペックルであるお義父さんは周囲に氷を纏って敵を一定時間硬直させる事が出来る様になりましたぞ。
「俺にも攻撃手段が出来たー! っと思ったら硬直させるだけでダメージは入らないんだなー……」
「どこまでも徹底してますよね。尚文さんのスタイル」
「盾の勇者だからしょうがないのかなー」
ライバルがここで笑顔でお義父さんの肩に手を置きやがりましたぞ。
「なおふみ、そこはガエリオンを初めとしたみんなの役目なの。これはどの世界でもなおふみの仲間達が心から思って居る事だから気にしなくて良いなの」
俺も言いたかったセリフをライバルに先に取られてしまいましたぞ!
ライバルめぇええ……ここでポイントを稼ぐつもりですかな!
「ガエリオンちゃん……元康くんが怨霊みたいな顔をして見てるよ。その後ろで見てるユキちゃんの威圧も恐いから程々にね」
「お姉さんのお姉さん達が居ない隙を狙ってお義父さんを誘惑する気ですな! させませんぞ!」
「ちげぇなの。いい加減槍の勇者は理解しろって言ってるなの」
そんな言葉に俺は惑わされませんぞ!
「やれやれなの。槍の勇者、なおふみのこの悩み、お前の知る最初のなおふみのラフーだって同じ事を言ってたはずなの。それを代弁してるだけで攻撃役はガエリオンだけだなんて本気で言ってないなの」
何を大人ぶっているのですかな! 知ってますぞ! その態度でお義父さんを誘惑するというのをですぞ!
お義父さんは頼りになる相手に弱いですからな!
「そもそも攻撃役はお前も同じなの。ちゃんとなおふみの力になれば良いだけなのー」
「本当、元康さんとガエリオンさんって精神年齢が逆転してますよね」
「昔は尚文の童貞欲しくて媚びるわ騒ぐわしていたのに、今が嘘みたいだな」
樹と錬が俺とライバルを比べていますぞ!
これが奴の手なのですぞ!
「お義父さん! 誘惑されてはダメですぞ!」
「この流れで誘惑されるってのもな……とは思いつつガエリオンちゃんの伝えたい事は分かってるよ。元康くんは元より錬や樹もいるからね」
大丈夫さ、とお義父さんは頷いて下さいましたぞ。
「ただ思うのだけど歴代の盾の勇者って、みんなこんな悩みを持っていたのかなー攻撃出来ない守るだけって結構大変だよね」
「どうなのでしょうね。ラフえもんさん達の話じゃ未来で盾の勇者は以降登場しないそうですし」
「うん。そういう話みたい」
「シルトヴェルトだとその辺りの資料とかありそうだけど……フォーブレイで過去の勇者が残した品ってのに投げる前提の盾とかあったりするから怪しいんだよねー」
と、お義父さんは盾をマジマジと確認しておりましたな。
「ともかくペックルは硬直技が使えるって事だから出て来る魔物を硬直させて足場にして進めって事なんだろうね」
「尚文さんに頼る状況ってあるんでしょうかね」
「まあ、ペックルでしか進めない水中とかで使うんじゃない?」
「あー……ありそうですね。で、僕は滑空ですか、落下時間が減少してゆっくりと落ちるみたいですね」
樹がピョンとジャンプするとふわっと落ちてきますぞ。
「リスーカではなくモモンガですぞ!」
「言うと思いましたよ! 何なんですか! この微妙な能力は! 武器の反動で飛べたりする訳ですから死にスキルですよ!」
って所で出撃している錬が分身を何度も試していますな。
「錬は気に入ったみたいだけどね。分身」
「ち、違う! 必要になった際に使える様に練習してるだけだ。上手くすればルナからも逃げやすくなるだろ」
「分身は露骨に半透明でバレますけどね。一見すると格好良く出来そうだから魅力を感じているんですね。誤魔化さなくて良いですよ」
「ち、ちがう!」
完全にバレバレな事を錬は誤魔化そうとしていましたぞ。
「ともかく錬さんどんどん行きましょう。正直宝物庫なダンジョンですし、経験値も相当稼げるみたいですから」
もはやヤケになったとばかりに樹がサッサと行けと錬へと指示をしますぞ。
「俺が行くのか……」
「元康さんでも良いですけど、錬さんも探索向きですからね。匂いとか判別出来ますから」
ちなみにお義父さんが直感で俺に壁を掘れるか試して欲しいという所で掘ることが出来る壁があったりしましたぞ。
薬とか経験値ボーナスアイテムなどが壁が崩れて出てきましたな。
そうしてどんどん俺達の場内探索は進んで行きますぞ!
その途中……水中への入り口が何度もぶつかりましたぞ。
「……そろそろ尚文に探索して貰った方が良いか」
錬が水辺を確認しながらお義父さんに交代を要求してきましたな。
俺が行けたら良いですがここの水場も前回のダンジョンと同じ仕様で泳げないのですぞ。
「ん? 俺の出番?」
「ああ……って何か音がするが尚文、何してるんだ?」
こちらの様子を錬は音でしか把握出来ませんからな。
お義父さんが画面を見ながら何をしているかというと……。
「何ってダンジョン内で話をしていた島の目玉料理を作るって事で研究用に開拓生物を模した中華まんを作ってたよ」
バシュッと錬がポータルで入り口に戻ってきて、蒸し器で中華まんを作っているお義父さんを含めた俺達へと視線を向けましたな。
「ここで作るってどうなんだ尚文!」
「だって俺の出番少ないし、見てるなら何か作って下さいって樹が視線を送ってくるからやるしか無かったんだよ」
「約束ですからね!」
「俺も手伝いました!」
モフモフの手でお手伝いしましたぞ。
お義父さんから直接料理を教われるので勉強になりますからな。
今回は俺達を模した中華まんをお義父さんは試作して下さいました。
お義父さんが出来上がった中華まんを蒸し器から取り出して錬に差し出しますぞ。
「イヌルトの中華まんですな。中は肉まんですぞ! 具はしっかりと把握しておりますぞ!」
「ガエリオン達が本島の方から材料を持ってきたなの!」
ライバルは足りない調味料を調達してきましたぞ。
「資料を纏めて母上に提出しようと少し留守にしてガエリオンさんに迎えに来て貰ったけど……勇者様達は自由だわね」
本島の連絡出来る所に婚約者が報告に行っていた様ですな。
割と買い出しに行けるゆるいダンジョンですな!




