四連撃斬
年毎に仮装が違ったのですがその中で吸血鬼があったのですぞ!
ああ、素晴らしかったですな。アイドルコンサートでもあった衣装ですぞ!
お義父さんも吸血鬼コスは似合うはずですぞ。
ハロウィンの時のお義父さんは……なぜかペックルの着ぐるみを着ている姿ばかり浮かんで来ますぞ。
それも激しく面倒臭がっていましたな。
初年度はラフ種の着ぐるみをいそいそと用意してお姉さんに止められたのでした。
そしてラフ種にお義父さんはコウモリの羽を付けて微笑を浮かべていましたな。
ちなみにお義父さんはミイラ男コスをしようとして、お姉さんに止められましたな。俺もお義父さんのミイラ男コスはなんとなく嫌ですぞ。
こう……血まみれになったお義父さんが思い浮かびますからな。
お姉さんのお姉さんはお義父さんに猫コスをさせたがりましたぞ。
パンダはお義父さんにボディペイントでドクロにさせられてましたな。この時ばかりは悪くないとパンダも気にせずに仮装しておりました。
「実際、どっちなんでしょうね。元の姿の元康さんか、ウサウニーの元康さん」
「そこにこだわらないでくれないかな?」
「元康は顔が良いから吸血鬼姿は確かに似合うな」
「それは錬も樹もでしょうが……」
みんなで吸血鬼コスをしますかなー!
「結局、知られざる開拓地の名前の由来判明なのー?」
「いやいや……これがヒントだよって伝承が残っていたとしてもここまでたどり着けないでしょ。名探偵もびっくりの謎解きだって」
「確かにそうですね。島由来の機材で変身魔法を使ってダンジョンに来て隠された城のギミックをトーテムポールで行う事で入れる様になるなんてやり過ぎですよ」
「暗躍していた奴がいるからな……名残だけあったというならあり得る話だぞ」
お義父さん達の会話の中でパタパタとライバルが羽ばたく音が聞こえましたぞ。
「そういえば吸血鬼ドラキュラって何処かの言語で竜の息子って意味だって聞いたような気がするなー」
お義父さんがライバルを見ながら呟いているような声音で言いましたぞ。
「吸血鬼ってドラゴンなんですか?」
「なの?」
「俺の世界での実在しないドラゴンの話だけど、ドラゴンって場所によっては悪魔って意味でも通じるらしくてね。その辺りが混在していた時期の名残だと思う」
「こっちの世界では見た目だけの色ボケ生物だがな!」
「何とでも言えだのーん!」
錬の指摘も何処拭く風とばかりにライバルが聞き流しますぞ。
「つまり吸血鬼コスはドラゴンコスだから辞めろという事ですな! お義父さん!」
ドラゴン由来の格好と言うのならこの元康、するわけには行きませんぞ。
よくよく考えて見れば吸血鬼はコウモリの羽を生やしたりしますからな。
確かにドラゴンっぽいですぞ。
「別にそんなつもりじゃなだけど……ユキちゃんはどう?」
「吸血鬼とはどんな格好なのですわ? ドラゴンの格好なのですか?」
「ぶっちゃけ……このカルミラ島のホテルを管理してるハーゲンブルグ伯爵が接客時にしてる格好だよ」
「ただの燕尾服ではありませんの?」
「アレに黒いマントを着けてる感じだね」
「ならドラゴンではありませんわー! 元康様なら似合うと思いますわ!」
ユキちゃんがエールを送って下さるのでここで決めポーズですぞ!
荒ぶるフィロリアル様のポーズですぞ。
クエー!
「なんで唐突にポーズを……ウサウニーだから締まりが無いよ」
「無駄なポーズを取るボタンを押した気分になりますね」
「そうだな」
「元康様ー! ファイトですわー!」
ユキちゃんの応援を受けて俺はどんどん進みますぞー!
「しかし思うのだけどさ。吸血鬼って割と中二設定で良く使われる題材だけど錬は詳しく無い感じ?」
「そこで俺に話を持ってくるな」
「ちなみに最初の世界の錬やフレオンちゃんと仲が良い錬は吸血鬼コスをしたことありますぞー!」
「黙れ元康ー!」
戦う俺へ錬がヤジを飛ばしてきましたぞ!
なんですかな! 補足をしているだけですぞ!
「アレですよ。吸血鬼って概念は採用して血を媒介に、みたいなイメージはあるのですけど吸血鬼に関する資料は深く集めて無い感じだったのかも知れません」
「いや、錬の反応からして多少は知ってるんじゃない? あくまで吸血鬼を倒しに城に乗り込むゲームを知らなかっただけで」
「分析しようとするな。俺はその辺りは卒業したんだ。クロとフレオンを呼びかねないだろ」
「どうでしょうね……フィロリアルの羽を付けた錬さんは手術で取るのを先延ばしにしていた様ですし、背中にコウモリ……ドラゴンの羽とか付けたら喜びそうですよね」
「あ、そういう仮装の道具があるよ。待ってて」
ここでラフえもんが道具を取り出そうとする声がしますぞ。
お、乱れ突きとセカンドジャベリンが使える様になりましたぞ。
「どうしてそんなしょうもない道具をお前は持ってんだ! 樹! ラフえもんを止めろ!」
「未来の不思議な魔法道具って夢があるよねー」
「コスプレがしたいなー、で出して下さるラフえもんさんはどうなんでしょうね」
「空は自由に飛べるもんね」
「そこは持って行かないで下さい。ラフえもんさんも面倒なんで出さないで結構ですよ」
「そうかい?」
などとお義父さん達の雑談の声を聞きながらドンドンと進んで行きますぞ。
途中……ジュー、とお義父さんが料理をする音が聞こえてきました。
「お義父さんが料理をしている音ですぞ!」
「あ、うん。みんなお腹空く頃だと思って錬とガエリオンちゃんと一緒に料理してるよ」
「ライバルがですかな?」
「フライパンの下から弱火でブレスを吐かせてる」
「なのー」
ボーっとライバルが火を吹く音がしますぞ。
「城に一度戻ってでも良さそうですけどね。プレイ動画を見ながらの料理が来る光景を見るのも悪く無いですね」
「樹! チェンジを要求しますぞ!」
「いえいえ、元康さんこそどんどん進んで下さい」
く! 樹の奴、円から出てるのかチェンジ出来ませんぞ!
むしろ錬もチェンジ不可ですぞ。
お義父さんのお料理タイムなのですぞ! 香しい料理の匂いを嗅げず耳だけというのは中々辛いのですぞー!
「出来上がったら元康くんと交代してあげるから安心して」
お義父さんのお優しい言葉が聞けましたぞ。
そうして進んで魔物を倒していると……。
「あ……レアドロップだな」
錬がポツリとウィプゴースという布を被ったお化けみたいな雑魚魔物の幻影を倒した際に呟きましたぞ。
「何? 何か出た感じ? 錬だけ反応したって事だけど」
「ヴァキュガストって剣だな。どうやら剣枠だったから俺に反応したみたいだ」
「語呂悪いですね。それってどんな剣です?」
「元の攻撃はそこそこ強力だが……大した事は無さそうだ。解放効果も速度が上がるが、劇的な代物じゃない。四連撃斬って専用効果があるだけだな」
「へーちょっと試して見てよ」
「ああ」
そう言って錬が素振りをしたらしき音が聞こえてきますぞ。
シュシュシュン! っと音がしましたな。
「一振りで追うように風の刃が三つ出るみたいですね」
俺は出撃しているので見えないのが惜しいですな。
「……錬、それってかなりぶっ壊れ武器じゃないかな?」
「は? これがぶっ壊れ?」
「だってそれ、一振りで三回攻撃が続くんだよ? 適当に振りかぶるだけで手数が増え続けるんだからさ、それを元にするか合成でその専用効果を移植出来れば常時手数が四回攻撃だよ。スキルまで反映されるかは検証次第だけど」
「え、エアストバッシュ!」
「さすがにスキルが四発は出ませんね」
「だろ? さすがにこれが壊れ武器じゃないよな」
「いやいや、スキルのクールタイム中も通常攻撃で敵を近寄らせないんだから強いって、だって樹が矢とか弾を撃っても高確率で迎撃出来ちゃうって」
「え? え? え?」
錬がぶんぶんと適当に剣を振っているのか風切り音が鳴り続けますぞ。




