ウサウニージャンプ
気がつくとポータルで移動した様に島の入り口に戻って居ましたぞ。
「帰って来れたね」
「帰りは一瞬だったな」
「島の様子は……活性化で賑わって居るけど問題無さそうだね」
「全人類開拓生物化は避けられましたか……」
「なんでちょっと残念そうなの?」
樹が若干残念そうな声音で言いますぞ。
「いえ、未来の世界は開拓生物と化していたというのもある意味、人種差別などは無くなったと言えるかも知れないと思いましてね」
樹の答えにお義父さんと錬が眉を寄せましたぞ。
「きっと差別は起こると思うよ。ペックル族やウサウニー族、イヌルト族にリスーカ族がそれぞれ覇権を掴むためにみたいにさ」
「だろうな。頭の中身がフィロリアルのような脳天気でも無い限りは無理な話だ」
「フィロリアル様だって賢い子もいらっしゃいますぞ!」
脳天気とは酷いですぞ。感受性が豊かで深く考えず進む事の素晴らしさを行動で現しているだけですぞ。
「そういうものですかね……」
「あ、そこにいらっしゃるのは勇者様方」
婚約者がサクラちゃんと一緒に帰ってきた俺達を見つけましたぞ。
ほぼ同時にライバルも空から舞い降りてきましたな。
「魔力の流れから何かあると様子を見に来たらいたなの」
「サクラちゃんとメルティちゃん、ガエリオンちゃんただいま」
「ナオフミ、お帰りー」
「ユキちゃんは何処ですかな?」
「ダンジョンの入り口で槍の勇者の帰りを待っているなの。すぐに呼ぶから安心しろなの」
ライバルの証言など信用出来ませんぞ。
婚約者に目を向けると婚約者がため息交じりに島の職員に声を掛けましたぞ。
すぐにユキちゃん達も来るようですな。
「それで勇者達、その姿のままという事は……結果は良くなかったなの?」
「いや、そうじゃなくダンジョンの攻略は出来たんだけど、最後に元の姿に戻れるらしいヒントを見つけたって所だよ」
「ちょっと不安でしたが無事で良かったわ」
婚約者がホッと胸をなで下ろしますぞ。
「そう、それは良かったなの。じゃあ次は何をするなの?」
「正直ネタにしか成らない行動だと思いますけどね」
「そうだな」
「ヒントってどんなものなの?」
「ああ、実は――」
と、お義父さん達はライバルに向けて先ほど見た壁画に関する話をしたのですぞ。
「島のオブジェに……ガエリオンも見た時、なおふみが思ってそうだなとは思ったなの」
「長年尚文さんを見てるガエリオンさんはお見通しですか」
「ワイルドも優しいなおふみも両方、ぼけっとした時に考えて居るのは同じなのー」
く……それは俺だって分かりますぞ! それにお姉さんもその辺りはすぐに察して俺より先に指摘しますからな!
大人姿のお姉さんがですがな。
「理解されてるのか、読まれてるのか……」
「イツキさまー!」
「ああ、リーシアさん達も来ましたね」
「元康様! お帰りなさいですわ!」
「おかえりー」
ユキちゃんやコウも聞きつけてやってきましたぞ。
樹の方はリースカ達と一緒ですぞ。
錬はブラックサンダーが来るはずですが来ませんな? 周囲を確認するとクロタロウはホテル兼、城の屋根に登って居るようでしたぞ。
あの場所が好きですな。
錬も気付いたのか登っているクロタロウを遠目で見ておりますぞ。
「ともかく、サッサと島の謎を解き明かしましょう。この先も何か一癖ありそうな気がしますが、運が良ければすぐに元に戻れるかも知れません」
「前提のダンジョン攻略をするだけで済むって考えだね。後はお宝があるだけだと良いんだけど」
確かにそうですな。また100階のダンジョンがあったら面倒ですぞ。
等と話をしながら俺達は島にある勇者固有魔法が刻まれた文献のあるオブジェの前に来ましたぞ。
開拓生物を形作るトーテムポールみたいな銅像ですぞ。
銅像にしか見えませんが長年の風雨で錆があるようには見えない不思議なオブジェですな。
「……それでですが、ここで僕たちが肩車をするんですよね」
「そうだな……順番はやっぱりここのオブジェ通りにする必要がありそうだ」
「一番下が錬でその上が樹、その次が元康くんで一番上が俺になる形だね」
「ああ……そういうわけだ」
錬がトーテムポールの前に気怠そうに立ちましたぞ。
「肩車とかどんなネタですかね。この光景をルナさんが見たらどんな顔をしますかね」
「喜びそうだね」
という所で、最初の世界のお義父さんは蚊帳の外だったら楽しそうに苦笑している様な気がしますぞ。
対岸の火事は面白いなラフタリア。とお義父さんが俺達を指さしたりしてそうですぞ。
お義父さんが喜ぶのでしたらこの元康、喜んでしますぞ。
樹が渋々と言った様子で錬の体をよじ登りましたぞ。
「ほら、次は元康さんですよ」
「任せろですぞー! ウサウニージャンプですぞ!」
地面を力の限り踏みしめて俺は高らかにジャンプ!
樹の肩に全力で着地しますぞ!
「合体フォーメーションですぞ! 確かパイルダーオンですな!」
お義父さんだったらそう言った叫びをする気がしますぞ。
「おわ!」
ぐらぐらと錬が支えきれずに倒れてしまい、俺と樹は地面に転がりました。
「少しは考えてくださいよ! なんで全力で飛び乗るんですか!」
「錬、腰に力を入れないとバランスを保てるはずも無いですぞ」
「俺の所為か!? 元康が思い切り飛び上がって樹を踏み潰す勢いで落下してきたのが原因だろ」
「むしろ僕の体がよく持ちましたよ! もはや踏み付けでしたよね!? 元康さん、殺す気ですか!」
樹は大げさですぞ。
「元康くん……というかこの問答が完全にルナちゃんに見せられないね」
「喧嘩をしてるはずですけど……こう、何か癒やされるような気がするわ」
婚約者が若干視線を逸らしつつ微笑んで居るような気がしますぞ。
「本当、勇者達が仲が良くて、進んで行った道中を撮影出来たらよかったなの。きっと癒し枠で人気出るなの」
「癒し枠でも何でも無いですからね! 僕の頬は膨れませんよ!」
「ユキちゃん! 樹は水に漬けると頬が膨らんで浮かぶのですぞ!」
「是非みたいですわ!」
ここでユキちゃんに道中発見した出来事を報告ですぞ!
「だからなんで余計な事ばかり暴露するんですか!」
「元康は大人しくしてろ!」
「そもそも土台としての安定性で言ったら尚文さんが一番適任なのに一番上ってのが嫌らしいですよ!」
「まー……こんな姿でも盾の勇者だからみんなの中では頑丈だろうね。問題は一番上に登るのが一番大変そうだけどね」
「とにかく、やりますよ。元康さんも変な事はせずに乗って下さい」
「変な事などしてませんぞ」
一気に飛び乗っただけなのですぞ。
「よし、樹」
「ええ」
先ほどと同じく錬の上に樹がよじ登りますぞ。
「元康、乗れ」
「わかりました」
「おい、なんで――ふべ」
錬と樹がうるさいのでよじ登りますぞ。
錬の顔を足場に樹の体を登ってひょいと肩に乗り、樹の頭を足で挟み込みますぞ。
「ふぐ――! 元康さん、もう少し頭に掛ける足の加重を減らせませんかね」
「注文が多いですな」
という所でぐらぐらと錬が揺れる所為でバランスが崩れますぞ。
「錬、しっかりと支えるのですぞ!」
武器を強化してLvも十分なのにその体たらくは何ですかな!
「顔を踏んづけておいて何を言ってんだ。むしろフリフリするな、元康!」
「元康くんが完全に迷惑を掛けてる……」
「次は尚文さんですよ。元康さんがうっとおしいんでささっと来て終わらせましょう」
「う、うん」
と、今度はお義父さんの番ですぞ。恐る恐ると言った様子でお義父さんはよじ登ってきてくださいますぞ。
「ああ、足が短くて登りづらい……」
お義父さんはペックルなのでこの中では足は短いですからな。