百階のボス
「……」
「こう、なんだろうね……ループ直後の元康くんの再現?」
「……次はウサウニー系が来ると良いな」
「ペックルコーナーを過ぎて良かったと思うべきなのかな」
と、錬とお義父さんが樹に遅れて着いてきましたぞ。
次から出てきたのはイヌルトシャドウ系でしたが俺達の快進撃は止まりませんぞ!
「ダークウェイクレジェンドとラフミマーダーですぞー!」
っと出てきたブレイブイヌルトシャドウとライトニングユニコーンに向かってアースイグニッションⅩで仕留めますぞ。
「元康、ワザとか? ワザとそれっぽいかけ声で瞬殺してるのか?」
錬が先ほどの樹の様に剣を俺に向けて構えますぞ。
どういう意味ですかな?
「闇覚醒伝説……とラフミちゃんマーダーね……」
「故意犯ってのは元よりブレイブペックルシャドウの時のような葛藤も無く秒殺する所に悪意を感じますよね」
「そもそもマーダーって……」
「元康くん。さすがに錬と似てるからって思ってる事を叫びながら躊躇無く仕留めるのはどうかと思うのだけどなー……」
「進む為にやむなくですぞ。そもそも混戦して本人と間違えたら大変ですぞ」
「どうだかな……」
「見間違えるってのが失礼だというのを理解してほしいものですね」
何やら錬と樹がいつになく絡んで来ますな。進む為にやむなくですぞ。
お義父さんを模した盾を持ったペックルを倒してしまった俺達は進むしか無いのですぞ。
「この流れだと次はウサウニーシャドウが出て来る事になるんだけど……」
「任せろ」
「僕たちの出番ですね。今なら容易く屠れますよ。ウサギ狩りは弓の勇者の本領発揮と行きましょうか!」
何やら樹と錬がやる気を見せながらウサウニーシャドウを相手にサクサクと進んで行きましたな。
そうして出てきたのがクラウドナーガとブレイブウサウニーシャドウでしたぞ。
俺も負けて居られないですぞ!
「ブリューナクⅩですぞ」
「ピョ――」
こうしてクラウドナーガとブレイブウサウニーシャドウは消滅したのですぞ。
「うわ……この人、自分によく似た魔物を躊躇いもなく蒸発させましたよ……」
「ははは! ウサウニーシャドウなどフィロリアル様の餌であるウサピルと似たようなもんですぞ!」
「幾らウサギ繋がりだからってそうポンポン仕留めて良いとは思わないんだけどなー……」
「自分を仕留めるみたいでやりづらさとか無いのか元康は」
全くありませんぞ。
所詮は俺の偽物。
過去の愚かな俺を仕留めるような気持ちでブリューナクですな。
お義父さんに似ている魔物と一緒にするな、ですぞ。
「ある意味参考にすべき所なんですかねー……」
「いい加減、面倒になってきた。そろそろ最上階も近いだろ。行くぞ」
俺達は100階に到達しましたぞ。
すると出てきたのは体躯は異様に大きいどことなくライバルの子竜形態を彷彿とさせる妙なドラゴンでしたぞ。
名前をア・バオアクーですな。
「ガウウウウウウン!」
っとライバルっぽい感じの鳴き声ですぞ。
「100階なのに随分とコミカルなドラゴンが現われましたな。ライバルみたいでやりがいがありますぞ」
「ガエリオンちゃんにそこまで似てる? ドラゴン系って所はそうだと思うけど……名前的に幻獣の方だと思うんだけど、ドラゴンって記述は無かったと思うんだけどなぁ」
「似てると言うほどでも無いな」
「俺の世界だとロボットアニメで登場する要塞で有名なんだけどね。元ネタ的にはそっちも幻獣から来てるんだろうね」
「幻獣ですか……さすがに100階なんで話とか出来ないんですかね?」
「ガウウウウウン!」
バチバチ! っとア・バオアクーはこっち目掛けて会話などするつもりは無いとばかりに電撃のブレスを放ってきましたぞ。
お義父さんが前に出て流星盾を展開して受け止めて下さいましたな。
「ガウウウウウウ!」
「これでライバルが、『真の黒幕はガエリオンなのーん!』と喋れば完璧ですな」
「ガウウウウ! ガア!」
今度は上から落石が現われて落ちて来ましたがこちらも容易く処理ですぞ。
ゴゴゴと地面が揺れる地震攻撃もありますが俺達の力の前には大した脅威ではありませんぞ。
「そんな様子はありませんけどね」
「失恋をひた隠したライバルの復讐なのですぞ。きっと」
「何処までもガエリオンちゃんの所為にしたがる元康くんって感じだけどね。ガエリオンちゃんはネタには走るけど恋愛は大人しいけどね」
「戻って来たと言うまでは随分と尚文相手に恨み節に近い念を飛ばしてたもんな」
「確かに大人しくはなってますよね。普段はむしろラフちゃんと同等に尚文さんに撫でて貰う程度のポジションで落ち着いてますし」
それが奴の作戦なのですぞ。
「ここで会ったのが運の尽き! 正体を現した今こそ息の根を止めてやるのですぞ!」
「別人ならぬ別竜だと思うけどねー」
「一気に仕留めるのですぞ!」
俺としてはライバルを相手にする様な感覚があるので非常にやりやすい相手なのですぞ。
「では一気に仕留めますぞライバル! 喰らえですぞ! エイミングランサーⅩ! ブリューナクⅩ! グングニルⅩ! リベレイション・ファイアアイⅩ! リベレイション・ファイアストームⅩ! リベレイション・プロミネンスⅩ! ハハハ!
弱い! 弱過ぎるぞぉおおおおおおお!」
「元康落ち着け! オーバーキルにも程がある」
「ここを壊すつもりですか!」
「元に戻るための手段も諸共分からなく成っちゃうから落ち着いてー!」
お義父さん達がア・バオアクーへと猛攻を繰り広げる俺へとエールを送って下さいますぞ。
見ていてほしいですぞ!
「これでトドメですぞー!」
と、俺はア・バオアクーならぬ大きなライバルっぽいドラゴンを消し飛ばしてやったのですぞ。
「ど、どうにかダンジョンが壊れずに済んだみたいだね」
「もっと加減というものを知ってほしいもんですよ」
「全くだ」
お義父さん達が煙が立ちこめる100階の煙が晴れた所で話を続けますぞ。
後はダンジョンクリアの扉を抜けるだけですな。
ちなみにア・バオアクーを倒した時に武器も解放されましたぞ。
真・ウサウニースピアという代物でしたな。
ウサウニーのステータスが超アップという専用効果のある武器の様でしたぞ。
「100階のボスはアーベントグレートDって錬が言ってたけど違ったね」
「そうだな。やはりゲーム知識は宛てにならないのがこの世界だな」
「で……ここが一応最上階って事になるのかな? 道中で見つけたシーラカンスの模型は……ただのお土産だったのかな?」
ちなみにシーラカンスの模型は現在、錬が持ってますぞ。
そこそこ大きいので順番に持つことにしていたのでしたな。
「そうは成ってほしくは無いですが……」
「クリア一番乗りは俺ですぞー」
と、ゴールらしき扉に近づいた時……何やら声が聞こえてきました。
それはフィーロたんによく似た声でしたぞ。
『この声はあなたの中で最も愛おしい異性の声で再生されるよー』
「ハウ!? フィーロたんの声がしますぞ! 何処ですかな!?」
「え? そんな声がする?」
「しますかね? あ、なんか聞こえてきますよ」
「ん? なんか聞こえるか?」
お義父さんと樹が耳に手を当てるようにしておりますぞ。
『槍の人ーよくここまで来たねー。でも、いまの槍の人はこの先の扉を開ける資格は無いよー。厳重に封印されたこの先の扉を開ける為には迷宮内にバラバラに隠された鍵が必要になるんだよ。その鍵は共に迷宮に挑む仲間達と力を合わせて集めないとダメなんだってー。この迷宮内の各地に隠された鍵を探すため今一度帰り探してきてー。あと、各島の迷宮には便利な道具や魔法が隠されて居るからそっちも挑んでねー。この先で必要になるよ』
そういうフィーロたんの声は徐々に遠くなって言ってしまい。追いかけようとしましたが壁にぶつかった様に先に進めなくなりましたぞ。
文字通り透明な壁が扉の前にあるのですぞ。
「ああ、フィーロたーん!」
この世界ではサクラちゃんであるフィーロたんの声は聞こえなくなってしまったのですぞ。