逆手持ち
「確か元康くんの話だとラフタリアちゃんやラーサさん、それとサクラちゃんが槌の七星武器の所持者になったんだったよね」
「ラーサを所持者候補として勧誘する目的で尚文が近づいてサディナを連れてきたんだったな」
「懐かしいねー結果的に良かったでしょ。あの時はラーサさんがツメの勇者候補だったけど」
「別のループでは槌の所持者になるんだったな」
「むしろラーサさんのお爺さんの方が所持者向きだと思うけどね。確かそのループのラーサさんってお爺さんにかなりしごかれたって話なんでしょ?」
お義父さんが俺に聞いてきたので頷きますぞ。
「ですな」
「試してみるか?」
転生者共が代わる代わる湧いた所為で七星武器も反応しない状態になってしまっていますからな。このループでは。
ライバルがツメの勇者にならないのだけが救いですぞ。
ここでふと思いますが……ライバルは一度勇者になった後はあっさりとツメの七星武器を説得して手に入れているのですぞ。
どうやって説得しているのか実に不思議ですぞ。
「帰ったら試してみるのは良いかもね。元康くん達も保証してるし……」
「ただ、もはや世界の危機でも何でも無い状況になってますし、新たな勇者は求められて居ないとも言えますよ?」
「そうなんだよねー……勇者は元康くんと俺達だけでどうにかなっちゃったもんね」
ですな。この世界はかなり上手く行った世界なのですぞ。
クズを仕留めた所為で三勇教、亡霊赤豚に支配されメルロマルクで多大な被害が出たという点以外はですな。
結果、俺が最初の世界で死んだ時間にループが発生してしまったのでしたぞ。
その続きであるから基本世界は平和になったのですな。
「ちょっと気になったのですが、仮に七星武器の勇者が僕たちと同じ状況になった際はどうなるのでしょうね?」
「開拓動物化してしまう状況が勇者だからという仮定の話だな。その想定で考えると槌の勇者はペックルになるな……」
「ラフタリアちゃんやラーサさん、サクラちゃんはペックルになる感じ?」
「仲間が増えますね尚文さん」
「ラフタリアちゃんはともかくラーサさんやサクラちゃんは別の姿を持ってる中でペックルになる訳?」
別の姿への変身ですな。
ここでお姉さんがラフ種姿で槌を持っている所が思い出されますな。
これがペックル姿になるのですかな? より一層混乱しそうですな。
最初の世界のお義父さんやフレオンちゃんと再会した世界のお義父さんはどんな反応をするでしょうかな?
ペックル姿になったお姉さん……なんとなくお義父さんはお姉さんを抱えて撫でてそうなイメージですぞ。
その中でお義父さんもペックルになったらどうなるでしょうか?
撫でるのかよく分かりませんな。混乱はするでしょうな。
「一種の状態異常と見るべきでしょう。ちょっと興味ありますね」
「サクラがペックルになっても違和感は余り無いと思うがな。精々サイズくらいなもんだろ」
「なんですかな? サクラちゃんに文句でもあるのですかな?」
錬がサクラちゃんのペックル化に関してケチを付けてますぞ。
フィロリアル様とペックルは違うのですぞ。
「まあ鳥類って所と飛べない所とか共通点は多いからねー」
そういえばフィーロたんがカルミラ島に来るとペックルカラーだったことがありますな。
確か着ぐるみを着用すると一時的にそう言った色合いになるのでしたな。
フィロリアル様のお姿でしたがペックルでもあったのですぞ。
「サクラさんなら可愛げで済んで困る事はあまりないのは間違い無いですね。むしろ事の解決が先延ばしになったりしたかも知れませんね」
「おっとりしたサクラちゃんだからね。特に困って無いしー……って言いそうだ」
ペックルはお義父さんなので……より親子感がありますな。つまりフィーロたんもペックルですぞ。
「俺もペックルになりたいですぞ」
「いきなり元康くんが妙な事を言い始めた!?」
「お前はウサウニーだろ」
「示し合わせたみたいにそれぞれ違いますから武器毎なのか分かりかねますけどね」
「まー……最悪、この状態異常が感染能力とか無かったのは良かったんじゃない?」
「尚文さんもシャレに出来ない話をしますね。さしずめ感染能力があったら一番に感染者を増やすのは僕でしょうかね。一人だけリスーカなんてごめんですと増やす形で」
「卑屈になりすぎじゃ無い? さすがに樹もそこまでじゃないでしょ」
「全人類全生物が開拓動物化か……ある意味平和になりそうだな」
右も左も開拓動物ですぞ。
フィーロたんやフィロリアル様、俺の知るこの世界の全ての者たちが人では無くなる世界ですな。
「いやいや……」
「このダンジョンをクリアしたらそんな魔法が世界に掛かったりしてな」
錬が冗談とばかりに呟きましたぞ。
樹が何か言おうとしていましたが自らの口を押さえてお義父さんへ視線を向けますぞ。命中の暴発を忌避しているのでしょうな。
「僕は考えを放棄しましょう。下手に何か考えたら実現しそうで嫌なので」
「錬、ちょっとシャレにならないからやめてくれない? 解決の為に乗り出したのに逆に世界を混乱に陥れるかも知れないとかさ」
「だが、そう言った可能性が無いと言い切れるのか? 尚文以外はゲーム知識に騙されていた俺達だぞ?」
「ミスリードを誘うゲームとか無いとは言えないから一概に言えないけど、違う事を祈って進むしかないでしょ。元に戻れないと困るんだし」
そうですな。俺達は元の姿に戻るためにカルミラ島へ調査に来てこのダンジョンに入ったのですぞ。
「まあ……ところで思ったのだが、ラフえもん達の持っている未来の道具に俺達を元に戻す……過去の姿に戻す道具とか無いのか?」
「まー……アイデア元的にはありそうではあるんだけどね。聞いた話じゃ無いんでしょ? 樹」
お義父さんが何やら布を広げるようなジェスチャーをしますぞ。
「そのようでしたね。ラフえもんさんは抜けている所があるのでフィロ子さんやラフミさんにも聞きましたし」
錬が腕を組んで眉を寄せつつ考察を広げているようですぞ。
「未来で何が起こるかなんとなくアイツらは知っているようだった。何か隠しているのは間違い無いだろ」
「戻る方法を知っているけど敢えて黙っていたですか……世界は開拓動物になるENDですね」
「最悪の未来と言えるかも知れない……」
「考えすぎだって、ミスリードを誘うキャラクターとか居ないから、たぶん大丈夫でしょ」
「どうなのでしょうね。何にしても僕たちは進んで行くしかないと言うことなんでしょうね」
という懸念を胸に俺達は更に進んで行きましたぞ。
「エアストバッシュⅩ!」
錬が出てきた魔物になぜか剣を逆手でもって振り上げるようにスキルを放ちましたぞ。
スキルに関してですがある程度は自由に体の動きで放てますからな。
「錬、道中の魔物との戦闘飽きてきたの? 遊んでない?」
「ああ、遊んでる」
「堂々と言いましたね。それも中二ですか? 独自剣術とか」
「俺の知っている漫画でそう言った技があったなー。過去の名作バトル漫画だったんだけどさ」
お義父さんが思い出に浸るように答えますぞ。
そのようなバトルをする漫画があるのですな。
「モノマネですかね?」
「あるのか?」
「錬さんは知らないのですか? となるとネット内の誰かがやっていたとかでしょうか」
「短剣とかの動きを長剣でやるスタイルがあるんだ。取り回しに癖があるがな、バトルマニアはストラッシュと言っていたが……よく分からん」
「元々はストレート……まっすぐにスラッシュ、切り裂くを合せた造語だとか言う話を聞いた事があるよ。他にストライクとスラッシュという説も聞いたな。錬の世界にもあるんだね」
「ほう……」
「コンボスキルとかあるでしょ? ちょっと試しに使ってみるのはどうかな?」
そういえばお義父さんがクズから杖を借りた際にコンボスキルを使ったという話がありましたな。
フロートシールドに該当するスキルで攻撃を無数に反射させて檻のようにしたとかですな。
ブラストプリズンというスキルだったとか、スキルは組み合わせ次第で別のスキルになったりしますぞ。