地底湖
「そこなんだよねー。ガエリオンちゃんもよくわからないみたいだし、元康くんほどじゃないけどループ時に記憶の抜けがあるらしいからその辺りに謎があるのかも知れないよ」
「同様の武器が手に入ったら出来る可能性はありますが、ガエリオンさんの話では出来なかったそうですからね」
「どちらにしても俺達では無理って話だな」
「ただ、ループ出来ないにしてもです。正直に言いますと他のループの僕をどうにかしたいという気持ちはありますね。具体的には殺す、フレオンさんで洗脳する以外の方向でですが」
「だな、できる限り早い段階で今の俺達みたいに真実を教えて目を覚まさせて欲しいもんだ」
「そうは言っても前の様に召喚直後に飛ぶ訳では無いですからな……」
ループの途中に出る事が多いですぞ。
「錬さん、元康さんに頼むだけではなく僕たちで何か研究するというのは悪い手では無いと思いますよ?」
「確かにそうだが……」
「俺としてはお義父さんを助けつつフィーロたんと出逢いたいですなー」
思えば優しいお義父さんとフィーロたんを両立出来た事は無いのですぞ。
フィーロたんがいらっしゃる場合はお義父さんは心に傷を負ってしまっていますぞ。
「今の尚文とフィーロの両立か」
「その辺りの条件はガエリオンちゃんから聞いてるからかなりわかりやすいと思うけどね」
なんと!? お義父さんはフィーロたんとお義父さんを助ける事の両立が出来る方法が分かるのですかな?
「教えて欲しいですぞ」
「色々とそこは考察するのが大変だし情報整理も必要だからね。今回の事件が終わってからにしようよ。じゃないと戦いに集中できず思わぬ所で大事な物を見過ごし兼ねないよ」
「確かにそうですね。情報整理が必要な事でしょうし、僕たちも今後の研究をするためにまずは元に戻ることが先決ですよ」
「一生この姿は勘弁して欲しいからな」
と、話をして俺達はどんどん進んで行きますぞ。
ちなみに道中には宝箱なども見つかる事が沢山ありますぞ。
罠とかは特に無いようであっさりと開きますな。
「こう……見つけた宝をポンポン開けてるけど罠とか無いのは安心なのかなー」
「その辺りの鑑定技能は武器にあるんですよね。罠や呪いを見抜ける形で」
「便利と言えば便利だね。罠の解除って俺達の中だと樹がそれっぽいよね」
「王道のRPGだと弓……レンジャーとかシーフ枠が装備する武器の勇者が僕ですからね。手先の器用さとかからありそうですね」
「実際は武器頼りで勇者全員罠は分かるって感じだけどね」
「対応する武器や技能が高くないと行けないがな」
「それも本来は専門家には劣るからねー……鍵開けとかトラップ解除ってラーサさんが上手だし」
パンダはこの辺りが得意でしたな。
お姉さんのお姉さんも罠の判断は得意なご様子でしたぞ。
曰く超音波で分かるそうですな。シャチ獣人だからでしょうな。
「多芸ですよね。尚文さんの嫁二人は」
「そうだな」
「まあね。ラーサさんって本人は料理に興味無いとか言ってたけどベビーフードを俺が居ない時に作ってくれるし、部下の人たち曰く、大きな鍋を簡単に使って炒め物とかやってたりするらしいよ」
お義父さんの前だと全然やらないですが、そんな事もパンダは出来るのですな。
錬を相手に料理勝負をした際、お義父さんが大型の中華鍋を使ってチャーハンを作っていたのを思い出しました。
零さず大きく動かすあの動きは見物でしたな。
「サディナさんも自炊はしてたみたいで一通り出来るし器用と言えば器用だね。この前、料理を作ってくれたよ」
「酒のつまみとかだろどうせ」
「あはは……物の鑑定とか調査はリーシアさんがかなり優れてると思うけどな。かなり博識だよね」
「そうですね。僕たちは武器の鑑定頼りの所がありますけどリーシアさんは一目で分かる所がありますね」
「武器屋の親父もその辺りは得意だけど武器限定だしな」
ちなみに錬の話だと、錬が暗黒料理界で得た品々の隠し場所に武器屋の親父の倉庫を使って居たとかですぞ。
妙な物を持ち込んでるな……っと包丁などは見られて研ぎをして貰って居たとかですな。
「リーシアさんの学校での成績……恐ろしく良いんですよね。過去の試験内容を見ても」
「そうだとは思うけど、タクトとあの王女も所属していた学校なんだよね」
「ええ、タクトは色々とやっていたようで成績自体は歴代でも良かった様ですけど、あの王女に関しては単純な成績は良いとは言えませんでしたね」
「だろうな。言っては何だが元康とガエリオンの話じゃろくでもない奴だし、逆に成績が良かった方が驚きだろ」
「メルティちゃんはかなり頭良いのにね」
赤豚と婚約者の知能指数は比べるまでも無いですな。
婚約者の方が何千倍も良いでしょう。
悪巧みの成績だけは赤豚は高そうですがな。
「分かってる事は、あの王女に厳しくした講師や戦闘教官なんかも居たみたいですがまともに伸びた様子が無かったらしいですね」
「むしろ、普段から何をやっていたんだあの女は……」
「陰謀とか策謀とか頭が良くないと出来ないはずなんだけどねー。悪巧みだけは得意で知恵が回ったのかもね」
豚とはそういう物ですぞ。
挙げ句、男女平等とか謳いながら自分が優遇されている時は文句を言わない生き物ですからな。
男は利用する金づるだとでも思って居たのは間違い無いですな。
元の世界に居た頃の豚共も自らの欲望優先で、俺が気にくわない事をするとブチブチ文句は言って暴れるくせに、転校とか上京する際には利用価値がなくなったと判断したのか追いかけて来る事はありませんでしたぞ。
エクレアを見るのですぞ。優遇されると馬鹿にしていると受け取って怒るのが目に見えてますからな。
「エクレア辺りはとても真面目なので豚の飼育係には良かったかも知れないですぞ」
養豚場の飼育員にエクレアは向いているような気がしますぞ。
「やめとけ。仮に女王が全面的に許可したとしてエクレールの胃に穴が開くのが容易く想像出来る」
錬がここで俺の案を注意しますぞ。
「確かに、あの王女相手には土台無理な話でしょう。国の情勢とか自らの立場とか色々と加味したら尚文さんにこそ媚びを売って既成事実を作れば外交的にも権力的にも一石二鳥なのにあんな短絡的な手しか出来ない方なんですし」
「やー……個人的には色々とやめて欲しい話だけどね。今でもあの亡霊姿を思い出す時があるし」
この世界ではメルロマルクの多大な被害は赤豚がしでかしましたからな。
よくもまあ、ここまで復興したと言えますぞ。
「三勇教はそこまで脅威なのか、俺達では判断出来ないな」
「初手で教会を元康さんが焼き捨てましたし、国を支配しましたけど結局あの王女が暗躍していたんですよね」
「厄介そうなのは事実なんだけどねー」
なんて話をしながら俺達は50階層まで来ました。
「さてさて、次はなんでしょうね」
と……出た所は薄暗い洞窟内の湖みたいな場所ですな。
待ち構えていたとばかりにここでカルマー系のボスが取り巻き共々一式揃ってお出迎えしてました。
もちろん俺達の強さの前に手も足も出ずに速攻で沈めましたな。
「ここに来て島のボスフルセットだったね。そろそろ終わりかな?」
「今更と言った組み合わせでしたね。一気に出て来る事で厄介であるとしたかったのでしょうかね」
「今の俺達の前では数で来られても苦戦はしないな」
範囲攻撃で一網打尽ですぞ。
「楽勝だったけどどうにも不自然な感じだね。で……ここは地底湖……かな?」
「……みたいだな」
錬が渋い顔でお義父さんの言葉に同意しつつ、パッと見える次の階層への道の方に顔を向けましたぞ。
「さっさと先に行くか」
「いやいや、露骨に怪しい湖の調査が先じゃない?」
「アレはカルマーペングーの戦闘フィールドで水に入られる前に俺達が倒した。以上」
錬が頑なに湖への調査を嫌がって居ますぞ。
なんとなくですが違うような気がするのは俺や樹も感じている形ですぞ。
「ですね。尚文さん。錬さんは無視して調べましょう。引っかけ臭い配置ですし」
「まあ……俺になるよねー」
「何か出てきたら手はず通りに行きましょう」
という事でお義父さんが湖の中へと潜って行きました。




