ブラッディウサウニー
バルーンは程よい雑魚でしたがマスコットとしては扱われませんですぞ。
フィロリアル様は名前こそ違えど存在はしましたが、あくまで乗り物や普通の魔物扱いでした。
ヒィ……ゲーム時代の俺がカモと称して豚共と一緒に狩りに行った際に倒した記憶が蘇りましたぞ。
あ、あれはゲーム。
そう、ゲームであって実際のフィロリアル様ではありませんぞ。
「そういえばウサピルのボスとかいますよね。このまま進んだらゲームでは戦ったあのボスと戦う事になりますかね」
「ウサピルのボスね。どんなのかな? あれかな? キングウサピルとか?」
「違いますよロ・スピルという名前でしたよ。あんまり強いボスじゃないのですけどね」
「ヘー」
「外見は大きなウサピルですけど取り巻きにウサピルを引き連れていますね。強化素材を落とすのでお得な魔物だったのは間違いないです」
「ドロップ品はマジッククローバーという道具でしたな」
ゲーム知識を話すのは楽しい思い出ですぞ。
ああ、最初の世界のあの時、お義父さんにもっと色々と話しておきたかったと今にして思う小話なのですな。
「ウサピルねーそういえばバルーンもだけど魔物紋で魔物を育てることも出来るんだよね。ウサピルとかも育てたらフィロリアル達みたいに変わった成長とかするのかな?」
「どんな成長をしますかね。ウサギの魔物……」
「王道で思う強力なウサギの魔物って、ゲームだとあれだよね。即死攻撃を放ってくる奴」
「聞いた事があるな。よく使われる奴だ」
「あれは元々とあるコメディ映画が元ネタらしいんだけど、錬や樹の世界でもあるんだね。むしろ剣の勇者である錬とは因縁があるかもね?」
「なんでだ?」
「そりゃあ主人公が有名な聖剣を抜いた人物って設定のコメディ映画だもん。むしろそっちの剣の方は有名所だよ。エクスカリバーでわかるかな?」
「コメディってのが気になる話だな」
「まー……その後でゲームによく取り入られて凶悪なウサギが採用されるようになったわけだけどね。ちなみにヴォーパルは鏡の国でウサギとは関係なかったりする。まあウサギが出てくる作品だけどね。造語だし」
と、お義父さんが色々と細かく教えてくださいますぞ。
「ウサピルを育てたらそんな魔物に育つのかな?」
「ここに致命傷を与えるウサギが居ますよね」
と、樹が俺を見てきますぞ。
「HAHAHA! この元康、出てくる敵に致命傷を与えるなど容易いですぞ」
「まー……そうだね。元康くんならどんな相手でも致命傷を平気で与えそう」
「ブラッディウサウニーってな、お前は赤が似合うのは否定しないぞ」
謎の錬の赤推しですぞ。確かに赤い服装は俺も好きですがな。
ちなみに緑色の服装も好きですぞ。最初の波の頃にも効率を意識して使っていましたぞ。
場合によって着替えるのは当然ですな。
そういえば……お義父さんがウサギの亜人を連れていたこともありましたな。
俺が助けることが出来ずに樹に冤罪の片棒を被せたループでの記憶ですぞ。
持っている武器からして、攻撃スタイルは致命傷狙いの奴隷だったような覚えはありますぞ。
「ウサピルの話で戻りますが、最初の世界のお義父さんが世話をしていたバルーンやウサピルはー……お義父さんが改造してラフ種になりました」
俺の言葉にササっと錬と樹がお義父さんから距離を取りましたぞ。
「ちょっと元康くん!」
「ラフ種……ラフタリアさんを模したラフちゃんでしたっけ、あのような魔物に作り替えられてしまったと」
「酷い話だな」
「いえ、飼っていた魔物たちが志願して姿を変えていたので割と幸せそうでしたぞ?」
「それもどうなんだろ?」
ああ、あの時の元気なお義父さんもまた、お義父さんの可能性なのですぞ。
「単純に育てていたら樹の知る魔物に育ったのかなー?」
「俺の記憶で、樹の言った魔物だと思うくらいの姿にはなっていましたぞ?」
「やっぱり勇者補正でメキメキ成長はするんだなー」
「尚文さん。どうしてその辺りを気にするのですか?」
「え? そりゃあ子供たちが何時かペットを欲しがるかもしれないじゃない? ウサピルとか可愛い系だし、手ごろかな? と思って」
「フィロリアル達が周囲にいますし、さすがに欲しがらないのでは? ガエリオンさんたちも居ますよ?」
お義父さんの子育ての想定だったのですな。
「既に十分いる扱いと……まあ、子供たちが元気すぎてフィロリアル達が振り回されていたりもするか」
樹も何時かこういった悩みを持つようになるかもね。とお義父さんが呟きましたぞ。
「僕の子供はどうやらフィロリアルを愛でる方向らしいですからね……どう引き離して育てるかが課題でしょうか」
「どういう意味ですかな?」
「一番気を付けないといけないのは元康さんをイケメンの渋いおじさんと言って熱を上げられる可能性でしょう」
「あー……元康くんはねー歳を取ると渋いイケメンにはなりそう。って錬もだけどさ」
「いや、ここは元康だけにしておいてくれ」
錬が何故かきっぱりと俺にだけになるように提案してきましたぞ。
「そもそも尚文や樹はどうなんだ? 将来の自分の姿を想像してみろ」
「そういわれましても……」
「樹って歳を取ってもあんまり見た目変わらなそうだよね。40過ぎても少年っぽい見た目な感じで」
「ちょっと自覚してますんでやめてくれません? それを言ったら尚文さんはどうなんですか?」
「俺はー……割と普通に中年になるんじゃない? 元康くんは俺たちの将来の姿とか覚えてない?」
「ループする影響なのかぼんやりとする所がありますからなー……お義父さんたちの未来の姿は少々曖昧ですぞ」
少なくとも十年くらいは覚えているような気がしますがそれでも曖昧な所が出てきますぞ。
「元康、この中でハゲになる奴はいるのか?」
「錬、気にする所ってそこ?」
「一番剥げやすそうなイメージがあるのは錬さんですよね。命中しますかね?」
「うるさい。そういう冗談はやめろ。俺は禿げない」
「二人とも、元康くんがこのループに戻って来てしばらくやっていた自分たちの格好を忘れてない?」
謎の瓶底眼鏡とハゲカツラ装備でしたな。
「では落としどころで錬さんはハゲずにクロタロウさんはハゲそうという事にしましょう」
「そうだな」
「なんでそこで纏まるのですかな!? 樹の命中を無理やり当てようとするなですぞ!」
ブラックサンダーに失礼ですぞ!
「なんでハゲの話に……って将来の子供たちへの教育話だったね」
「その点ですが、ウサピルって結構気性荒いですよね。子供のペットには向いてないのでは?」
「品種によるんじゃない? 最初の俺が飼っていたウサピルってどうなの?」
「躾が出来ていたのか大人しかったようですぞ。ただ、ラフ種になる前はフィロリアル様とよく戦っておりました」
「戦う? なんで?」
「獲物とみられていたんでしょうね。結構、サバイバルだったのでは? イミアさんとかルーモ種を時々獲物とみている時がありますし」
あー……と、お義父さんがコウを思い出しているのが簡単にわかりますぞ。
「結局、無難にフィロリアル達とラフちゃん辺りが適任かなーガエリオンちゃんも大人しくなったけどペットとは違うしねー」
「あれでも魔物の王を名乗ってますからね」
「本人はぶりっ子で相手をしてくれそうだけどね。成熟したというか面倒見よくなったし」
「魔王は配下に気を配るのも務めって事でしょうかね」
「魔王かー……考えてみればガエリオンちゃんは魔王って事になるんだよね、一応」
「落ち着いてますけど普段の態度からはまるで感じませんけどね」
「奴が魔王など鼻で笑う話ですぞ」
なのーん! とお義父さんを狙う敵であって脅威にすべき相手ではないですぞ。