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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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金槌と浮き輪


「というかリスーカって頬袋がしっかりあるんだな」

「だね。木の実とか何個も口に入れるのかな? 何処かでそんなギミックあったりして」

「だから嫌な話をしないでください」

「安心しろですぞ樹!」


 俺は樹に親指を立ててやりますぞ。


「もしもの話で怪しくなるのはお前の命中ですぞ」

「……」

「これは一本取られちゃったね樹」

「だな。あんまり失言はしないほうが良いのは間違い無い」

「ああもう。余計な事を言わなきゃ満足出来ない方々なんですかあなたたちは」


 樹には言われたくないですな。


「まあ、俺が誰かを連れて水の中で戦って貰えば機動性は良いんじゃない? 元康くんは銛系の槍、樹は水中銃とかで攻撃すれば効果はあるでしょ」

「問題は潜って居られる時間だと思いますよ。幾ら尚文さんが水中に連れてってくださると言っても……水面がない場所での戦闘だったら大変です。呼吸出来れば良いのですけど」


 っと言う所で俺達は樹の頬袋に視線が集中しましたな。


「僕の頬袋は酸素ボンベじゃありません! 何より酸素ボンベとしたとしてあなた達、どうやって僕から酸素を受け取る気ですか!」


 それは文字通り口移しになるのではないですかな?

 まあ樹と口づけなど勘弁願いたいですがな。


「錬が溺れそうになった際には樹に酸素を貰うのが良さそうですな」


 お義父さんは溺れる事はありませんぞ。なので気をつけるだけに過ぎませんな。


「絶対に水中には入らないからな!」

「僕だって同意見です! 必要になってから考えますよ!」

「あはは……出来れば水中ステージがない事を祈るばかりだね。武器で水中に潜れるのとかあれば行けそうだけどね。こう……泡のバリアとか展開すれば泳ぐとか関係なく俺が連れて行けるでしょ」

「あったら良いですけど……僕の状態から考えて難しそうですよね」


 樹の場合はリスーカとしての性質で頬袋が膨らむようですからな。


「俺がボスを誘導させてみんなに攻撃して貰うとかになるって所だね」

「その辺りが無難なギミックになりますか、錬さん。尚文さんが溺れないように引き上げてくれますから念のために水魔法でも何でも良いですから呼吸出来る細工をして潜って見てください」

「嫌だ」

「どうしてそこまでして泳げないんですかね……筋金入りの金槌とはこのことですよ」


 確かに、錬の金槌は筋金入りですな。

 ただー……。


「最初の世界の平和になった後の錬は泳げた様な気がしますぞ?」


 背格好が随分と伸びていましたがな。

 ちなみにイヌルトになる前の錬も徐々に背が伸び始めて居ましたぞ。


「金槌の克服までして居たのかな?」

「いろいろな意味で背中で語る錬さんが一番成長して居るという事ですね」

「元康、余計な事を……」

「そもそも錬はなんで泳げない訳? 何かトラウマでもあるの?」


 俺達の質問に錬は顔を逸らして黙り込みますぞ。


「樹、ここでお前が余計な命中を発揮して打ち抜けですぞ」

「僕の命中を期待しないでくださいよ。ありそうなのは幼なじみ辺りに泳ぎとか付き合わされて溺死しかけたとかでしょうか」


 あー……ありそう。と、お義父さんが頷きますぞ。


「……」


 錬は沈黙を貫こうと躍起になっていますな。図星なのか判断に悩みますぞ。


「そういえばネット内に入る事をダイブって言ったりするよね」

「なるほど、ある意味ネット内にアバター姿で居る事も泳いで居るとも判断出来ますよね。余りにもネット内でのやり方に慣れすぎた所為で水の中に入った際に同じ感じで呼吸しようとして溺れたのが原因だったりします?」

「……」


 錬が拳を小さく握りましたぞ。

 なんとなく図星なのが分かりますぞ。


「良いから行くぞ!」

「つまり潜って実験ですね」

「そういう意味じゃない!」

「まあ、錬が泳げないのはなんとなく一つの理由じゃ無く複数の理由が重なってそうなのはわかったね。樹の命中が良い感じに打ち抜いてそうだ」

「違うと言ってるだろ!」

「呼吸が出来れば溺れないだろうからさ、魔法を使って試してみよう。ね?」

「確かに錬は呼吸が出来れば溺れるまでは平気そうでしたぞ」


 最初の世界の錬以外も水魔法や風の魔法などで水中で息が出来れば混乱はしなくなりましたぞ。


「僕たちには便利な魔法がありますからね。水魔法ならどうにかなるかも知れないですよ」


 という訳で錬は魔法で顔の周囲に泡の膜を作りましたぞ。


「ほら、しっかり俺の背に乗って」

「尚文! 絶対離すなよ!」

「わかってるって」


 ギュッと錬がお義父さんの背中に乗り、肩を掴んでおりますぞ。


「それじゃあ少し潜るからねー」


 と、お義父さんは錬をそのまま水中へと連れて行きましたぞ。

 水面から確認すると水中に入った錬はお義父さんの背中から離れないとばかりに強く掴んだまま動く気配はありませんぞ。

 ただ、お義父さんの背中に捕まっているので機動性は十分ですな。

 水中に馴れたのか錬が実験にお義父さんの背から降りて水中を歩こうとしておりましたが、俺と同じく動きがゆったりですぞ。

 しかもボコボコと集中が途切れたのか顔の泡が霧散し始めましたな。

 お義父さんは急いで錬を水面まで連れてきましたな。


「錬だと魔法の力で呼吸は出来る様に出来るみたいだけど水中での動きの制限が元康くんと同じく掛かるね」

「水面からですが錬さんの集中が途切れた様が見えましたよ。尚文さんに引っ付いてないと無理ですか」

「うるさい」

「元康くんは水魔法で呼吸出来る様に出来ないから、水中で戦わないと行けない場合は錬にお願いする事になるかな」

「水面から元康が呼吸出来る様に泡の魔法を使うから良いだろ」

「錬が確認出来る範囲なら良いんだけど……」

「そもそも機動性で考えたら尚文の背に乗せれば良いのは樹だろ。顔に泡の魔法を使えば行けるんじゃないか?」


 錬の提案に樹が眉を寄せました。


「僕も巻き込む気ですね。その理屈なら遠距離スキルやそれこそ近接じゃないのですから浮遊剣の操作に集中すれば良いだけですよ錬さん」


 樹もしっかり言い返しますな。


「まあ……複数のギミック操作が求められたりするのが一番怖いよね。俺が行った先の場所で壁登りが必要とか」

「アクションゲームでありそうなギミックですが……はあ、わかりました。今度は僕の番ですね。錬さん」

「フ……任せろ」


 錬が不敵な笑みを浮かべて答えますぞ。

 先ほどの溺れそうになって混乱したのを俺達は忘れていませんぞ。


「水中に入った所で泡を消して樹の頬袋が膨れて浮かんで来る姿が想像出来るね」

「錬さん。僕の命綱を掴んだつもりでしょうがそうなったら水から出たら、突き落としますよ!」

「チッ!」


 図星だったようですぞ。弄られた仕返しですかな?

 今度は樹の番とばかりに錬の魔法で顔に泡で包んで貰った樹がお義父さんと一緒に潜ろうとしましたぞ。

 ですが樹の体が胸辺りまで水が浸かった所で頬袋が膨らみ始めましたな。


「半分以上体が水に沈むと頬袋が膨らむみたいだね」

「そ、そうですね。く……潜りづらいですし銃を構えづらいです」

「……いたずらをするまでも無かったな」

「うるさいですよ! 組み合わせ的に錬さん、あなたが戦闘が必要なら尚文さんと行くのが無難な組み合わせとなったんですからね!」

「く……そんな事態がない事を祈るだけだ!」


 ちょっとお義父さんと一緒の組み合わせというのが羨ましいですぞ。


「泡の効果切れまで俺でも良いはずですぞ」

「元康が珍しく俺の事を思って言ったのか?」

「いや、アレは尚文さんと一緒に戦いたいという考えですね。最適解は錬さんです」


 樹、そんな何度も言うなですぞ。


「樹の頬袋を水中で押したら引っ込むのではないですかな?」

「さっき実験にやったら空気は樹の体の中の方に入っちゃって外に出なかったんだよね。しっかり樹が吐き出したら今度は思いっきり水中ですっちゃってたし」

「俺は金槌だが樹は浮き輪って事だ」

「誰が上手いこと言えと言いましたか!」


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