更に活性化
「ですね。手ごたえは確かにあると思いますよ。どうにかしてなぜ僕たちがこんな姿に成ってしまったのかの原因を特定して元の姿に戻りませんと」
まずカルミラ島の波止場に来た直後、ビリっと何か地面に静電気のような物が走って島の輪郭が赤く強まったように見えましたからな。
「早く人間にもどりたーい。だね」
「尚文さんはネタに走る余裕があるんですね」
「マイペースを維持するのは大事ですぞ」
「限度を知れ!」
「ここでも騒動を引き起こしたと怒られかねませんが先に女王経由で国に話を付けてきましたからね。準備をして頂くしかないでしょう」
「ああ……一刻も早くこんな姿から元に戻りたいもんだ。こんな姿で戦える奴なんて……」
錬が若干遠い目をしていますぞ。
「ガエリオンさんから聞く他のループの錬さんは出来てそうですけどね。ドラゴンは確定としてクマも疑惑にありますし」
「そう考えると錬って結構ループや出来事で色々と姿が変わる縁を持ってるんだね」
「うるさい。元康の女装やバイクよりマシだ」
「なんですかな? 俺のどこに問題がありますかな?」
錬が俺に喧嘩を売ってきましたぞ。
「やむなく元康さんのドライブモードに乗ってしまいましたね。そういえば」
「あ、乗ったんだ」
「ええ、ですがウサウニー姿だとそこまで違和感なく乗れたのは不思議なもんですね」
「やっぱり人がバイク姿に成ってるのが原因なんじゃない? ウサウニー姿だとファンシーな面が強調されるし」
「お義父さん! 今なら俺に乗りますかな?」
どうやら今のお姿ならお義父さんはドライブモードに乗ってくださるような話題ですぞ。
「そんな無理して乗りたいって訳じゃないから良いよ。サクラちゃんやガエリオンちゃんがいるんだし」
く……サクラちゃんは良いのですがライバルの背に乗ることが当然という風潮が悔しいですぞ。
「そもそも今の僕たちの場合は誰にだって乗れる状況ですよ。肩車なり背負うなりで」
「まあねー……出発前に村の子たちがみんな俺たちを背負って遊んでたし」
お姉さんのお姉さんやパンダは保護欲が暴走しかねないので欠席しましたが、村の者たちやフィロリアル様たちと交代でライドして遊びましたぞ。
「愛玩動物になるって大変ですね……ラフちゃんはこれをずっとやっている訳ですがね」
「可愛がられるってのも大変だね」
「……そうだな」
錬がクロタロウの背に乗りながら震えておりましたぞ。
そんな話をしながら俺達はカルミラ島のホテルに到着しますぞ。
案内係をする伯爵がお出迎えですな。
「……勇者様方とは言え、いなくなったと伝えられる開拓生物の姿をこの目にすることがあるとは……」
などと言いながら伯爵は言葉を選ぶように俺たちを観察しておりますぞ。
「お話は存じております。四聖教会で保管されていた品が今回の出来事の発端となったとの話だそうですが……」
「おそらく各地の開拓地のどこかにあった代物だったのではないかって話を僕たちの仲間や四聖教会の者たちは分析しています」
一応出発前に四聖教会の関係者たちにも話は通しましたぞ。
触媒の出所を調べ上げた所、記述は古いそうですが教会の中に記されていた碑文関連の所に寄贈されていたとかなんとかですな。
さらに遡ったそうですな。過去の四聖勇者が持ち帰った品という所までは突き止めましたぞ。
「現在、調査中でございますが……」
という所で俺たちが来た方角からぞろぞろと職員たちがやってきて伯爵に何やら報告をしていますな。
「おほん……勇者様方が来訪した直後から各島の活発化が観測され始めたとの話が出てきております」
「うわ……露骨に事件が起こってるなー」
プラド砂漠に関しては既に処理済みで各地の経験値関連の再活性は行われておりますが、更に活発化し始めているという事なのですかな?
「もうこの世界ってLvを上げるのってかなり楽になってるって話だけど、活発化となるとどうなんだろ?」
「勇者の仲間かどうかでもLvの上りが違うらしいですからね。まだまだ流入が期待できるんじゃない?」
「かと言ってなー……」
「文字通り経験値稼ぎイベント染みて来たな……」
という所でラフえもんがハッと我に返るようにポンと手を叩きましたぞ。
「あ……ぼく、これが後の歴史にどう繋がるのかわかっちゃった。だからフィロ子やラフミが関わらないでいるんだ」
「なんですかラフえもんさん。何かわかっているようですけど」
樹が眉を寄せながらラフえもんへと尋ねますぞ。
「ええっと……その……答えを話しちゃうと未来で色々と問題が起こっちゃう可能性が高いからさ、いつきくん達が思うとおりに行動してほしいな」
「是非とも変えたいんですけど、ここで投げだしたら僕たちは開拓生物姿で一生を終えてしまいそうですよね」
「冗談でもやめろよ!」
「そうですぞ!」
「元康くんの場合は次のループで元通りって感じなんじゃない?」
「継続の可能性もありますよ。そうなったら笑えますけどね」
樹の言い分は不服ですが想像してみますぞ。
例えば召喚直後に飛んだ状況ですな。
錬や樹、お義父さんが状況がつかめずに周囲をキョロキョロと見渡している所で、俺がウサウニー姿ですぞ。
「う……ウサギ?」
「俺の名前は北村元康ですぞ!」
「あ、そう……しゃべるウサギって、異世界に来たって感じだな!」
と、テンションが上がるお義父さんの姿が想像できますぞ。
ですが城の連中は俺を獣人として認識し、しかも槍の勇者という訳で目を付けるでしょうな……それはそれで問題は無いですが、なぜですかな? お義父さんに撫でられる姿が想像できますぞ。
異世界って認識の為に俺に執拗に声を掛けるお義父さんが想像できますぞ。
これはこれで悪くない状況ではありますな。
そうしてある日の朝、俺は魔法の効果が切れてお義父さんの前で本当の姿を見せるのですぞ。
「え、えーっと、元康くん? なの?」
「そうですぞー!」
なぜかそこから距離を取られるような光景が映し出されますが、きっと間違いですぞ!
「なんか元康さんが考え事をしてますね」
「うーん……変な事を考えてる気がする。また妙な事を言わなきゃ良いけど」
「お義父さん! 朝起きたらウサギだと思っていた俺が人だったらお義父さんはどんな反応すると思いますかな?」
「何その女性向け単発ギャグ漫画みたいな展開……全裸の元康くんに振り回される俺が想像できるんだけど、できればやめてね」
「おい。お前ら脱線してるぞ。ラフえもんから色々と吐かせる方がいいのか?」
「ぼ、ぼくから聞いたって答えられるのは、いつきくん達勇者の活躍で世界がよくなるってだけだよ」
「うーん……劇場版に巻き込まれてしまっているんだろうけど、樹がリスーカ姿ってのはどうなんだろう? 完全子供向け童話って感じだよね」
「一体どんなネタですか! なんでもネタに走らないでください!」
お義父さんは色々と詳しいのですな。
「とにかく、俺たちが島に来たことで活発化が発生したって事みたいだけど、樹、何か心当たりってあるの?」
「そうですね。伯爵、島の伝承とかそういった出来事に僕たちのこの状態を解除する話などはありませんか?」
「は、はい! 少々お時間をください」
伯爵は樹の言葉を聞き入れて色々と島の伝説などを洗いざらい調べ始めたのですぞ。
ですが現在の俺達の状況をどうにかする記述は見つからなかったようですぞ。
「最初にカルミラ島に来たのが失敗だったかもしれないな」
「なぜですか?」
「ここは人間至上主義だったメルロマルク近隣の島だ。開拓生物に勇者が姿を変えたなんて記述があったら間違いなく抹消するだろ」
錬の言葉に樹も俺も納得ですぞ。
「確かにそうですね……別の開拓地で調べるのも手ですか」
「元康くんもガエリオンちゃんも今回の出来事には覚えがないらしいし……洗いざらい調べるしかないよね」
「なのーん!」
ここでライバルが飛んできましたぞ。
「魔力の乱れを見つけたなの、もしかしたら何かあるかもしれないなの」