エンドコンテンツ
「元康さんは昔過ぎて出てこないんでしょうね。ちなみに僕の知っている知識では次元回廊という要素でしたよ」
「似たようなもんだな。俺の方だとエンドレスドライブって奴だったぞ。生憎開拓生物になるなんてないが」
「ですが、あの区域近隣で行われるイベントの所為かNPC周りでそれっぽいのがありましたよ」
「背景オブジェにあったな。設定的な意味合いで」
俺もピンと心当たりが出てきましたぞ。
「インフィニティーダイブですぞ!」
「なんか三人ともその触媒が何か分かった感じ?」
「ええ、正確にはゲーム知識なんですけど、ゲーム内のオブジェクトで見た覚えがあるんですよ」
「俺の知るシチュエーションとは少し異なるが、前提クエストも似た感じか?」
「どうなんでしょうね。錬さんの前提クエストって魔物化して記憶を無くしたNPCとか出てきませんでした?」
「居たな……最終的に思い出して事件解決をするんだ」
「その後に行けるコンテンツ……間違いないですね」
俺たちがそれぞれ頷いてからお義父さんに説明しますぞ。
「この触媒はおそらく、とあるダンジョンの入り口に設置されているはずの道具ですね」
「ああ」
「そうなんだ?」
「期間限定イベント外でも何度も見たはずなのに気づかないとか俺達の目は節穴だったな」
錬がため息交じりに言いますぞ。
「しょうがないですよ。このアイテムはあそこでしか見ない代物ですし、キーアイテムと呼ぶのとは異なります。覚えていたら相当なマニアですって」
錬や樹が覚えがあるコンテンツで俺も心当たりというと間違いなくアレでしょうな。
「イベント外でも見るって三人とも、どんな話なの?」
「そうですね……具体的に言えば僕の知識……ディメンションウェーブではクリア後のやり込み要素で非常に時間の掛かるコンテンツでしたよ」
「ブレイブスターオンラインだとエンドコンテンツだったな。まあやり込みで遊ぶには良いって要素だな……友人が多い奴がやっていた」
「つまり錬はあんまりできなかったコンテンツですな!」
「うるさい! 元康、お前はどうなんだよ!」
「豚共と一緒に遊びましたぞ!」
思えば反吐が出る出来事ではありますがイベント内容自体は思い出せますぞ。
この世界に召喚された当初、愚かだった俺は波を終わらせたら赤豚たちを連れてやってみようと思っていたイベントですぞ。
生憎、この世界はゲームとは違うと思い知ったのですっかりやるつもりがなくなったのですがな。
「問題はクリアしても旨味が無さ過ぎて廃れ気味だったけどな」
「ああ、錬さんもですか」
「確かに難易度が高すぎて不評なイベントでしたな」
「とりあえず確認をしましょうか……このコンテンツで合っているかとね。出発の準備をしましょう」
「そうだな。さっさと元の姿に戻らないと話にならん」
「何処へ行くの?」
「まあ尚文も宛てが無かったらここに行ったと思うぞ」
「それは――」
「ユキちゃん。あっちへ行くのですぞ」
「はいですわー」
俺は今、フィロリアル姿のユキちゃんの頭の上に乗っかってカルミラ島の波止場からホテルへ向かっている移動中ですぞ。
「元康様、とても愛らしいですわー!」
「ユキちゃんはサディナさんやラーサさん達みたいに元康くんを独占しないようにね」
お姉さんのお姉さんやパンダたちは村の方で留守番をして頂く事になりましたぞ。
ほかにも何か無いか調べて貰うことになったからですな。
モグラやお姉さんも今回は村でお姉さんたちのお手伝いをすることになりましたな。
「元康様の嫌がる事はしませんわ」
「んー?」
サクラちゃんは婚約者とお義父さんを背に乗せておりますぞ。
「サクラちゃんとガエリオンちゃんは変にならなくて助かったよ」
行き先を決めた所でサクラちゃんと婚約者が村へと帰って来たのですぞ。
その際にサクラちゃんはお義父さんを見ましたが特におかしな様子が無かったのでライバルもお義父さんのお姿をお披露目したのでしたな。
「感じる物が無いわけじゃないなの。保護欲求を刺激するんだと思うなの」
「あのお二人……保護者という概念が形となっているような方々ですからね」
確かにお姉さんのお姉さんやパンダは面倒見が非常に良いですからな。お義父さんと三人でいれば教育において出来ないことは何もないでしょう。
「近い要素だとなおふみがその姿だと人間の時とは違った顔による補正が強まっていると見て良いなの」
「あーもしかして元康くんが人相手だと凄い美形なのと近い感じ? アトラちゃんはあまり影響が無いようだったけど」
「そうなんじゃないなの? ガエリオン、人も魔物も感性が理解できるけど槍の勇者はその姿だと人の時より補正が弱まっているなの」
「そういう意味では尚文さんと元康さんって周囲が受ける感覚が逆って事なんですね。尚文さん、あなたはなんで人なんですか?」
「樹、ちょっとその命中抑えようね。そもそも俺は亜人獣人の勇者なんだから資質的なものがあるんじゃないの?」
「まあ……勇者がポリモーフの魔法を使った際、盾の勇者だと影響が大きいのは理解できなくはないかもしれませんね。何分、属する国の影響もありますし」
お義父さんは盾の勇者ですからな。人間の勇者として亜人獣人に慕われる訳ですから外見だけでも人とは別になればその分、外見の印象が良くなってしまうのかもしれませんぞ。
「ちなみに人である時より顔がよくなったと感じるのは剣の勇者も同じなの」
「俺もか!」
錬は現在、クロタロウの背に乗っておりますぞ。
ラフミはまだパンダ達の注意を引き付けているポジションですな。
そんな錬をクロタロウは渋い顔をして見ております。
ちなみに樹はリースカに抱えられておりますな。
その隣にはラフえもんがおりますぞ。
「錬って元々女顔で美形なのにその姿でさらに増してるってなると俺より顔良い事にならない?」
「かなりいい勝負をしてるけど、方向性の違いで尚文に軍配が上がるって所なの」
「へー……よくわかんないけどわかったよ」
「何にしても錬さん。彼女候補が増えて良かったですね」
「まだ言うか! あの羽毛に飲まれる感覚がどんなもんかわからないからそんな事が言えるんだ」
「その恐怖を知りながらよくクロタロウさんに乗れますね」
「クロにそんな趣味は無い」
錬がズバッと言い切りますぞ。なんだかんだクロタロウを理解しているという事なのですな!
「……リア充にさせるか!」
クロタロウが小さく零しました。
どうやら錬に彼女が出来る事が認められないので手伝っている感じのようですぞ。
「それでメルティちゃん、着いてきちゃってるけど良いの?」
「はい。母上からも仰せつかっていますので」
出発前に女王が会いに来たのでしたな。
俺たちの様子を見て異変と理解しながら目を輝かせていたのが印象的でしたぞ。
「女王様の様子になんていうか危機を感じたけど、問題なく出発出来てよかったね」
「そうですね。外交と復興指示で忙しくて参加できないのを惜しんでいる様子でした」
「その表立っての援助と調査協力を私が命じられました」
女王は伝承好きですからな。
勇者達が各地で伝えられる開拓生物の姿に成ってしまった事に関して並々ならぬ興味を持ってしまったのでしょう。
「しかし……樹や錬、元康くん。本当にカルミラ島で良いの?」
「ええ、オフシーズンにある過疎コンテンツだったので間違いないはずですよ」
「そうだな。他の活性化地でも良いが近場であるカルミラ島が調べるのに丁度いい。なんだかんだ温泉に入りによく来てるし」
「よく行く近所の観光地って感じだからこそって事ね。ただ……何が起こるかわからないってのが怖い所かな」
お義父さんの言葉に俺達はみんな頷きました。




