学園の不思議
「あれは未来の転生者が適当に作った代物で樹への刺客だったらしいですぞ。それを改造して今の状態になったのですな」
「その辺りは話をして聞いていますな。現物を見て学科の者たちも喜んでおりますぞ。分解はさすがにさせて貰えないでしょうから遠目での観察を継続しているようですぞ」
ほかにも二基、未来から来たのでしたな、と情報を仕入れているようですぞ。
さすがはハカセですな。
ちなみにこのハカセ、主治医ともタクトとも別の部署の学科所属だそうですな。
興味のある事にしか打ち込めない性質で、天使となったフィロリアル様を見ることで目覚めるのですぞ。
俺と同じ……天使萌えなのですぞ。
「近いうちに模造機の作成にみんなで入る所でしょうな」
ラフえもんの六人の親友ゴーレム……お義父さんの言っていた話が脳裏を過りますぞ。
やめてください! っと樹の声が聞こえたような気がしますがきっと気のせいですな!
「いずれはフレオンちゃんたちを始めとしたフィロリアル様達のサポートゴーレムを作るのもいいかもしれませんぞ」
「さすが会長! それは名案ですな!」
フィロ子ちゃんもフレオンちゃんに色々と協力して下さっていますぞ。
なぜか学園には来てくださいませんでしたが。
「拙者も生涯を掛けて色々と作って行き、フィロリアルたんのサポートで長期活動が出来るゴーレムを作って行きたいですぞ」
「素晴らしい。ハカセの生涯の研究なのですな!」
「もちろん、勇者が育てたような変化をフィロリアル達に継続して起こせるようになる研究もしたいですな」
「ついでにフレオンちゃんの正義を活動的に出来るように樹を仲間に引き込む研究もしてほしいですぞ」
「ふむ……検討しておきますぞ」
と言った感じで俺とハカセはユキちゃんのレース時間まで話題が盛り上がったのですぞ。
後日ですぞ。
「ブヒャー! ブヒブヒ!」
「ブッヒブッヒー!」
俺やリースカの私物をズタズタにして下劣に喜ぶ豚が話している映像を証拠映像として樹が村に来てお義父さんと俺、錬に見せてくださいました。
モグラが訳そうとしてましたが聞く価値もない所なので聞きませんぞ。
豚が俺の居ない所で俺やリースカの悪口を滅茶苦茶言っている光景だそうですな。
「わー……」
お義父さんがその光景を光の無い目で見ております。
「女性って怖いや」
「あらーお姉さんも怖いわー」
「陰湿な連中だねぇ……これが貴族様の通う学園の日常って奴かい? 案外連中も苦労してるんだねぇ」
お姉さんのお姉さんやパンダがその光景に各々感想を述べますぞ。
「自らより秀でた雌への妬みであんな事をするなんて醜いなの」
ライバルが何やら言ってますぞ。
「名門の闇というか……ここに勇者って餌が投げ込まれた結果起こった彼女たちの本性って事なのかな……」
「とりあえず一週間で大分陰湿な方々にお灸を据える事は出来ましたね。主犯格の方々は経歴に問題ありと付き、反省がない場合は他校へ転園することになるそうです」
「そうして指導したその後の動向はどう? 樹、元康くん」
「皆さん大人しくしてますね。授業に関しても真摯に臨んでいますし、自らの将来に関する相談などを僕や教師にどうしたら良いかなどの話をしています」
俺も成績優秀と言う事で評価は維持してますぞ。余裕ですな。
歴史などの問題も教科書を見れば答えれるので簡単でしたな。近代の歴史だとクズの話が人気のようですな。
「何かあると決闘や実力主義の廃止に関しては賛否両論でしたが、力を誇示したいなら外でと講師たちも斡旋を行っているという段階です。タクトの例がありますからね。否定意見はあまりない状況です」
「樹も元康くんも順調って感じみたいだね。で、錬は最近どんな感じ?」
そういえば錬は最近大人しいですな。
ブラックサンダーことクロタロウも静かすぎて悲しいですぞ。
「俺か? ゼルトブルで俺の取材がしたいって奴になんか喧嘩売られて困ってるな」
「なんで?」
「料理の腕前を取材したいって言われたから作ったら『こんなもんか』とか訳の分からん奴に絡まれて妙な新聞を刷られて料理界がカンカンに怒ってる。尚文、丁度いいから明日来てくれないか?」
「別にいいけど……錬、料理大会まだやってるの?」
「いや? あの後やってないが……鍛冶の修行に作った物の展示会に行った際に取材を頼まれたんだ。しかもかなり強引にな。俺のはモノマネだぞと言ったにもかかわらずな」
「既に退いた人に喧嘩売るってその人何なんですかね? 転生者ですか?」
「俺もそれを疑ってる所だ」
なんとも面倒そうなやつですな。
仕留めて捕まえれば良いのではないですかな?
「俺も行きますかな?」
「元康くんは樹と一緒に学園でしょ」
「イミアさんも苦労してますよ。そろそろ元康さんは来なくても良いんじゃないですか?」
「確かに最近は大分豚共も大人しくなりましたな」
ハカセたちと熱いトークをしたい所ではありますが、あんまり話をしていると正体がばれてしまいますからな。
口止めはしっかりとしました。
「まあ、元康くんはフィロリアル達の世話もあるし……そろそろ潜入任務はしなくてもいいのかな?」
「他にするとしたら地下ダンジョンの魔物退治辺りを任せるのが無難でしょうかね。浄化しても浄化しても終わらないそうですから」
「元康くんは火属性でダンジョンはアンデッドが多いらしいから相性は良いかもね」
「わかりましたぞ!」
「あ、弓の勇者」
ライバルがここで樹に声を掛けますぞ。
「なんですか?」
「タクトはこの学園で竜帝のクラスアップに必要な欠片を見つけたっぽいのをレールディアの記憶から見つけたなの。図書室の禁書室辺りに隠し部屋もあるっぽいからついでに処理するなの?」
「そういう事は先に言ってくださいませんかね? ガエリオンさん」
「下手に弄ると土地の優位性が崩れるとかで別世界だと学園からNG貰ったって話なの。破壊するかは任せるなの」
ライバルは何やらサラサラと書き記したノートを樹に手渡しましたな。
「七不思議の一つ? それとも秘密な部屋な感じ?」
お義父さんが目を輝かせてますぞ。
「最近生まれた七不思議がありますよ。夜間の寮で見目麗しい女性が教職員の部屋の方へと歩いて行った。あれは過去に教員と恋愛関係にあったけれど悲劇によって亡くなった女性の霊だってね。どうやら僕の部屋はその教員の部屋だったって噂が流れてます」
なぜか樹が俺を見てますぞ。
「ちなみに噂の発生日は僕が就任した日ですけどね」
「幽霊の正体見たり枯れ尾花って感じだねー……」
「あらー」
「むなしい話さね」
「俺じゃないですぞ、きっと」
で、樹はパラパラとライバルのメモ帳を確認しますぞ。
「ガエリオンさん。この隠し部屋どうやって入るんですか?」
「タクトしか入り方が分からないってレールディアの記憶では判断できないなの」
「転生者用の仕掛けだったのかな?」
「場所はわかってますし、ぶち破ればどうにかなりますかね……まあ、処理はしておきますよ」
「タクトは隠し部屋が大好きなの。七裂島でもやってたなの」
「ああ、ありましたな。ゾウが見つけて俺がドリルモードで道を開けましたぞ」
懐かしいですな。
ああ言った仕掛けが魔法学園の方にもあったのでしょう。
「まあ、元康さんが犯人っぽい七不思議はともかく……不服ですが色々とありそうですよね。転生者が所属していたことも多い学園のようですし」
洗いざらい調べ上げないといけないかもしれませんと樹は調査に乗り気ですぞ。
そんな訳で俺は魔法学園の地下にあるダンジョンの清掃を任されましたな。
余裕で攻略完了をしておきましたぞ。
念入りに焼却処理をしておきました。ゲーム知識が活用出来てよかったですぞ。
ただ、地下の奥の雰囲気がプラド砂漠の遺跡で感じた雰囲気に近かったですな。
後で判明することなのですが、どうやら地脈でここにシステムエクスペリエンスが関わっていて、奴を仕留めると連鎖的にここの不浄な部分が解消されていくのが分かるのですぞ。
とまあ樹の教師生活は順調なスタートを迎えたのでしたな。
錬の問題もお義父さんが出向いた所、速攻で終わったらしいですぞ。
喧嘩を売った取材班は逆にボコボコにされて逃げ帰ったとか。お姉さんのお姉さんも一緒についていって確認したところ、転生者ではなく度が過ぎた食通の者の取材だったとかなんとかですぞ。