会員番号009
「自らの私腹を肥やすため、気に食わない者を排除し、凌辱させようとする行為、それは悪に落ちた者が行う非道な行い。権力者が許したとしても許せず罰するものは必ず現れます。人、それを正義というのです!」
「……妙なネタを教えたのは尚文さんでしょうかね。きっと何かのアニメネタを教えたのでしょう」
時計台の上から太陽を背にして腕を組んでいたコスチュームチェンジしたフレオンちゃんが舞い降りてリースカ達を守るように立ちはだかりました。
ハミングを口ずさみ、ラフえもんのポンポンと言う音に合わせてテンポの良い登場曲となっていますぞ。
「ブヒィ!」
「なんだお前は! 名を名乗れ! こんな所にやって来たからには痛い目に合わせてやるからな!」
「空からの正義の使者! マジカルフレオン見参です! あなた達の行おうとしたことはしっかりと証拠は撮らせてもらいましたよ! 神妙に報いを受けるのです!」
「うるせえ! みんな行くぞ!」
「おお!」
「ブヒ!」
バッとフレオンちゃんは魔法を唱えて攻撃しようとした生徒たちに向かって羽ばたいて羽を当てて炎の魔法を無数に出現させましたぞ。
「マジカルフレオン、ツヴァイト・フェザーファイアです!」
「ぐわあああ!?」
「な、早すぎる!」
「ブヒィイ!?」
奴らの放った魔法はフレオンちゃんの魔法で消し飛ばされ、逆にフレオンちゃんの魔法は豚と男子生徒たちに命中し燃え上がり始めましたぞ。
痛みで豚共は転がり、男子生徒たちは揃って火を消すのに躍起になっていました。
「まだやりますかー!」
フレオンちゃんがキラキラとやる気になってますぞ。
「なんだなんだ?」
「うほー! あそこにいるのはマジカルフレオンちゃんだー!」
騒ぎを聞きつけて無関係な生徒たちが集まってきましたぞ。
「調子に乗りやがって! おい! やっちまうぞ」
火を消した生徒たちは怒りの形相で何かをやろうとしたその時。
「いえ、結構です」
シュバババ! っと樹がアローレインをガラの悪い生徒と豚に当たるギリギリの所に落下させてから姿を現しました。
「おお! パーフェクトジャスティスさん!」
「それはこのループの僕の名前じゃないです。フレオンさん、あなたの出番は終わったので早く帰ってください」
「まだまだ私の出番は続きますよー! この世に悪がある限り、私の活躍に終わりはありません」
フレオンちゃんがシャドーボクシングをしながらハミングしております。シュッシュですぞ。
「とにかく、貴方たちがリーシアさんたちに下劣な行いをしようとしたこと、しっかりと見させて頂きました。この件は学園に報告しますので相応に報いを受けてください。でないとより強い罰を受けることになりますよ」
では、と樹は豚共と素行の悪い生徒たちに注意してリースカ達を連れて去って行きました。
こうしたアクションを何度も行った結果、リースカに直接危害を与えようとする者たちは速攻で姿を消したそうですな。
樹が撮影していた時刻、一方そのころですぞ。
俺は豚共を生活指導の教員に連行した後、学園内を歩いていました。
「うほおおお! フレオンちゃんが学園に来てくれているとは最高ー! さっさと研究資料を提出してゼルトブルのフィロリアルレース観戦に行ってユキたんの応援しようと思ってたけど、拙者しばらく通うと決めたのですぞ!」
おや?
「ああ、あれが巷で噂になっている勇者が育てたフィロリアルなのか? すげー美少女だったな」
「そう! 何を隠そう、あれはマジカルフレオンことフレオンちゃん。槍の勇者様が育てた絶滅したはずの空を飛ぶフィロリアルで、弓の勇者様と一緒に正義活動をしたいって健気な子なんですぞ!」
おやおや、随分と熱心な学徒が居ますぞ。
ここで俺も話題に入ってあげますかな。
「とても楽しい話をしているのですわね」
もちろん、お嬢様モードでですぞ。
と、熱心な学徒が話している所に入り、声の主を確認しますぞ。
おや? こやつは……覚えて居ますぞ。
「あ、モトさん。こんにちは」
話相手の学生は知りませんが熱心にフレオンちゃんを語っていた生徒は覚えがありますぞ。
「おや、あなたはフィロリアル親衛隊ナンバー、ゼロゼロキュゥウ! ハカセですかな!」
そう、最初の世界ではフィーロたんファンクラブ009の人物、色々な応援グッズの開発を一挙に担った通称ハカセと言われる人物がそこに居たのですぞ。
主治医のように白衣を着こみ、若干カールの掛かった眼鏡を着用する研究者気質の、熱いフィロリアル様の信者ですな!
俺はファンクラブのメンバー全員の顔を覚えております。特に設立時にはどこの世界でも集う者たちなので、その者たちには必ず定められたナンバーを与えているのですぞ。
もちろんライバルにその身を捧げてしまったお義父さんの集会での地下ライヴでもハカセは居ましたぞ!
「で、ですかな? えっとモトさん?」
外野の生徒が俺の口調を不審に思って声を掛けていますがそんな事を気にする必要はありませんぞ。
「おや? 私の会員番号を知っているとは、あなたは一体どなたですかな?」
「会員番号00番! 北村元康ですぞ!」
俺はマイクを切ってハカセに地声で語りかけますぞ。
「おお! その声は会長ですか! なんと……弓の勇者が来るとは聞いていましたが会長までいらっしゃったとは、なんとも凄い変装技術ですな! このマイクは……ああ、フォーブレイの研究で依頼された品なので覚えがありますぞ」
ちなみに口調は俺によく似た感じですぞ。
そしてこの変声マイクはハカセが作ったのですな。
実は中々の逸材なようですぞ。タクトのような嘘の天才ではなく主治医のようなしっかりとした技術者なんでしょうな。
応援しているうちにフィロリアル様がハカセと仲良くしていたりするので間違いないですぞ。
「ではユキたんも一緒にいらっしゃるのですかな? 拙者、期待してしまいますぞ」
「残念ながらユキちゃんはレースが忙しくて今回の任務には不参加ですぞ」
「それは残念ですな」
「ここで会ったのも何かの縁、レース時間に成ったら送ってあげますぞ」
「おお! それは非常に助かりますな! ユキたんのレースを見に行きたいと親に言ったらせめて学園に資料だけでも送って行けとうるさくてやむなく数レース見逃すことになっていたのですぞ」
ちなみにハカセはフィーロたんのファンでもあるはずなのですが、このループだとフィーロたんはサクラちゃんで、サクラちゃんは婚約者と遊びはしますが歌って踊ったりあまりしないので認知率が低いのですぞ。
「えっと北村元康って……モトさんが槍の勇者!? 槍の勇者って男だろ!?」
外野が何やら驚きの声を上げてますな。
しょうがないですな、ゴキゴキと肩幅を増して衣装チェンジしてやりますぞ。
「これで信じられますかな?」
「おおおお……なんか気持ち悪い。俺、もう美少女は実は野郎だって思っちまうかも」
ふらふらと外野の生徒が俺達に背を向けましたが話を続けるのですぞ。
「ハカセは学生だったのですな。あまり踏み込みすぎるのはタブーとしていたので知りませんでしたぞ」
「今回の騒動の中心であるリーシアと同じように単位は既に取得済みなんですぞ。魔法錬金工学専攻の研究者なのですぞ」
ふむふむ……知りませんでしたな。
普段は応援グッズ作成を頼む程度の細やかな関係でしたからな。
「研究者としては学園に来たラフえもんというゴーレムが非常に気になる所ですぞ。あそこまで流暢に受け答えが出来るとなると相当のマイスターが作ったはずですな。うちの学科の者が騒いでいましたぞ」
きゅー