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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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配下の楽しみ


「さー姉御ー! 槍の勇者にもう一杯飲ませてからもう一本いきやしょー!」

「おうさね!」


 ぐぴぐぴと俺の盃に酒が投入されて行きますぞ。

 く……まだどうにかなりますがそろそろ酔いが回って来る頃なのですぞ。

 どうにか飲み切り盃をテーブルに置きますぞ。

 これ以上は厳しいですぞ。酔い潰れるのですぞ。


「姉御ー!」

「あいよー! んっく! んっくっ!」


 パンダはまだまだー! と言った様子で飲み干した所でドンとテーブルに盃を叩きつけるように置いたのですぞ。

 そしてテーブルに頭をぶつけて……いきなり酔い潰れたのですかな?


「ヒック……ぁあああん?」


 ぼんやりとした目で顔を上げましたぞ。

 目が座っていませんかな?


「おいお前ら! アタイの話を聞けよー!」

「はいでさー!」

「そうでさー!」

「お前達もだよ!」


 パンダは俺達にも鋭い眼光を向けましたぞ。


「あ、ああ」

「ええ……」

「ですぞ……」


 酔いが回って考えがまとまらなくなってきてますぞ。

 パンダ、何を話すのですかな?


「良いかー! アタイはなー! 今、すっげー! 幸せ!」


 ……ニヘラっとパンダは満面の笑みを浮かべておりました。

 なんですかな?

 ここは愚痴とか言いそうな雰囲気でしたが今までに無いくらい楽し気な顔ですぞ。

 ただ……ぼんやりとこの状態のパンダを見たような覚えがありますぞ。

 確か、ライバルにその身をささげてしまったお義父さんが泥酔したパンダの肩を担いで歩いている時だった気がしますぞ。

 旅の合間にシルトヴェルトへ戻った時にこんなパンダを見たのですぞ。


「あのなー盾のアイツな。アイツ、アタイの本音や本心をぜーんぶ見ておかしいとか笑ったりしねーの。しかもアタイをかわいいって言ってくれていろんな服とかアクセサリーとか似合わないって心にもない事言っても無理やり渡して着させて褒めてくれて、すっげー嬉しいのー!」

「……」

「……そうですか」


 妙な沈黙と言うかパンダのセリフに俺達はただ頷くしかできませんぞ。


「サディナの奴もー超強いし酒超強いし、アイツ等付き合うのかー……うー……アタイも狙ってたのにーって隠してたら感づかれちまってー本当、勘が良い奴すぎ! 流されちまったけど後悔なんてなーい! アイツもしっかりアタイと相手してるし! 独り占めなんてする必要ないさねー!」


 ……キャラが完全に変わってますぞ、パンダ。 


「でな。アタイのお腹に子供が居ていら立って八つ当たりしちゃってな、気にしてないって許してくれるしーちゃんと調べてもくれたしな。しっかり赤ちゃん生まれたしー育児の大変さもわかって肩代わりするしーアタイも頑張る!」

「そうか……がんばれよ」

「……ええ、がんばってください」

「でー剣のお前、お前はーなんか色々と大変だけど、頑張って世界を救った勇者ってのはアタイは理解してんよ。国の陰謀や命を狙われることも多かっただろうけどーアタイがほめてやるからねーしかも料理関連でも仕事したんだろー聞いてんぞー」


 パンダは錬をいい子いい子と頭をなでで軽くハグをしましたぞ。


「技術面でも女騎士様ともう差がない位伸びてるんだろー? 偉いねー!」

「あ……ああ」


 錬が頷くとパンダは樹に顔を向けて身を乗り出しましたぞ。


「弓のお前も大変だったねーしかもフレオンとかラフえもんって奴等も一緒だろー? 仲間の面倒を見るってのは大変だけどやりごたえってのは絶対にあるからやり遂げるんだよーあと、リーシアって子も頭が良いねー少し話をすると分かるよーありゃ優秀なこだよー絶対に逃しちゃダメだよー」

「あ、ありがとうございます……」

「演奏も良い曲を弾くのを知ってるよー! 戦いだけがすべてじゃないんだ。その才能は他にはないんだから誇りな!」


 と言った様子で錬と樹の両方を褒めました。

 今度は俺、となる前にパンダの配下が手を上げましたぞ。


「姉御ー! 俺はどうでさー?」

「あー? お前も最近、アイツ等と一緒に色々と頑張ってるねー! 計算に力を入れてるおかげで国の連中も助かるとか言ってたのをアタイは知ってるよー! いい子だー! アタイの自慢の配下だよー!」


 と、パンダは手を挙げた配下にいい子いい子と抱きしめてから撫で始めましたぞ。


「姉御ー! 今度は俺の番でさー!」

「何が番だよ。しょうがないねー。お前はこの前良い感じに獲物を獲ってきたさ。しかも最近、足さばきもよくなって手つきも良いさね。今度コロシアムデビューしてみな! きっと良い所に行けるよー!」

「ありがとうございますでさ!」


 パンダの配下は俺も俺もと自己主張してパンダに褒められてテンションを上げておりますぞ。


「これは一体……」

「これこそが俺達が姉御に付き従う理由でさ」


 ニヤリとパンダの配下が邪悪な笑みを浮かべて樹に説明し始めましたぞ。


「姉御は面倒見がよくてめちゃくちゃ強いし頼りになりやすし、そこで配下になった奴は数多いでやすが、泥酔した時にこうして俺達を絶賛して褒めてくれるでさ。あれが姉御の本心だって思うとがぜんやる気が出るんでさ」

「褒め上戸って奴ですか……」

「しかも周囲に惚気るんでさ。ですからみんなで姉御は惚気上戸と呼んでるんでさ」

「酔わせた挙句そんな事言わせて虚しくないのか?」

「細かく聞けば問題ある所もすんなり教えてくれるんで、勉強にもなるしやる気が出るんでさ」

「……そうですか」


 いい子いい子とパンダは配下にそれぞれ褒めちぎってはハグをしていきますぞ。


「そもそも初めて見た気がしますけど……」

「ここまで泥酔するのは滅多に無いんでさ。更に泥酔しても5回に1回くらいの確率でしか出ない酔い方なんでさ」

「そんな滅多に無い状態を配下の皆さんは狙っていると……むしろ泥酔した時に色々と無体な事が出来そうですけどね」

「物騒な事を言っちゃいけないでさ。弓の勇者様」


 パンダの配下はぶるぶると震えて青い顔をしましたぞ。


「昔、俺達の仲間に不心得者が居たことがあって、あの状態の姉御に無体な事をしようとした奴がいやしたが、あの状態の姉御に妙な事をしようものなら暴走して狂暴化するんでさ。ソイツは頭を丸ごと噛みつかれ、爪でズタズタにされ、しかも締め上げられて大変な事になりやした。色々と火消しに苦労したんでさ」


『盾のボンが姉御と結ばれるという事は羨ましいけど姉御が心を許していたという事だ。姉御には盾の勇者位凄い相手じゃないと釣り合わない。俺達では姉御ほどの方に並べられない』

 とまで述べましたぞ。


「配下の俺達の至福にして最高の時間なのでさ。あの優しい言葉と日々の厳しくも優しい教育で俺達は姉御を慕っているんでさ。ちなみに姉御はこの状態の記憶はないんでさ」

「あなた達の団結がかなり歪んでいる事がわかりましたよ」

「心外でさ。俺達は姉御の健やかな日々と幸せの為ならなんだってやってやるし、何かあったら駆けつけてその身を賭して力になるんでさ」

「鋼の団結心と言いたいのはわかりますけど……まあ、ラーサズサさんの亜人姿は姉御肌の美女ですし、あんな方に導かれて居たらそうなってしまうのかもしれないですけどね。ただ、僕達を配下にしないでくださいね」

「しょうがないでさ」

「今度フォウルも宴に招くでさ。きっと同士になるでさ」


 ああ、見た覚えがありますぞ。

 連携に混ざっていましたから気が合うのでしょう。


「フォウルさんもラーサズサさんの配下同盟入りですか……僕達の洗脳枠と同じなのか判断に悩みますので後で聞いて助けるか判断しましょう。錬さん」

「そうだな……元康の犠牲は忘れない。尚文じゃないがみんなの良い盾になったな」

「飲酒できない僕たちは助かりましたね」


 等と錬と樹は身勝手な事を言って、酔ってぐったりする俺を見ていたのですぞ。


「うー……」


 このまま暴れますかな? ですがこの元康、鋼のメンタルで酒乱は避けるのですぞ。

 と、その日は泥酔したパンダを配下たちに預けて俺達は一足先に村へと戻ったのですぞ。





 ある日の事ですぞ。


「フォーブレイ付属の魔法学園へ講師をする依頼?」


 エクレアが夜、みんな集まって村の食堂で食事をしている中にやってきて、俺達に提案してきたのですぞ。


「うむ……どうやらフォーブレイを始めとした各国の首脳陣からの提案でな。世界を平和にした四聖勇者の皆様に講師をして貰いたいという話なのだ。大分世界規模の混乱も収まりつつあるとの事でな」

「進級時の長期休暇中に波という災害が起こった為にそのまま休校していた魔法学園が再開するとの事で……」


 婚約者も今回の依頼に関しては国からも頼めないかと言われて来ているようですぞ。

 ちなみにゾウの方にも声が掛かっているそうで同様のお願いをされているとの話で、三名とも揃って困った顔で俺たちに提案しております。


「断る事は可能だとは思うのですが……出来れば受けて頂きたいとの話です」

「講師……ね。俺たちが人に教える程魔法が使えるかって所だけどー……」

「あれじゃないですか? 勇者にしか使えない類の魔法なんかもありますし、講師兼勇者研究の為のという奴ですよ」

「あり得る話だな。ほかにも何かありそうではあるが……」


 こんな依頼もあるのですな。

 おや? 何やら今までのループでもこんな依頼があったような気はしますぞ。

 大体がお義父さんが俺は気にしなくて良いとおっしゃって特に関わらなかった依頼だったはずですな。


「色々と思惑はあるのでしょうが勇者様方から皆様は話を聞きたいという事だそうです」

「魔法を教えるって事なら俺達以外でも良さそうだけどな」


 錬がライバルやお姉さんのお姉さんなどを見ながら言いますぞ。

 ついでに助手にも視線が向かいますな。


「四聖勇者の方々と指名されている。ガエリオン殿やサディナ殿達が行っても歓迎はされないであろうな」


 エクレアがそれとなくライバルたちへと押し付けるのは無理であることを伝えますな。


「うーん……ここで断ってもフォーブレイの王様辺りからも言われそうな話だなぁ……」

「可能性は非常に高い。それほどまでに世界を救った勇者達から授業を受けたい者は多いという話なのだ」

「となると幾ら断ってもいずれはやらなきゃいけない感じか……下手に断ったらもっと厄介な依頼が来そうだなー」


 フォーブレイを含めた各国には色々と融通をしてもらっているからなー……と、お義父さんが小さく呟きましたぞ。


「それで四聖勇者って事だけど俺達全員?」

「いや、そこまで指定は無い。誰か一人は専属でしばらく学園に常駐してもらいたいという話だ」

「一応、ある程度気は効かせている訳か……」


 うーむ……とお義父さんたちが唸っておりますぞ。


「とりあえずしばらく交代で行くとして最初は誰が常駐するかって事になりそうだね」

「ええ、そうなりますね」

「問題は誰が最初に行くかになるが……」


 錬と樹がチラチラと両者を見合っていますぞ。


「ここは弓の勇者が無難な選定だと思うなの」


 ライバルがここでさりげなく提案しましたぞ。


「え? 樹が行くの? あ、そうか!」

「ちょ――」


 お義父さんの目がキラキラとし始めた所で錬も合わせるようですぞ。

 俺も一緒にやるとしましょう。


「ラフえもん!」

「樹と!」

「魔法の学園ですぞ!」


 樹が額に青筋を浮かべて拳を握りましたな。


「あ、あなた達は! 劇場版とかほざくつもりですか!」

「え? えっと……いつきくん。ぼくも手伝うからね?」

「いえ、ラフえもんさんは気になさらなくて結構です。むしろ尚文さん達のネタの種になりかねないのでできれば来ないでください」

「そ、そうなの? でも心配だなぁ……いつきくん」


 ラフえもんは心配性のようですぞ。


「尚文さん達のボケはともかく、ガエリオンさん……一応理由は聞きましょうか」


 警戒気味に樹が眉を寄せて尋ねますぞ。


「ライバル、何が目的ですかな?」

「単純に向き不向きで言ってるなの。なおふみは多少時間はあっても子供たちの世話があるし村でも色々としてるなの。何より適正が回復と援護魔法だから教えられる範囲が限られているなの」

「確かにそうですね。尚文さんの場合は怪我の治療や身体能力の向上は出来ますが、魔法に関して使えるモノが限られますね。教えるのは上手そうですが」

「そう言われるとちょっときついね。魔法学校って言うんだから生徒達は当然読み書き出来るだろうし、この手の授業って攻撃魔法も重要だろうしね」


 医療系の学科なら向いてるだろうとみんな思いますが、最初に行くには特化し過ぎという事ですな。


「次に剣の勇者だけど、言うまでもなく大勢の前で話すのは苦手で向いていないなの」

「ああ……うん」

「錬は人見知りしますからな!」

「むしろ最初は高圧的で勘違いされそうですよね。転生者でもない貴族の子息に無駄に恨まれそうです。ざまぁし放題で結果、精鋭のような専用クラスとかなら作り出せそうですが」

「うるさい!」


 確かに錬は教えるのに少々癖がありますな。

 魔法学校なのに剣術を教えそうなのも問題ありですぞ。


「で、槍の勇者に関しちゃ問題外なの」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 元康は火の魔法とフィロリアルが使う魔法の解説は出来るだろうから少しだけなら教えても良い気がする 同時に生徒に恐怖も教えるから向いては居ないだろうけど [一言] 次回からはいつかのエイプ…
[一言] >「ラフえもん!」 >「樹と!」 >「魔法の学園ですぞ!」 ↑部分を3回読み直して、ようやっと意味が分かりましたw 電車の中で思わず『ブッフフォ』って、ちょっと噴き出してしまったじゃないで…
[一言] 着せ替えやってる頃にいい子いい子の話があったけど、ただの願望じゃなくて実際にやってたからだったのか。 槍はお義父さんやフィロリアル様の為の人材育成なら行けるかもしれない。
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