魔法のお薬
なんか書きたくなってかいた産物です
――ゴリゴリゴリゴリ…
――グツグツグツグツ…
――ボフッ…
「出来たぁぁ!!」
少女はピンク色の液体が入った小瓶を掲げた。
「ふふふ…これで私が欲している幸せな生活が送れる………」
「待ってなさいよ………」
少女、もといハリスは意気揚々と家を出た。
フンフンフフン〜
「おはよう、ハリスちゃん。今日はいつもよりご機嫌だね。何かいい事あったのかい?」
「おはよう。はい、今日はやっと思った通りの薬を作れて、これから始まる生活に喜んでいるんです!!」
「そうか!それはよかったな!だが、噂の公子様は……」
「そんなもの、どうだっていいんです。はい、じゃあこれが今回の依頼の薬です。説明書は同封してあるので、よく読んでから、販売して下さい。私はこれで失礼します」
「あ、ああ。いつもありがとな………」
カラン、とおじさんの店をでて、露店のクレープを食べた。
(働いたり、嫌な言葉を聞いた後は、甘いものでリセットするのが一番だな……)
もむもむと頬張っていると視界が暗くなっていった。
「やぁ、今日もあったね」
キラキラと眩しい笑顔を振り撒き、そこいらのかわいいお嬢さん方をふらつかせるほどの美声でハリスに話し掛けてきた。
奴こそハリスが追い払いたい、アニストン家嫡子、ディック公子、その人だ。
「何の用ですか」
「そんな野暮な……もちろん、君に会いに来たんじゃないか!」
「さよなら」
ハリスは席を立ってすたすたと歩いていった。
「ちょっと待って。話があるんだ………お茶でもしながら、どうかな……?」
リーチの差なのか、大きく開いた距離もすぐに追いつかれてしまう。
(まぁ、ここであの薬を使うってのも手ね…)
「………話聞いたらすぐに帰るから………」
ディックはぱぁっと顔を輝かせて、ハリスを連れて茶店に入った。
(……………なにこの気まずい空気……)
ハリスは紅茶を飲みながら思った。
やけにお姉様方からの視線が痛い。こいつがキラキラオーラを出しているからか!?そうに違いない!!
「で、本題に入るが、話とは一体何だ?」
ハッとしたようにディックは動いた。
(こいつ、忘れてたな………)
「話っていうのは、ハリスに僕の恋人になって欲しいんだ」
ゴホッ…ガハッ、ケホッ……
「大丈夫!!?」
(に、見えるか?ばかやろー。噴いたわ、驚きのあまり噴いたわ。あぁ、もったいない……)
「すみません。ふきん貰えますか?」
ディックが店員を呼ぶために私から目を逸らす。
その隙に彼の飲み物に薬を混ぜる。
「で、恋人になってくれる??」
そう言って、ディックは紅茶を飲んだ。
「他をあたって下さい。そういうのは、好きな人に言うべきです」
「……………」
「聞いてます?」
ディックの様子を見ようと覗き込んだ瞬間、ハリスはがしっと頭を掴まれ、キスされた。
「!?!?!?!?!?!?」
「嗚呼…ハリス。やっぱり君は僕のものだ………こんなにも僕を思ってくれる人なんて他にいないし……何よりこの胸の動悸が証拠かな!」
ディックはハリスを抱いて、馬車まで戻っていく。
「ちょっと!離しなさい!どこ行くの!?私は話が終わったら帰るって言ったよね!?」
「いやぁ、帰したくなくなっちゃった!だから、おとなしく、僕と一緒に屋敷に帰ろう」
「いやだ!なんで?なんでこうなったの??私は家に帰るの!帰るんだからー!!」
「そうだね、帰ろうね。これから、君の家になるところへ」
「ちがうぅぅ!!!」
馬車の中でも喚きながら、屋敷にお持ち帰りされ、まんまと美味しく食べられました。
(なんで?)
ハリスは痛む身体を起こし、考えた。
ここは、ディックの寝室で、人が四人くらい寝られるベッドにハリスは下着姿で座っていた。
(あの薬の配分は間違ってなかったはず……なんでディックは効果が現れないんだ?)
入れた薬を出してみる。
(えっと、……嫌いになる薬……よね)
可笑しい……、と思ってハリスは自分も飲んでみた。
(……………)
変化がない!!!!!!!!
急いで薬草辞典や薬の調合法が書かれた本を読みあさった。
(……………………………………やってしまった!!!)
ハリスはぷるぷると震えた。
(効果がないはずよ!この薬草でこんな調合したら、効果が打ち消されてしまうのに!どうして気づかなかったんだ?!)
ガチャと音とともにディックが入ってきた。
「身体は大丈夫?今親に了承もらったんだ。これで僕達は結構前提の恋人だよ!!」
(………ははは………)
もう事態は取り返しのつかないところまで来ていたらしい。
ハリスは諦めてディックの恋人になった。
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三年後、ディックに似た息子を産むことになる。
(…結局ほだされちゃったし………嫌いになる薬なんて出来ないのね……)