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喋る犬と宇宙外交官  作者: メロ
喋る犬とコルーパの正体
11/21

宇宙外交官とコルーパの正体 ⑤

 僕は大きく深呼吸する。そして、下を見る。やっぱり真下に広がる町がありよりちいさい。

 もう一度深呼吸する。そして、コルーパに聞く。「正しき者ってのは?」

「もちろん、宇宙外交官だ」

 僕は、方位磁石の側面についている手形に合わせて触れる。すると、方位磁石の針がぐるぐる動いて、方位磁石そのものが光り、だんだん熱くなる。

「手を離せ。溶けるぞ」

 それを聞いて僕はすぐさま手を離す。

 やがて針が止まると、北東の方角を向いた。でも、道は現れない。どっちみち、道は見えないようになっているみたいだ。

 コルーパが、方位磁石が指している方角を向いたまま言う。

「ここからは私語は禁止となっている。下に落ちたくなかったら喋らないことだな」

 僕はガクガクと頷く。コルーパは満足したように頷くと、見えない道を歩き始めた。僕もその後ろをついていく。百メートルほど歩いたらコルーパが下に落ちた。叫び声を出しそうだったけど、両手で口を押さえる。そして、目をつぶってまっすぐ前に向かって歩く。

すぐに、落ちる感覚。もう、だめだ。叫んでしまおう。と思った瞬間、ふんわりと地上に降りた。目の前を巨大な湖が広がっていて、真ん中に橋がかかっている。コルーパと僕はその橋を歩いていく。途中、霧がかかり始め、そこからさらに進むと、もう前は見えなくなった。でも、そのまままっすぐ進む。

 やっと霧が晴れたと思ったら、もう、湖を渡りきっていて、真っ白な空間の中だった。部屋だけど、どこもかしこも真っ白。入ってきた入り口さえない。真っ白い部屋の中央に真っ白いいすが置いてある。僕はそこに座る。すると、どこからか男の人の声が聞こえてきた。

「汝、宇宙外交官なるものであるか?……答えよ」

「あっと・・・・・・えー、はい。僕は宇宙外交官です」

 僕は少々うろたえながらも答えた。すると、また声が聞こえてきた。

「真であるな?ならば、この犬は何者であるのか、答えて見せよ」

 僕は、コルーパを見る。だけど、コルーパはこっちを向かない。なるほど、これがコルーパの言っていた真理なんだな。そのひとつを答えろって言ってるんだ。僕がどれほど宇宙外交官に向いているか、どれだけその非現実的な答えを受け止めれるか。そこで、宇宙外交官としての素質が変わってくる。ふーん。ここはどう答えるべきか。

「さあ、答えよ」

 せかす、男の人の声。待っててよ、ちゃんと答えるんだから!心の中でそう叫ぶ。僕はわかっていることを一つずつ頭の中で整理し、慎重に言葉を選びぬく。

「この犬は――宇宙人です」

 そう答えると、男の人の笑い声が部屋に響き渡る。

「よろしい。汝を宇宙外交官として認めよう。さあ、受け取るのだ」

 部屋のどこからか、青い石がふわふわと飛んできた。僕はそれを右手で取る。すると、石は、僕の右手に吸い込まれるかのように消えていった。

「これにて、宇宙の儀を終わる」

 その声が聞こえたかと思うと、僕とコルーパは最初に飛び込んだ穴があった場所に立っていた。


「それで?……どういうことなんだ?」

 僕は横目でコルーパを見る。奴はどこか遠いとこを見て言う。

「わからないな。それよりこっちのほうが聞きたい」コルーパが僕を見上げる。「本当に俺が宇宙人だと思ってるのか?」

 僕はコルーパの視線をかわす。

「まずこっちが聞きたい。あれはなんだったんだ?あの部屋は何なんだ?」

「儀式の間。男の人の声が聞こえたと思うけど、あれは首相だ。サイザンフ星の最高指導者。あれはテストだったんだ」

「テスト?」

「ああ、そうだ。俺には首相が言ったことは聞こえない。天馬にしか聞こえない。あの時首相はこういったんだろう?『この犬は何者か』。その答えようによっては君が宇宙外交官になれるかなれないかが変わってくる」

 それを聞いて、僕はさっきから聞きたかったことを聞く。

「あのさ、宇宙外交官ってそんなにいいものなの?ほら、さっき言ってただろ?年に十年ぐらいくるって」

 だけど、コルーパはすぐには答えなかった。なんていうんだろう。言ってもいいのか迷ってる感じ。しばらく遠いとこを見て、また僕を見上げた。

「石を渡されただろ。みんなはあれを狙ってるんだ。ほら、この町の伝承かなんかで、あるだろ。『空から降る神の涙、その涙に――」

「宿りし神の力。その力を使ってバンバルジを呼びたもう』・・・・・・バンバルジって何だ?」

「首相の名前だ。もちろん、あの石は神の涙なんかじゃない。まあ、それに匹敵する力を宿していると言っても過言じゃないけどな。あの力を手に入れた地球人は、進化する」

 その言葉に、僕は思わず、は?と言ってしまった。だけど、コルーパは気にせずに続ける。

「まず、強靭的な身体能力、体を手に入れる。ビルに下敷きにされたぐらいじゃ、死ぬことはない。飛行機が飛んでいる高さぐらいは簡単に飛び越せる。そして、サイザンフ星人と話すことができるようになる。首相は例外としてだ。そして、最悪の事態になったときの武器となる」

「最悪の事態って?例えば宇宙人の襲来とか?」

 僕が冗談っぽく聞くと、コルーパは違って重々しく頷いた。

「うむ、そういうことになるな」

 ・・・・・・やめてよ。

 すると、突然後ろからクラスメイトの野崎に似ている声がした。

「嘘よ!犬が喋るなんて・・・・・・。私どうしちゃったんだろ。さあ、話してくれない、空野君。全部」

 振り向くと、長い黒髪を揺らしながら、えらそうに言葉を連ねる野崎理香がいた。

 野崎は同じ二年B組のクラスメイトで学級委員をやっている。男子は偉そうだってみんな言ってるけど、女子には人気がある。全部自分が正しいと思い込んでいるから、会話がかみ合わない。それも男子だけらしいけど。

 こっそり、コルーパに耳打ちすると、ふうんとやけに素っ気無かった。

 でも、野崎に見られてしまった。さて――どのように説明したらいいのか。

「さあ、早く話して。私が納得するように」

 納得するようにって言われてもなあ。どんな風に話しても納得しないと思うんだけどな。よし。ここは嘘を突き通すことにしよう。

「こいつに人間の言葉を教えてあげてるんだよ。ほらこれからの世界、人間の言葉は役に立つと思ってね」

 僕の必死の言い訳を野崎は冷たい目で見ている。だいぶ気まずい状況だな・・・・・・。

「劇だよ劇、!人間の言葉を覚えさせるために、犬相手に僕たちが今度やる劇の練習をしていたんだよ」

「うちのクラスで劇なんかやらないわよ」

 野崎が冷たく言い放つ。・・・・・・かなりまずい。どうにか脱出しないと。

「あ!もう、こんな時間だ!塾があるんだ、帰らなくちゃ。というわけで、じゃあまたな野崎。あんまり、分けわかんないことを言うなよ!」

 僕はコルーパを抱き上げて、家に向かって走り出す。

 走っている音にまぎれて、野崎の大きなため息と呟きが聞こえた。

「・・・・・・塾なんか言ってないくせに」

 僕はそれを見事に聞き流した。


読んでいただいてありがとうございます。

徐々に続きを載せていきます。

 

現在、2nd(よりよい表現に推敲しております)を執筆中です。



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