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喋る犬と宇宙外交官  作者: メロ
喋る犬とコルーパの正体
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宇宙外交官とコルーパの正体 ④


 僕はくらくらした。危うく気絶してしまいそうだった。

「で、何で今まで黙っていたのに、急に話す気になったんだ?」

「そりゃあ、『宇宙人友好的条約兼会合出席義務条約改正委員会』があるからに決まってるだろ。それに、サイザンフ星人も視察に来ている。そうじゃない奴らも混じっていたかもしれないが。まあ、そういう事だ」

 僕が聞くと、コルーパはペラペラと喋った。僕は適当に頷いて、本題に入る事にした。

「じゃあ、聞くけど、どうして僕がそんな事をするはめになってるんだ?」

「教えてもいいけど、少々面倒くさいぞ。それでもいいならいいんだけど……。さっき言っただろ、五十年ぐらいに一ヶ月間の間、宇宙政治的な事が集中的に行われるって。で、その始まりは地球誕生のときからなんだ。当時、サイザンフ星人が出来たばかりの地球を自分たちの領地にしようと、宇宙船に乗って地球までやって来た。けど、情報が遅かったんだろうね。来たのは人類が誕生してからだった。サイザンフ星人は当時、宇宙の中でも、最も権力と勢力を持っていたんだ。だから、力ずくで人類を攻め滅ぼそうとした。けど、地球にいた誰かがそれを止めたんだ。その誰かがサイザンフ星との友好関係を築き上げ、その友好関係を崩さないための存在として、宇宙外交官が人類の中から選出された」

 コルーパはそこで一旦、大きく深呼吸をした。僕はコルーパの顔を覗き込むようにして質問をした。

「あのさ、誰かがサイザンフ星との友好関係を気づいたって言ってたけど、その誰かって誰のことだ?」

 するとコルーパは、顔をそらして「誰かさ」と静かに言った。

「だから誰なんだよ!」という言葉を僕は飲み込んだ。

 何故か、コルーパの目がすごく怖くなっていたからだ。コルーパがこんな目をするのを見たことがない。僕はどうすればいいのかわからなくなり、たじろいだ。すると、コルーパがそっぽを向いたまま吐き捨てるように言った。

「初代宇宙外交官が誰か知りたいのはわかってる。でも、俺は言えない。それに君は真理に触れてはいけない」

「どういうことだ?」

「既に、君は真理について一つ触れてしまっている。これまで、そこまで頭の機転が利くやつがいなかった。君のおじいさんもまた、君のような奴だった。真理に二つ触れ、世界を崩壊へと導こうとしていた。彼は俺の正体を見事見破った。君も――天馬もうすうす気づいているんだろう?それで、君は二つ目の真理に触れてしまうことになる。地球の人間は三つの真理に触れることでその星を滅ぼす『縛り』の呪いにかかっている」

「誰がそんな呪いをかけたんだ?」

 僕はできるだけ冷静な声で聞いた。

「悪いな。僕はもう、お前の存在とお前の言い分を信用できなくなってきた。これは夢だ。僕は悪い夢にうなされているんだ。お前の言う『宇宙外交官』にはならない」

 僕は目をつぶり、十まで数えてから目を開けた。そこには、あの青い目の少年がいた。

 なんでいるんだよ……。僕は心の中でつぶやいた。

「こいつに会っただろう?」

 少年がコルーパの声を喋っている。すると、少年が崩れ去り灰になった。

 なんだ、今のは……。

「俺のことを信じるんだ。信じ、ついて来てくれ。そうすれば、今日、全てがわかるはずだ。頼む」

「しょうがないなあ。そこまで言うんだったら」

 聞きたいことはたくさんあるけど、そのうちコルーパが話してくれるだろう。僕は顔がにやけないように言った。

「それじゃあ、ついて来てくれ」

 コルーパと僕は始めてであった場所へ行く。だけど、いつもと何だか様子が違った。地面に大きな穴が開いている。コルーパはそこへ飛び込んだ。

 ちょ、ちょっと待ってよー。言うのも恥ずかしいので、心の中で叫ぶ。

 僕も、コルーパに続いて目をつぶって飛び込んだ。


 何だか、不思議な感じだ。落ちている感じがしない。でも、落ちている。何て言ったらいいのかな。ふわふわ浮いている感じ。でも、怖いわけじゃない。僕らは空を逆さまに落ちている。叫ぼうにも叫べない。というか、叫ぶ気にもならない。だって、何だかとても落ち着いている。

 しばらく逆さまに落ちた後、空中でとまった。この高さだと、家がありより小さく見える。気づいたら、コルーパは空中を歩いていた。その先には階段がある。置いて行かれないように、僕はおそるおそる足を伸ばす。すると、途中で何か地面に当たるような干渉があった。両足を着けると、また重力が復活したように、ふわふわとした感覚はなくなった。そのまま、コルーパに付いて、階段を上る。階段は十段ぐらいで、上りきると、そこにはもうひとつの世界があった。

 あたり一面原っぱで、蝶々がひらひら舞っている。時折、気持ちがいいそよ風が吹く。原っぱの先には、とてつもなく大きい木が生えている。幹の太さは中学生が百人つないでも届かないようなぐらい。葉っぱは――生い茂っているんだろうけど、上を見上げてもどこにも見当たらない。

 こんなのが、どうして木ってわかるのかって?そりゃあ――なんとなくかな。どう考えても、こんなところに生えてるものっていったら、木ぐらいしかないだろうっていう感じ。 でも、ここどこ?

 その問いに答えるかのようにコルーパが言った。

「ここは儀式の間。宇宙外交官候補はここで儀式をする。そして、はれて宇宙外交官になれるってわけだ」

 『はれて』って言ってるけど、僕は宇宙外交官なんてものになりたいなんて言った覚えはない。それに思わない。というか、なりたくない。というのが本音だ。

 コルーパは、おかまいなしにどんどん進んでいく。そのまま、木の幹の前に立ち止まった。そして、くるりと、こちらを向いた。

「ここで、本当に宇宙外交官候補かどうか検査をすることになってる」

 そう言い終わらないうちに、巨大な蚊のようなものがブーンという羽音を立てて、どこからともなく飛んで来た。

 その蚊は僕の首の後ろに来たかと思うと、その巨大な針を僕の首に突き刺した。痛っ!と思ったけど、痛くなかった。僕はコルーパに、この巨大な蚊は何なのか聞いた。

「そいつは、遺伝子情報を確認するために血をとってるんだよ」

「何で、遺伝子情報なんか確認するんだ?」

 すると、驚いたような顔をした。「あれ?言ってなかったっけ?初代宇宙外交官は誰かは言ってないけど、君もおじいちゃんも初代宇宙外交官の祖先なんだよ」

「――初耳だ」

 僕はコルーパを睨む。奴はススッと僕の視線をかわす。

 まったく困った奴だ。

 僕とコルーパは、木の前に立つ。しばらく立っていたままだったけど、コルーパが木に向かって歩き出す。

 ――おいおい、ぶつかるぞ!と思ったら、コルーパは、ふわっと木の中へ消えていった。はっとした僕はあわてて木に向かって歩き出す。機にぶつかると思った瞬間、僕は目をつぶった。そのまま歩いていったけど、木にぶつかった感覚はない。恐る恐る目を開けると、目の前は階段だった。どこまでも上へと続いている螺旋階段。どうやら、ここは木の中のようだ。僕はコルーパに追いつくように少しだけ早く上る。

 不思議な素材でできたこの階段、一段一段上がるたび、階段がポワーンと不思議な音を奏でる。なんだか、背中がゾワゾワする。見知らぬ土地を一人でいると、ものすごい不安に襲われ、逃げ出したくなる。今はそんな感じ。途中、コルーパと合流し、階段を上りきる。そこは、巨大な葉っぱが多い茂る木の枝にあたる部分だった。枝の上をすたすたと歩いていくコルーパに続いてふらふら歩いていく。枝の先には台座があって、その上に石でできた方位磁石のようなものが置いてあった。

 コルーパが振り向いて言う。

「正しきものが触れば、聖なる場所へとつながる。心悪しき者が触れば、地獄へつながる」

 僕は恐る恐る聞く。「心悪しき者って?」

「宇宙外交官の力を使って悪巧みをするもの。結構いるよ。知ってる人は知ってるんだね。一年に十人以上来てる。まあ、偶然入り口を見つけただけかもしれないけど。夏になると、あの入り口は姿を現す。この方位磁石は宇宙のものだ。サイザンフ星のは、西を指すようにできているんだ。まあ、悪しき者が触っても何の反応も示さないから、そのまま西へ向かって歩き出す。見えない道は続いているけど、途中で崩れる。で、そのまま雲を突き破って地上に落ちる」

「うちの町の都市伝説で、夏に、血の雨が振るって言うのがあるけど……」

「うん。人が落ちてくるんだよ。そこの神社の和尚さんはサイザンフ星人と地球人のハーフで、落ちてきたら片付けてくれるんだ」

 ……なんて恐ろしい話だ。


読んでいただいてありがとうございます。

徐々に続きを載せていきます。

 

現在、2nd(よりよい表現に推敲しております)を執筆中です。



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