シーン6:エンディング演出/鏡に映る影
夜。
篠原家の二階。
カーテンの隙間から、街の灯りが細く差し込んでいる。
制服のまま机に突っ伏していた莉々亜は、
ふと、目を覚ました。
――静寂。
時計の秒針の音が、やけに大きく響く。
彼女は立ち上がり、鏡の前に歩み寄った。
鏡の中には、制服姿の自分。
しかし、その瞳には――金色の残光が宿っている。
「……また、ここから始まるのね。」
その呟きに応えるように、
鏡面が微かに揺らいだ。
波紋のように広がる光の中、
もう一人の“彼女”が浮かび上がる。
絹のドレス、宝石のティアラ、
そして、冷たい微笑。
悪役令嬢――リリアーナ=フォン=エストリア。
「ようこそ、またこの世界へ。」
その声は、まるで鏡の向こう側から響くようだった。
優しく、しかし底知れない力を秘めた声。
莉々亜は一歩、鏡に近づく。
その金の瞳が、自分自身の影を映す。
「ええ。……でも、今回は私が壊す番よ。」
鏡のリリアーナが微笑む。
その笑みが、やがて静かに崩れ、光の粒となって消える。
暗闇の中、莉々亜のスマホがひとりでに点灯した。
画面に、淡い文字が浮かび上がる。
《恋愛ゲーム・シナリオ開始:Act 1》
ピアノの旋律が静かに流れる。
それは、悲しみと決意を同時に湛えた“メインテーマ”のアレンジ。
莉々亜はそっと目を閉じ、
微笑みながら呟いた。
「ゲームの始まりね。
――でも、エンディングは私が選ぶ。」
カメラがゆっくりと窓の外へ引いていく。
夜空の星々が、データの断片のように瞬きながら、
世界の空に一行の文字を浮かべる。
《Chapter 1:END → Chapter 2:恋愛ルート介入開始》
――そして、画面は静かに暗転した。




