シーン5:観測者・ルカとの再会
理科準備室。
窓のブラインドは半分だけ下り、淡い夕光が縞の影を作っている。
空気には、薬品と電子機器の匂いが混ざっていた。
BGMのように――低い電子ノイズが、どこか遠くで震えている。
> 「……君、また世界に干渉したね。」
声の主は、天条ルカ。
白衣の袖をまくり、机上のノートPCを覗き込んでいた。
画面には、データの奔流――そしてその中に、篠原莉々亜のステータスが浮かんでいる。
《Observer_002》
《好感度操作:検知》
《ループ回数:03》
リリアは息を呑んだ。
> 「あなた……見えてたの?」
ルカは無表情のまま、薄く笑う。
> 「“観測者”だからね。
僕も、干渉者の末裔だ。」
その声音は、感情を削ぎ落としたように冷静だった。
彼が指を動かすたび、モニターに赤い文字列が流れていく。
Fragment Detected : AMARIE_SYS_CORE Location : Old_School_Building_Mirror
> 「“アマリエ”──この世界の管理者。
君が壊そうとしてる“恋愛システム”の母体だよ。」
その単語を聞いた瞬間、
リリアの視界に――あの鏡の声が蘇った。
> (また、あなたの番よ……)
耳鳴りと共に、画面が微かにノイズを走らせる。
ルカのモニターにも、一瞬だけ歪んだ文字列が浮かぶ。
《AMARIE>ACCESS...DENIED》
《REQUEST : LILIA.RETURN》
リリアは小さく息を吐き、呟いた。
> 「アマリエ……あの鏡の声。」
ルカは彼女を見た。その瞳の奥には、明らかな好奇と警戒があった。
> 「君は、“管理者”に狙われている。」
静寂が落ちた。
低音のノイズだけが、理科準備室の空気を震わせていた。




