シーン4:リセットの瞬間
――チャイムが、逆再生された。
耳の奥で、**キィィン……**という金属的な音が反転してゆく。
景色が白くフェードアウトし、
次の瞬間、リリアは――また朝の教室に立っていた。
眩しい朝日。
鳥の鳴き声。
机の並びも、笑い声も、昨日と同じ。
いや、それ以上に……**完璧にコピーされた“昨日”**だった。
> 「……戻った……」
呟いた声が震える。
足元の影まで、前回とまったく同じ位置に落ちている。
まるで、時間そのものが“セーブデータ”から再読み込みされたかのようだった。
教室の時計は――午前8時00分。
秒針が進むたび、針の動きにわずかな“ノイズ”が走る。
グリッチ。
世界の継ぎ目のような歪み。
(72時間ループ……本当に、プログラムの世界。)
そのとき、教室の入り口からカイトが入ってきた。
昨日と同じ笑顔、同じテンション。
だが、リリアを見るその瞳に――空白があった。
> 「……あれ? 転校生さん? 君、名前なんだっけ?」
笑っている。
けれどその笑顔の奥には、“記憶の痕跡”がない。
彼女を見たことも、話したことも、すべてが初期化されていた。
> (記憶が……削除された。)
胸の奥が、ひどく冷たくなった。
リセットされた世界。
そして、削り取られた“関係”。
昨日の涙も、笑顔も、恋のきっかけも――
システムの補正処理で、すべて消された。
> 「……私だけが、覚えてるのね。」
リリアは小さく笑った。
哀しみと、どこかの決意を混ぜたように。
> 「だったら……今度は、消えない壊し方を探してみせる。」
再び始まった“同じ朝”。
その中で、彼女の瞳だけが異質に光っていた。




