シーン2:昼休み――恋愛フラグの改変
昼下がりの中庭。
陽光が芝を照らし、風が木々の葉を揺らす。
穏やかな日差しの下で、笑い声と恋の予感が入り混じっていた。
甘い恋愛BGMのように、ミナの声が響く。
「ねぇ、カイトくん――これ、見てほしいんだ」
ミナが差し出したノートの端が、風に煽られてひらりと舞う。
彼女が慌てて追いかけようとした瞬間――
つまずいた。
足元の影に引っかかったように。
ノートが宙を舞い、ページが光を反射して煌めく。
カイトが反射的に手を伸ばした――
その瞬間。
リリアが、一歩、先に踏み出した。
まるでプログラムされた動作のように正確なタイミングで。
彼女の指先がノートを掴み、芝の上に軽く着地する。
> 「大丈夫? ミナさん。」
声は優しい。
けれど、その瞬間――世界が一瞬だけ“軋んだ”。
甘い恋愛BGMが歪み、電子的なノイズにかき消される。
桜の花びらのエフェクトが、一瞬だけ点滅して――消えた。
まるで、この空間の“演出データ”が削除されたように。
カイトが瞬きをする。
何が起こったのか分からず、ぼんやりと立ち尽くしている。
ミナは膝をついたまま、リリアの手元のノートを見上げた。
そこに――ウィンドウが浮かぶ。
> 《恋愛フラグ:キャンセル》
> 《イベント分岐:中断》
誰にも見えない。
この異常を、感知しているのはリリアただ一人。
彼女は静かにノートを差し出す。
指先が震えていた。
それが罪悪感なのか、安堵なのか、自分でも分からない。
> (……イベントを、壊した。)
内心の声が、遠くのノイズに吸い込まれていく。
昼下がりの風はまだ優しいのに――
この世界だけが、確実に“冷たく”なっていた。




