シーン5:夜、自分のステータス異常
夜の部屋。
静寂に沈んだ空間に、パソコンの待機音のような微かな電子ノイズが混じっていた。
月明かりだけが、鏡の前に立つ莉々亜の輪郭を浮かび上がらせる。
BGM:――第1話のメインテーマが逆再生される。
旋律が歪み、時折、鐘の音が逆さに響くように重なる。
莉々亜は、鏡の中の自分をじっと見つめていた。
その瞳の奥、ガラス越しの世界に“データの揺らぎ”が走る。
鏡面に、赤いウィンドウが次々と浮かび上がる。
《好感度:0》
《ルート消失》
《存在データ破損》
静寂の中、電子音が低く鳴った。
莉々亜:
「……存在を失う、って。
こういうことなのね。」
その瞬間、画面の下端から新たな警告が走る。
血のような赤いフォントで。
《消失警告:観測者ID_002》
《バックアップ不可》
莉々亜の指先が震える。
触れようとした文字は、淡い光を放ちながら消えた。
まるで彼女の存在ごと、システムから削除されるように。
――鏡の中。
そこには“もう一人の彼女”、
ドレス姿の悪役令嬢・リリアーナが立っていた。
ゆっくりと微笑む。
リリアーナ:「壊す者は、必ず壊れるの。」
声は囁きのようで、しかし確かに響く。
その微笑みには、どこか哀しみが宿っていた。
莉々亜は目を閉じ、静かに笑った。
莉々亜:「そう……。
なら――私の破滅ごと、このシステムを終わらせる。」
その瞬間、鏡全体がひび割れるように光を放ち、
ノイズとともに世界が白く塗りつぶされていく。
《システムコマンド検知:Terminate.All_Flag()`
《権限不明ユーザーによる終了処理》
――そして音が途絶えた。
残ったのは、ただ一つの断続的な鐘の音。
「ゴォン……ゴォン……」
それはまるで、物語の終わりを告げる音のようだった。




