シーン4:屋上・ミナとの対話
夕暮れ。
沈みかけた太陽が、校舎の屋上を朱色に染めていた。
フェンスの向こうには、茜雲がゆっくりと流れている。
その光の中で、ミナは――泣いていた。
ミナ:「どうして……そんな顔するの……?」
声が震える。
莉々亜は、フェンスにもたれたまま、ただ沈黙していた。
彼女の瞳には、どこか遠い世界を映すような、冷ややかな光が宿っている。
ミナ:「莉々亜ちゃんだって……誰かを好きになっていいのに。」
その言葉に、莉々亜の肩がかすかに揺れた。
けれど、すぐに小さく微笑む。
莉々亜:「恋は――罠よ。」
ミナ:「え……?」
莉々亜:「好感度が上がれば、
誰かのエンディングが決まる。
でもその分、他の誰かの物語は閉じられる。
この世界の“ルール”がそう決めているの。」
ミナは涙を拭いながら、首を振る。
ミナ:「そんなの、ルールじゃない……罰みたい。」
莉々亜の表情が、一瞬だけ痛みを帯びた。
夕日がその頬を照らす。
そして――静かに呟く。
莉々亜:「罰よ。
私は“悪役令嬢”だった。
恋を壊し、物語を乱した罰。
この世界じゃ、私にはバッドエンドしかないの。」
風が吹き抜け、二人の髪を揺らす。
その瞬間、ミナが胸元のペンダントを強く握りしめた。
小さな宝石が、淡く光を放つ。
その光が、莉々亜の顔を優しく照らした。
ミナ:「それでも……私は信じたいの。」
「恋が、プログラムじゃない世界を。
気持ちが、数字やスクリプトじゃ測れない場所を。」
莉々亜は、息を呑んだ。
風の音の中に、どこかで鐘の残響が混じる。
莉々亜:
「信じることさえ、運命の演算式の一部だったら?」
しかし――
その一瞬、二人の頭上に浮かんでいたUIが重なり合った。
莉々亜《観測者モード:固定》
ミナ《メインヒロイン:アクティブ》
数値がちらつき、ノイズが走る。
そして、奇跡のようにノイズが――消えた。
風だけが残り、世界が静まる。
その静寂の中、莉々亜の唇がわずかに動いた。
莉々亜:「……もしかしたら、あなたが正しいのかもね。」
ミナが顔を上げる。
泣き笑いのような表情で、ただうなずいた。
太陽が沈み、画面が暗転していく。
最後に浮かぶのは、淡い文字列。
《変数エラー修正中……》
《新たなフラグが生成されました》
そして、鐘の音がもう一度響いた――
まるで、二人の“選択”を祝福するように。




