シーン3:教室の“巻き戻り”現象
放課後の教室。
オレンジ色の光が斜めに差し込み、
黒板に映る影がゆっくりと伸びていく。
窓の外では、春の桜が風に舞っていた。
甘く、穏やかな恋愛ドラマのラストシーンのように――。
カイトとミナが、教室の中央に立っていた。
どちらも真剣な目。
周囲の時間が止まったように、静まり返る。
カイト:「……俺、ずっと前から――」
ミナ:「……うん、知ってた。でも、私も……!」
二人の距離が、わずかに近づく。
その上空に、淡い光が浮かび上がった。
《恋愛ルート確定》
まるでゲームのエンディングのような演出。
校舎の外では、鐘の音が鳴り始める。
莉々亜は、教室の後ろの席で、その瞬間を見ていた。
――そして、異変が起きた。
BGMが途切れ、
次の瞬間、“音”が逆再生を始める。
甘い旋律が歪み、
笑い声が逆流し、
桜の花びらが風を遡って窓の外へ戻っていく。
莉々亜:「……時間が、戻ってる……?」
教室全体が、ノイズに包まれた。
机も椅子も、輪郭が乱れ、データのように分解されていく。
空中に赤いウィンドウが次々と出現する。
《干渉行為検知:フラグ修正中》
《因果ループ警告:#Lilia.Error=LoopDetected》
カイトの姿が揺れ、ミナの涙が空中で停止した。
逆光の中で、全ての情景が「巻き戻し」の映像のように吸い込まれていく。
莉々亜の頭上に、システムバーが浮かび上がる。
淡い青だったステータスバーが、ゆっくりと赤く染まっていく。
《好感度:0》
《タグ:BAD END確定》
莉々亜は静かに息を吐いた。
逆再生する教室の中で、彼女だけが“前へ”進んでいるようだった。
莉々亜(苦笑しながら):
「壊すって、こういう意味だったのね。」
指先を伸ばしても、世界は応じない。
だが、その笑みの奥には――確かな決意があった。
莉々亜(心の声):
「いいわ。なら、何度でも壊してみせる。
この“確定ルート”という檻を。」
そして、鐘の音が再び鳴り響く。
逆再生の終点――
彼女の“断罪”が、もう一度始まろうとしていた。




