シーン2:校舎の影で囁く声
旧校舎の中は、
放課後の光が届かないほど静まり返っていた。
薄暗い廊下。
古い木の床が軋む音だけが、規則的に響く。
天井の蛍光灯はところどころ点滅し、
まるで心臓の鼓動みたいに不安定に明滅していた。
莉々亜は、ゆっくりと階段を上る。
一段、また一段。
足音が、やけに反響する。
――そして、二階の踊り場で、ふと立ち止まった。
何か、いる。
そんな気配が、背筋をなぞった。
けれど振り返っても、そこには誰もいない。
埃っぽい空気が、ゆらりと揺れただけ。
その時だった。
「……また、あなたの番よ……リリアーナ。」
耳元で囁くような声。
冷たく、甘く、記憶の底から這い出すような響き。
莉々亜の息が止まる。
その名前を、呼ぶ者など――この世界にはいないはずなのに。
莉々亜(心の声):
「誰……? どうして、私の“前世の名”を……?」
視界が、突然ノイズに覆われる。
現実が“画面”になったかのように、砂嵐のような粒子が走る。
そして――
宙に赤い文字が浮かび上がった。
《System Warning:外部入力検知》
《干渉ソース:不明》
空気が微かに歪む。
階段の壁が波のように揺らぎ、
その向こうに、別の層の現実が透けて見える。
まるで、世界そのものが「データ」でできているように。
莉々亜は、息を潜めながらつぶやいた。
「……やっぱり、この世界……誰かが“見てる”。
私たちは、プレイヤーじゃなくて――観測対象。」
揺らいだ空間の奥で、
微かに何かの“指先”のような影が動いた。
まるで誰かが、画面の向こうからこの現実を操作しているかのように。
階段の照明が一斉に点滅。
次の瞬間、何事もなかったかのように静寂が戻る。
莉々亜のスマホが震えた。
画面には、ひとことだけメッセージが浮かんでいた。
《次の鐘が鳴る時、選択肢は消える。》
彼女はスマホを強く握りしめた。
――“見られている”感覚だけが、まだ消えなかった。




