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ワクワク文化祭レビュー:後編1

「きちんと許可を取って試合ができれば見応えのある出し物になったかもしれないけど……いや、あの選手ふたりなら絶対どっちか、もしくは両方とも洒落では済まない怪我をしそうだし許可を出さなかった生徒会は英断だったと言わざるを得ないかな」


「本当に、凄く見応えのあるオッ……試合になりそうでしたけど本当に残念でした」


「……」


 つい零れかけた本音を慌てて取り繕ったものの、新田が無表情だった。

 不二の背中を冷たいものが流れる。


「え、えっと……ちょっと早いですけど体育館行きましょうか」


「ソウダネー」


「演劇部の出し物はロミオとジュリエットらしいですよ。生徒会との合同だそうですが」


「フーン、ソッカー」


 会話が続かない。


「そ、それにしても演目が鉄板っていうかあれですね! ええと、その」


 なんとか話題を繋ごうと喘ぐ不二をみてさすがに可哀想だと思ったのか、新田が「仕方ないな」と肩を竦め機嫌を直して微笑む。


「まあ普通の筋書きにはならないと思うよ」


「え、どうしてです?」


「うちの演劇部には、といっても今は生徒会だけれども、脚本に余計な茶々を入れて台無しにするのが大好きなやつがいるのさ」


 言いながらパンフレットのクレジットに目を通す。


「文化祭だけの限定復帰なのかな? なんにせよ早めに席を取るのには賛成だね。真ん中くらいにしよう。あまり前には行かないほうがいい」


「あっはい。えっと、理由を伺っても?」


 新田が小さく溜息を吐いた。


「巻き込まれるのはごめんだからね」


 体育館の中は既に薄暗く、ぱらぱらとひとが入り始めていた。

 舞台から遠過ぎず近過ぎもしない適当な席を確保すると再びパンフレットを開いてふたりで覗き込む。


「ほら。ここを見てみたまえ」


 肩が触れ合い新田の髪が不二の鼻先をくすぐる。想定外の接近で平静を保つのに必死になっている不二の様子にはまったく気付かずひとり納得顔の新田がパンフレットのキャストを指差した。


「ジュリエット役、二階堂(にかいどう)……って、生徒会長ですよね」


「そうだよ。ちなみに脚本書いてる(にしき)くんが副会長で元演劇部。さっき言ってた彼だよ」


「台本を台無しにするっていう」


「そういうこと。ロミオ役公募のポスターは見たっかい?」


「いえ、あんまり興味もなかったので。でも公募ですか。誰になったんでしょうね」


「応募者は全員参加で当日選考だそうだよ」


「ええと、なにを言っているのかよくわからないんですけど」


「というか今も枠が埋まり切ってないらしくてロミオを募っている。不二くんも参加してみたらどうだい? 上手くすればあの美人生徒会長とキスシーンを演じられるかもしれないよ」


 新田の表情はライトの都合でよく見えない。


「いやですよ。月の無い夜に外を出歩けないような生活はまっぴらごめんです」


 生徒会長はミス高嶺の花と言ってもいい校内の有名人。その彼女とキスシーンなんて後々のリスクが高過ぎるし、なにより万が一そんな展開になろうものならきっと新田が怖い。

 冷静に考えると先輩に口出しされるような筋合いは無いし不条理なものを色々と感じるけれども、とにかく残り半年もない本年度の放課後を丸ごと危険に晒すような真似は不二にはできなかった。


「そうかい。面白そうだと思ったのだけれども……おっと、募集の立て看板を片付けたな。定員がそろったみたいだ」


 そういって顔をあげる新田の表情は相変わらずはっきりとは読み取れないが、その声色は思ったよりも軽いような気がした。

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