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ハルベルク家の怪談 その1


よしっ。魔法の練習の時間だ。

時間帯は恐らく深夜、先ほど乳母にミルクをもらった。

ベッドでしばらく大人しくしながら乳母が椅子に座りながら寝落ちしそうなのを待っていた。

勝った…!もうすぐで私も寝落ちする所だったわ…。


今日は訓練所でハッキリと身体強化をしているのを見た。

私の想像は間違ってなさそうだ。

このふにゃふにゃの赤ちゃんボディでも自由に動けるように身体強化をマスターするのよ!

まずは…昨日は、ドラゴン○ールの真似をしたら何か体に満たされる感じがあったのよね…。

こう気を集める感じでいいのかな?。集めるってどこからだろう?やっぱ空気中から?


取り敢えずやってみよう。

オラに力を!

……

………

しばらく集中するとまた急速に体に何かが満たされる感覚があった。

きっきた!

けど…あれ?なんかちょっと待って。多い多い…!

体に満たされる感覚が止まることなく、むしろ破裂しそうな感覚になってきた。

ヒッ!怖い…ってどうしたら…

びくんっ!私の体はベッドの上で盛大に跳ねた後。

「おろろろろろ」

目一杯吐いた。


「リク様…!?」

慌てて起きた乳母がやってきた。

ただ、さすがのプロである。手元の鈴を鳴らした後、手早く私の口元を拭くと、熱や呼吸の状態を確認して異常がない事を確認していた。

当の私は吐いてスッキリしていた。

即座に医者のような人が部屋に入ってきて私に浄化の魔法をかけた後、触診を行った。


うーんなんて手厚い待遇…。

そんなお気楽な事を考えていた。

だが、私にとって誤算だったのは、次の日の夜から乳母とメイド二人体制で私を見守る事になった事であった。


……


困った…。

私が吐いた日から、深夜の監視体制が厳しくなった。

しかも寝る前におばあちゃんが毎日浄化の魔法をかけにくるのだ。

おばあちゃんが来る度に乳母とメイドが緊張状態になり夜にうたた寝なんかする気配ゼロだ…。


うーんこうなったら。

静かに特訓するしかないわね。


ドラゴン○ール方式は危険だから…。

体内に集める感覚はまだ危なそうだから体の表面で魔力を感じ取れるようになろう。

その日から若干0歳児にして丁寧な暮らしの意識高い系OLみたいに瞑想を始めてみた。

瞑想のやり方しらないけど。

取り敢えず私は魔力を感じるのが目標だから雰囲気でいいの!


……


しばらく私の瞑想での訓練とリリーがお散歩名目で警備兵の訓練所に近寄っては追い返されている日々が続いた。

なんだかお母さんは訓練所がとっても好きなようだ。

なんでだろ?


およそ三週間がたった頃(私の感覚的に)

急激に魔力というものが空気中を漂っている感覚がわかってきた。

…すごい…!

地球では体験したことない感覚だ!

意識を集中させると体の表面を魔力が撫でている感覚がある。

よしよし。ここで体全体に魔力を纏うのよ…。私!

……

ん…?体全体の感覚…?

困った…この赤ちゃんボディ。全身の感覚があんまりないのよね…。

まだ神経とかが発達してないからかなー。盲点…。

うーん。

あっ!これで魔力障壁とかできるのかな?


魔力障壁とはその名の通り、魔力でつくる障壁、バリアみたいなものである。

最近は毎日のように警備兵の訓練を見ていたのでアッシュ君が模擬戦のなかで使っている事に気づいた。

はっりと分かったのは集団戦の中ですっぽ抜けた剣がアッシュ君に飛んできた時にその方向に手をかざしたと思ったら剣が壁に当たったような動きをして地面に落ちていた。

あれは絶対魔力で作ったバリアだ。

魔力を感じられるようになったので私もできるかな?


うーん。取り敢えず手のひらに魔力を集中させて。手のひらに盾があるイメージ。

出来た気がする。うん。でも確かめる手段ないね?

どうしよう?

そんな事を考えながら手をブンブン降っていた。

あれ…?

バリアが手のひらから感覚なくなった。

その時…

ガンっ!!

ベッドの柵が大きく傷ついていた…。

ヤッバ!


「えっっ!!」

「…はっ?」

乳母とメイドさんが近づいてきた!

寝た振り!可愛く寝た振り!

スヤースヤー。


「どうゆうこと…?これ?」

「わからないわよ…マリー様やリリー様になんて言えばいいのよ…」

ヤバい、乳母とメイドさんが困っている。ごめんなさい…。

赤ちゃんだから…さ。仕方ないよね。

乳母とメイドさんがその後も小声でやり取りをしていたが私は眠くなっていた。

どうしようもないので赤ちゃんらしく寝かせてもらう事にした。

申し訳ありませんでした…。


………


その日、とあるメイドは順番がきてしまったか…と覚悟を決めた。

夜勤でのリク様のお世話が回ってきたのだ。

赤子の公爵家三男のお世話。という点だけを見ると責任重大な職務でありそれに選ばれるのは光栄なことだ。

だが、使用人の中でちょっとした噂になっていることがあった。


リク様は夜中になると気味が悪い笑い声をあげる。夜中になるとあの黒い瞳が爛々と輝きだし悪魔が付いているんじゃないか?

と…

ただし、これはほんの一部の使用人の中で話されている事である。

執事長やハルベルク家の人間に聞かれたら解雇だけでは済まなくなる。


そんな噂を聞いていたので、夜中のリク様のお世話は嫌だったのだ。

ただでさえハルベルク家の庭に隣接する森から人の叫び声や魔獣の鳴き声まで聞こえてくると言われている。

ちなみにこちらの噂はハルベルクの使用人の大半が知っている。


そして…

運が悪い事に私の番で恐ろしい事が起きてしまった…

ガンっ!

と大きな音が鳴った。

慌ててリク様のベッドに近づくと…リク様のベッドが傷ついていた。

月明かりしかなくても、ハッキリとわかるレベルでベッドの柵が傷付いている。 

リク様は…

あんな大きな音がしたのに嘘でしょ?って思うけど寝ている…。

なんなのよ…。


次の日。

乳母とメイドはベッドの傷について執事長から詰問を受け、マリーを加えてまでの尋問になってしまった。

幸いにもマリーは使用人達は嘘をついていないと判断し、誰もお咎めなしとなった。

ただしリクにとって誤算だった事は、洗礼と呼ばれる儀式を受けるまでの間リリーとロレアルの寝室で過ごすことになったのだった。


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