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魔法との出会い その2

その日はやってきた!

部屋の外に出られるのだ。お母さんもたぶんそんな事を言っていた。

お母さんや乳母であればなんとなくだが、何を言っているのかわかるようになってきた気がする。

これも赤ちゃんスペックなのかしら?

後、どうやら私の名前はリクと言うらしい。

この世界の名前がどんな感じかはわからないけど、日本人の感覚からすると少し男性的に感じる。


やっぱり!

お母さんは私を抱っこすると部屋の外に出た!

もうこれだけでテンションMAXである。


気づいたら死んでいて、ひどい目に合って、気づいたら赤ちゃんに転生していて…

あの狭い部屋に閉じ込められていて(実際はとんでもなく広いが)、いよいよこれが私の第二の人生の第一歩だわ!


リクは気合十分にあたりを隈なく観察しながらリリーに抱っこされながら散歩した。


…ここは玄関ホール?大広間?なの?

高級なホテルのエントランス、または映画の世界でしか見たことないような光景が広がっていた。

正面には車でも通るの?と思うような大きな扉から見るからに豪華そうな絨毯。

いたる所に配置された沢山のソファや椅子。

大きな扉から見て正面の位置には、巨大な肖像画が飾ってあり獅子を模した装飾が施された額縁に入っている。


あれはご先祖様なのかな?こんな家を興すなんてすごい…。

よく見るとライオン?と思われる銅像もいくつか飾ってある。

この世界は中世ヨーロッパの世界なのかな?


その時リクに近づいてくる男性がいた。

お母さんが私の紹介をしているようでおじさんも私の名前を呼んでカッコいい仕草で挨拶をしてきたので返事をしてあげたら驚いた顔をしていた。

ふふ。赤ちゃんだけど頭脳は大人なのよ!


その後もお母さんがひっきりなしに私を紹介して少し疲れた。

というか結構な人数が常にこの広間にいるのね。

本当にすごい所に転生してきたわ…。


次の場所に抱っこで運ばれていると心地よくて寝そうである。

やっぱ赤ちゃんは体力ないな~。


次に連れてこられた場所は、居間だった。

居間といっても端から端の人は会話ができるの?って思うような長いテーブルが広い部屋にポツンとおかれているような部屋だ。

ここにはおばあちゃんがいた。

結構な頻度で私に会いにくるので私も大体家族の顔と名前は覚えている。

まぁ皆美形。それだけでも私はこの人生にヤル気が出てくる。

だって私も絶対美少女でしょ。


お母さんが優雅にお茶をしているおばあちゃんに近づき何か喋っていると思った時だった。

おばあちゃんの手からキラキラした光が放たれ、私とお母さんに吸い込まれていった。

え!え!え!

今の何!?魔法?魔法なの?

今絶対魔法だった!

あるんだ!この世界には魔法が!


どんな魔法があるんだろう?私も早く魔法を!使いたい!

興奮した気持ちのまま色々と考えていた所、気づいた時には本が沢山ある部屋に来ていた。


こ!ここは!書斎!

この世界の事を知るためには私が今一番来たかった場所の一つ!

お母さんが少し書斎に入ったところで見渡して軽く説明した所で去ろうとしたから必死でひきとめた。

「あーー」

待って待って待って待って。

もっとここにいたい!

なんか読んで!見せて!


そんな思いが通じたのかお母さんが図鑑を見せてくれた。

うわっこれ全部手書き?文字は勿論読めなかった。

気持ち悪い魔物みたいなのが書かれている…。

あっこれゴブリンじゃない?

え?この世界ゴブリンいるの?


ワクワクと図鑑を眺めていたが、お母さんはメイドさんに渡してしまった。

でも部屋に運んでくれるらしい。

さぁお仕舞いと移動しようとするもんだから私はめちゃくちゃに暴れた。(生後一月ちょっとの精一杯の抵抗だが)

お母さんは少し残念そうだったけど、どうやら書斎を詳しく教えてくれるようだ。

さすが!お母さん大好き!


その後もこの本棚には何が~みたいな紹介をお母さんは一つ一つしてくれた。

なに言っているかは雰囲気で分かった気がする。

途中、魔法についての本棚を紹介している事に気づいたのでその本棚ですっごいアピールしたら。

一番簡単そうな本もメイドさんに渡してくれた。

先ずはこの本を理解する事だ。私も魔法を使うんだ!

そう思ったのもつかの間、赤ちゃん特有の抗えない眠気に襲われ、私は気づいたら眠っていたのだった。


……

ぱちっ!私は目をかっぴらいて起きると、ベッドの横に本が2つ置いてあることを確認した

そして…

「おぎゃああああ」

泣いた。ミルク!取り敢えずお腹を満たす!


私が泣いたのを聞きつけ乳母とメイドが少し慌ててやってきた。

私が泣くの珍しいよね。

乳母にミルクを飲ませてもらった後は、ベッド横の本に手を伸ばした。


メイドがどうぞと本を手渡してくれた。

といっても私は本を抱え込むような形で抱っこされているだけであり、読む所ではないのだが。

そこで、ベッドに降ろしてもらった後は、乳母とメイドにこれを読めと言わんばかりに本をバシバシ叩いた。

乳母とメイドはそんな私をニコニコと見ているだけだった。


違う~読んで欲しいの~

しばらくそんなアピールをしていたが私の願いは通じなかった。


その日の深夜。

ダメだ。赤ちゃんの私じゃまだ一人で座ることすらできない。寝返りだって出来ない。

こんな不自由な体で意思伝えるの無理ゲーじゃない?

そんな事を考えていた。


あーあ。魔法使いたいな…。

おばあちゃん手から光を出して私に吸い込まれたよな…。

魔力のようなものが体内にあるのかな…。

そうだ!身体強化的な魔法ができたら私のこの不自由な体がなんとかなるんじゃない??


まずは魔力か…うーん。気を集める感じ?とかかな?ドラゴ○ボールの元気玉みたいな?

従兄弟のお兄ちゃんがよくやってたな、カメハ○波とか…


よし!

私はベッドで寝ころびながら万歳の姿勢となった。

オラに力をっ!

………

………

………


っふ。なんてね…。

えっ!

その時だった。体の中に水が詰め込まれるような感覚があり、体が膨れ上がるような勢いで上半身が起きてお座りの体制になってしまった。


っぎゃ!

びっくりして気が抜けると体から力が抜け、倒れこんでしまった。


「?」

物音に気付いた乳母が私の様子を見に来て、私が何事もない顔をしていると小首をかしげながらベットメイキングをして、また椅子に座った。


危ない、危ない深夜でもちゃんと部屋に乳母いるのよね…。

それにしても…

私できたよね?

何がってわけじゃないけど。魔法?


フフフ

私はニヤニヤした顔が抑えきれなかった。

だって出来たんだもん。

アハハ…!



「キャッキャ」

「…」

月明りしか刺していない暗い部屋の中で、リクの笑い声が響いていた。

普段は感情起伏が乏しい赤ちゃんが真夜中に笑う姿は不気味だと乳母は思った。

悪魔とか憑いてないよね…?


「キャッキャ」

「…」

その日、リクは疲れて眠るまで笑っていた。


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