2つに…?
お父さんが出張でいない夜、私はお母さんと彩耶夏と三人でリビングで楽しく過ごしていた。
なるべく部屋にいたくないという思いもあって…。
久しぶりに三人で女子トーク?ではないけれど、会話に盛り上がっていた。
お母さんが、
「もうそろそろお風呂に入って寝なさい。」
なんて言うけれど、私は、
「もう少しいいじゃない!?」
と時間を稼いでいた。
遅くなれば、しゃべるワンちゃんも出ないだろうと思って。
夜遅くに出たら嫌だなぁ。
だから幽霊じゃないってば。
恐る恐る部屋に戻った、
自分の部屋なのに。
怖がりな私は、念のためクローゼットの扉を、開けっ放しにしていた。
単純に開けるのが怖いから。
でも全開しても死角になる部分も少しある。
私、怖がりすぎだよ。
あのワンちゃんは怖いものではないはず。
不思議と、恐怖を与えるようなことはしないと感じた。
だから大丈夫、
落ち着いてゆっくり過ごそうと思った。
結局その夜、ワンちゃんは現れなかった。
でもただそれだけでなぜか嬉しかった。
お父さんが出張から帰って来た日、私はお父さんをこっそり部屋に呼び、ワンちゃんのことを問いただそうとした。
お父さんは何て話そうか、ちょっと戸惑っている様子だった。
「お父さん、ごめんね。
出張で疲れているのに…。」
と言うと、
「彩夏音。」
と呼ぶ声が…。
出た!?
あのワンちゃんだ。
クローゼットの方を見ると、
いた。
そして、ゆっくりと私に近づいてきた。
よくみると、ワンちゃんは少しげっそりしていて、この前よりもかなり疲れているように見える。
どうしたんだろ?
私に近づきながら、また前のように私の方に手をかざした。
するとあのペンダントが再び現れ、この前以上の輝きが…。
その輝きの中にまた私がいた。
以前の、中学生の時の私の姿が、まるで走馬灯のように駆け巡っていた。
その中には、なぜか乾君の姿も…、
どうして乾君が?
乾君とは高校で知り合ったはずなのに…。
乾君…。
そうだ、
と思った瞬間、パラッと何かが床に落ちた。
見るとペンダントが落ちていた。
でも私のペンダントはそのままある。
えっー!?
ペンダントが2つに?