新しい友達。
「おはよう、乾君!」
私の登校後は、この言葉から始まる。
高校生活はとても居心地が良くて、さわやかだ。
でも私と同じ中学からこの高校に入学した人は少ない。
同じクラスに顔馴染みである人が一人もいなくて、正直最初はちょっと不安だった。
友達が出来るか心配していたけれど、隣の席の乾君が、私のその不安を解消してくれた。
優しくて、こまめに話しかけてくれる。
まだ友達や話し相手があまりいない時には、私が一人にならないように接してくれた。
感動的、良い人~。
乾君と話している時に、乾君とは逆の、反対側の隣の席の品川彩心ちゃんが、偶然興味のあった内容だったのか、会話に入ってきてくれて仲良くなった。
品川さんとは同じ電車通学なので、駅までも一緒に帰る。
ある日、
「笹崎さんって…。」
「あっ、彩夏音でいいよ!」
「じゃあ、彩夏音。
私のことは彩心でいいよ。
彩夏音ってもしかして、乾君のこと好きなんじゃない?」
ドキッとした。
どうしよう。
返事に困っていると、
「やっぱりね。」
と言われてしまった。
「実は私も好きな人いるんだ。」
「誰?」
「同じクラスの東雲君っているでしょう。
東雲翔夢君。
同じ中学だったんだぁ。
その頃から好きだった。
絶対同じ高校に行って、告白するぞって決めてたの。
だから中学の時は、ひたすら勉強を頑張ったよ。」
「そうだったんだ~。
好きな人と同じ高校に行く、
って目標にしてたんだあ。
いい話だね。
それよりも私、東雲君ってどの人かわからないな。」
「えっ!?
彩夏音には男子は乾君しか見えてないの?」
「そんなことないよ。
明日確認してみるね。」
「それよりも、彩夏音はどうしてうちの高校に来たかったの?」
「それが覚えてないんだよね。
何か目標があったような気がするんだけど、全く…。」
「何それ!
記憶喪失?」
「まさか…。
そんなわけないでしょう。
冗談言わないでよ。」
そういえば私、中三の時の記憶ってすごく曖昧だったような…。
きっと受験勉強で忙しくて、バタバタしていたからかも。
「アハハ…。
彩夏音って面白いね。
今度学校の帰りにお茶しない?」
「絶対行く~。
寄り道出来るなんて、高校生って楽しい~。」
私は、新しく始まった高校生活にワクワクしていた。