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超常系女子とヤバめの宗教  作者: 御野笠吾
2/2

縛り影 2

私情により投稿が遅くなり申し訳ございません。

水っ気のある咀嚼音の中に、時折硬いものを砕くような音が聞こえる。


目が覚めると私は薄暗いコンテナの中にいた。

身体を起こすと、鼻を刺すような異臭が立ち込めている事に気がつく。腐った臭いと排泄物とアンモニアの臭いだ。

先ほどから手にヌルッとした感覚があるが……まあ確認しなくてもその正体はわかるだろう。


コンテナの中に転がっているモノ達は、もはや救いようが無いので無視するとして、一つ気になるのは今私が全裸であることだ。


さながらミロのヴィーナスのごとき美麗な御身体が一糸纏わぬ姿で立っているのは、流石に刺激が強すぎるのでとりあえずコンテナの中に転がっているモノから赤く染まった布切れを見繕い、恥部を隠しておく。


応急の下着と言うか服と言うか……ともかく隠せる物は入手できたので、さっきから響いている行儀の悪い音の元に向かう。


音の聞こえてくる方に向かうと、薄暗いホールのような場所に、ムカデのような脚を持った生物が十幾対ある手で食べかけの獲物を持ちながら、嬉しそうにナニかをモグモグしている。


暫くクチャクチャと音を出しながら食べていたが、肉をちぎるようなブチッという音の直後、何か重い物が地面に落ちる音がした。

何が落ちたのか気になるので目を凝らして見てみると……そこに落ちていたのはヒトを上下で2分割した時の上部だった。

しかも私の。


「ではここでSANチェックです」という声が、普通の人なら聞こえてきそうな光景だが……

まあ、いくら私とはいえ自分が美味しく食べられている光景を見ると少し気分が悪くなる。

おまけに下半身から食べられているわけだ、このムカデモドキは変態か?


(食べるなら上からにしてくれよ。)


さて、まんまと私は捕まってしまった上に、ムシャムシャされている訳だが、その様子をずっと観察していたら変質者と思われそうなので、とりあえず本来の目的に移ろう。


……何か言いたそうだね。

何故私が食べられているのに私はその様子を見ることができてるのか?と言いたそうな顔だ。

確かに不思議だね、私が幽体離脱して自分の事を見ていない限り、この視点は不可能だよね♪

でもまあ、答えは簡単だ。分裂した、それだけ。

厳密に言えばプラナリアのように分裂したわけではないが、そこを説明すると長くなるので後にしておくとする。

ちなみに今食べられてる方とは仕様上一部の感覚を共有せざるを得ないので……まあ不愉快。


さて、今度こそ本題に移ろう。

私がここに来た目的は目の前にいるコイツを狩るためだ。


コイツは"縛り影"と言って、影の世界に潜み生活する、非現者と動物の中間のような生物だ。

生息数の多さと出現条件の緩さから"怪異といえばコイツ!!"という感じになっている。


コイツの討伐方法はかなり面倒くさい。

まず、外骨格が非常に硬いために並大抵の銃撃が弾かれるため、銃器の火力で押すというのは難しい。

そして知能もある程度高く、魔法を回避したり相殺したりしやがる。おまけに移動速度もそれなりに速いため、溜めてデカイ一撃をお見舞いするというのも難しい。

まあつまり、チマチマ削っていくしかないのだ。

"本来なら"……な。


私は別だ。

今からお見せしよう私の実力を。


_______________________



頭が重い。ついでに体も重い。

微かな草の香りがして、意識が戻ってくる。

まだ寝起きのような感覚が残っているが、ここでグダグダしてる訳には行かないので、とりあえず周囲の状況を確認する。


周囲には高さがバラバラで先端の尖った木製の柱がいくつも立てられている。

その先端にはよく見る部位を持つ肉塊が刺さっている。

ニンゲンという生物に似た物だ。

あくまでニンゲンに似た生物であって、人間ではない。

というかそうとしか考えたくない。

他にも、それぞれの柱に渡された紐には同じく肉塊がぶら下がっているし、時々黒い液体が滴り落ちている。

腐敗臭も相まってとても気持ち悪いね。


ふと地面を見ると焚き火の跡があり、その回りには骨が散らばっていた。まだ焚き火の跡は暖かく、ついさっきまで何者かがここで食事をしていたようだが、周囲に動物や超常存在のような者は見られない。

何を食べていたかは言うまでもないだろう。


……そういえば


赤場(あかば)さん、死にましたか~?」


「この程度で死ぬわけないだろ。」


大声でそう叫ぶと、ちょうど後ろにあった廃病院の中から疲れたような声で返事があった。


廃病院(この)中は腐った死体だらけだ。恐らく縛り影と共生してる非現者の拠点なんだろう。主に食糧庫として使っているらしい。」


「あちゃ~それは御愁傷様ですね。」


もう生命活動を停止した人間を見たところで気分が悪くなるだけなのでどうでもいいが……非現者の食料になってるならなおさら見たくもない。


「……お前人間か?」


「何か言いました?」


「言ったが……まあいいさ、お前なりの向き合い方なんだろうな。」


何か呆れられたような感じがするが、"私なりの向き合い方"とやらでどうにかしておこう。


「ここに生存者はいないようだな。まだ生きている可能性にかけて、先を急ごう。」


「そうですね。もっとも、人間がこの有り様だと生きている可能性はゼロに近いでしょうけど。可能性はありますからね、可能性は。」


「お前みたいな奴の価値観でゼロじゃないなら大丈夫だ。探す意味はあるから探すぞ。」


「了解です。」


この惨状の中、生存者が無事かどうかは分からないが、確かに生きている可能性はある。


恐らく、生存者がこの空間に引きずり込まれたのは、私達がこの縛り影の世界に入るほんの数分前だと思われる。


縛り影は現実(人間界)に干渉する際、建築物の影などを用いて手のような部位を作り出し、その手を通じてこの世界に引きずり込むのだ。

その時、現実には微量の空間の歪みができ、重力が軽くなったり物体が歪む等の跡ができる。その跡は空間の歪みの発生から約10~15分以内に元に戻るのだが、私達があの場所に到着したときに微かながらその跡が残っていた。


つまり、引きずり込まれた高校生はまだ縛り影(アイツ)に捕まってから20分も経っていない。おまけに縛り影は捕まえた食料を貯めておく習性がある。

……この習性は信じるに値しないが、考慮しておくくらいの余裕はあるにはある。


現状、運が良ければ無事か部位欠損、悪ければ即食われて終了~といった感じだ。


(せめて衣服の欠片でも落ちてれば私の能力で追えるが……現状それすら無いんだよな)


私が生存に否定的なのは、時間以外にこれも要素になっている。


この世界に入ってきた時にも衣服が中に浮かんでいる光景を見たように、アイツは人をモグモグする前に服を識別し、食料が着ている衣服は破り捨てる。

魚を食べる時に鱗が付いていたら不快だろ?人間に例えるとそんな感じだ。女性物の服が多いのも、女性の方が肉が柔らかいとかそんな理由だ。人間の私から見ればただの変態だ。


その習性は食料を貯蓄する時も例外なく同じで、食料が着ている服は捨てるのだが……それが見当たらないのだ。


どういう事かというと……どういう事かは分からないが、とにかく服が見つかっていないのは良くも悪くも重要な要素だ。


服が見つかっていないなら、何らかの方法で縛り影から逃げ出して今も逃げていると考えられるし……

一番考えたくないのは……

と、その時、視界の端に折れた鉄パイプに引っ掛かって破れたような布が見えた。


(あれは_______!)


「赤場さん!服見つけましたよ!」


そこにあったのは■■■高校のスカートの切れ端のようだ。少し血がついているのが不安だが…

すかさずその切れ端を手に取り、意識を集中させる。


金色に輝く線のような物が手に持っている布切れに集まり、徐々に羽の形をなしていく。

その羽はふわふわと私の回りを漂った後、尾を引きながら右前方に見える巨大な廃墟のような建築物に向かっていった。


「あの建物です。」


「随分気味の悪い場所を住みかにしているようだな。本番だ、死ぬなよ。」


「この程度で死ぬわけないじゃないですか。」


フラグとかではなく、この程度の非現者(ざこ)相手に負けることは無いのだが、それは実践で示すとして……速くしないと死人が増えるのは事実だ。


腰に下げてある剣を抜き、剣先をあの廃墟に定める。


(本体が見えれば簡単なんだけどな……まあ、ある程度絞り込めたら後はお祈りって感じかな。

ん?……引きずり込まれた奴、とりあえず生きてはいるみた______)


突如、宙に浮いていた異様な雰囲気を醸す廃墟が轟音を伴い破壊された。


「……は?」


内側から爆ぜるようにして破壊された廃墟、その破片と共に巨大な黒いムカデのような生物が、鈍く光る鎧を纏った幾本の腕によって弾き出される。

間違いない、縛り影だ。


あまりにも唐突すぎて、脳の処理が間に合ってないが……こういう時に限って脳は最悪の予想を立ててくれる。


(非現者同士の争いか)


見たところ、縛り影を吹き飛ばした非現者…と見られる者は、縛り影よりも遥かに強いようだ。


何せ……


ミシミシと音を立てた直後、生々しい音を立と大量の血を噴き出しながら縛り影の体が千切られた。苦しそうな金切り声が異質な空間に響く。

この怪力には引かざるを得ない。


「……嘘でしょ」


ふと赤場さんを見ると、銃に手をかけたまま固まっている。

"あり得ない"といった表情だ。

そりゃそうだろう、雑魚とはいえ非現者が一撃で、その力だけで半分にされたのだから……あり得る方が珍しいものだ。


「あの手に見覚えあります?登録されている非現者のデータは全て見ましたが、少なくとも私は見覚えないですよ。」


「俺もない。あれは完全に新しい非現者だ。」


どうやら面倒くさいパターンようだ。

いや、面倒くさいと言えるような場合ではないのだが、縛り影が腕力だけで半分にされている時点でもう面倒くさい。


「どうします?あの腕と戦うことになったら、私が前衛、赤場さんが支援という戦法が通用しないように思えますが。もし私が前衛をしたら貴重なカワイイJKがただの肉塊になっちゃいそうですよ。」


「……まあそうだろうな、あの力を相手に真正面から殴りあえる奴は2人しか思い当たらん。」


(ガン無視ですか……というか、あの力相手に殴りあえる人間がいることに驚きですけど……)


「戦力が2人しかいないのに作戦を考えたところで意味はない。……お前、確か遠距離から攻撃できたよな?」


「できますよ。……強行手段に出ようとしてません?」


「できるんだったら大丈夫だ。俺が前衛をやる。お前は適当に支援しとけ。どうせ片方が死んだら片方も死ぬんだ、適当でいい。」


そう言って、赤場さんはこちらまで飛んできた血しぶきを物ともせずに腕の一本に向かって飛んでいった。

無策すぎるというのも怖いものだ、なぜなら


(遠距離攻撃……赤場さんには言ってないけど、あれ使うと下手したらこの空間消し飛んじゃうんだけどな……まあいっか、死ぬときは死ぬって赤場さんも言ってたし‼‼)

私情により投稿が遅くなり申し訳ございません。


誤字脱字等があったら教えてください。

感想もお待ちしております。

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