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まずは自分の実力を把握しました

「腰が引けているよ。そんなんじゃ力が逃げてしまう」



「狙いが定まってねぇ! 攻撃は的確に狙え!」



「防御をするなら急所をしっかり守らないと駄目だよ。致命傷は避けないと」




「てめえらが相手に出来るレベルの魔物なんざ、急所を狙ってまっすぐ来るんだ。複雑な動きをするわけじゃねぇ。もっと目を凝らして相手の攻撃をよく見て守るか避けるかしねぇと本番でしくじるぞ!」



ノイジとマーヴィが新人冒険者たちの攻撃をいなしながら、武器の扱いや身体の動かし方に指摘をしていく。



「さて、最後にキミだ」



新人冒険者たちの指導を終え、マーヴィがこちらへ向いた。



「テイマーとはいえ、戦闘技術を学ぶことはいい心構えだと思う。キミの指導は、自分がしよう」



「よ、よろしくお願いします」



にこやかに言うマーヴィに、カイトはぎこちない笑みで応じた。



短剣を両手で持ち、正眼に構える。刃物の扱いなぞ分からぬカイトにとって、短剣とは言えずしりとした武器の重みに自然と喉が鳴った。



「い、行きます!」



「どうぞ」



構えることもなく佇むマーヴィに、カイトはそのまま突っ込んだ。短剣を両手でもったまま、右肩を狙って斬り下ろす。



「短剣の弱みはそのリーチの短さだ。それを両手でより短くすれば、相手によっては避けられてしまうよ。まずは剣を片手で振り回せるようにしようか」



その場から一歩後ろへ下がることで楽々と回避したマーヴィは、空いている左手でカイトの右手に手刀を叩き込んだ。短剣を取り落としたカイトに、にこりと笑い、「続けよう」と促してくる。



カイトが右手で短剣を持ち、再び斬りかかると、今度は素早く後ろへ回り込み、その首筋に軽く剣を添えた。



「思い切りはいいが、狙いが甘い。相手の急所をしっかり狙わないと、君の技量では無力化は不可能だ」



「は、はい……っ」



それから何度も挑み、その度に何かしらの指摘をしながら手刀や目や首筋などの急所に剣を添えられる。それを十は越える回数繰り返し、マーヴィは剣を鞘に収めた。



「息も上がってきたようだし、一回休憩しようか」



「あ、ありがとうございました…っ!」



まったく歯が立たなかった。上位ランクとここまで差があるのか。



肩で息をしながら、カイトはそう思う。今まで武器を手にしたことがなかったので、実力は底辺であるとは思ってはいたが、子どもと大人のじゃれあいにしかならなかった事実は自分の無能さが際立つようで情けなかった。



『カイにぃ、お疲れキュー』



『あるじー、お疲れ様なのにゃー』



ハインから離れ、こちらへやってきたレンとネロが、膝をついたカイトにすり寄る。すると、身体が温かいものに包まれる感覚がして、ふっと身体が軽くなった。



ネロは膝に乗り、服の境目から影をカイトの手のひらまで伸ばし、カイトの手に水の入ったコップを出現させた。



『お疲れなあるじのために、用意しておいたのにゃー』



「あ、ありがと。ネロ」



良くみれば氷で出来たコップである。これはもう一匹感謝しなければならない子がいるかもしれない。



口付けたコップに入った水が、疲れた身体に染み渡る。疲れからか、甘味すら感じる水を半分ほど煽って、カイトは息をついた。



「俺、近接戦向いてないのかねぇ…」



『剣や槍みたいな取り回しの扱いに慣れてないだけにゃー。武器の扱いに悩むなら、拳なんか使った格闘戦すればいいにゃー』



「うーん、でも、魔物を拳で沈める自信はないなぁ」



打撃で敵を倒すなんて芸当、特に鍛えてもいない現時点でできる気は欠片もしない。



『そんな難しく考えなくても良いキュー。カイにぃが苦手な分野はレンたちがやるキュー』



「ありがたいけど、情けなくないか…?」



『そんなことないにゃー。誰にでも向き不向きはあるにゃー』



レンとネロの言葉に、涙が出そうだ。



だが、可愛い子達を働かせておいて、自分は何もせずにいるなんて、はっきりいって人間として駄目だろう。戦闘能力が四匹に及ばないとしても、努力を忘れて良いことにはならない。



それに、努力すればするほど、技術とは向上するものである。未来の自分に期待しようとカイトは両頬を叩いて気合いを入れた。



「よし、今度こそ!」



『カイにぃ、ファイトだキュー』



『あるじー、頑張れにゃー』



二匹に背を押され、再びノイジやマーヴィと手合わせする新人に混ざり、カイトも短剣を使って訓練に精を出す。もしかしたら武器の相性が悪いのかもと、他にも弓矢や槍などの武器にも手を出しつつ、己の戦闘技術を磨いた。



終わった頃にはへとへとになり、レンに回復魔法をかけてもらってやっと動ける程度に身体を復調させ、なんとか帰路についたのである。

というわけで訓練その二。



まだまだ慣れない異世界に戸惑いつつも、出来ることは進んでチャレンジするカイトはいいこちゃんで間違いない。



ペットたちに働かせるだけでなにもしない飼い主になる気は毛頭ないあたり、命を養うという責任感はある模様。



ただし今世はそんな彼を甘やかしたい子達に囲まれているけれどね! 前世頑張ったご褒美だよね!



私だったら甘えてばかりでなにもしない飼い主になる自信がある。カイトはそんな作者からみてもしっかり者なので、頑張ってくれることでしょう。



今回も読んでいただきありがとうございました(*´▽`*)



また次回もよろしくお願いいたします!

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