表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/42

町に入って身分証を作りました

「そういやぁまだ名乗ってなかったな」



「はい、そうですね」



町の門まで連れてこられたカイトは、共にここまで来た男にそう言われ頷いた。



「そうだな、まずは非礼をしたこちらから名乗るとするか。俺はローバスト。ここの門番を守る連中を率いる頭だ。大体のやつは短くロブと呼ぶから、お前もそう呼べばいい」



「ロブさん、ですね。わかりました。俺はカイトと言います。この子達は右からルイ、レン、アル、ネロです。よろしくお願いします」



「あぁ、よろしくな。さて、町へ入る手続きだがーーー」



一度言葉を止め、こちらを見た後ルイち四匹に視線を滑らせたロブが、静かに問うてきた。



「一応聞くが、身分証はあるか?」



「………持ってません」



「だと思ったよ。………田舎暮らしのやつは大抵常識知らずだが、お前は筋金入りだな。ほんと、ここまでよく生きて来れたもんだ」




予想していただろう返答に、ロブがあきれたように力なく笑う。そして掌をこちらへ向けた。



「じゃあ、身分証の代わりに保証金だ。銀貨二枚を出せ」



ひくりと顔がひきつったのをカイトは自覚した。まだこちらの金銭を見たことがない。どうしようかと悩んでいると、ネロが軽やかに右肩へ乗ってきた。



『ネロにおまかせなのにゃ! あるじ、手をポケットの中に入れるにゃー』



ネロの闇魔法がカイトの首筋を伝って右腕へ降りていく不思議な感触がする。しかし不快ではないそれを黙ってやり過ごしていると、右掌に硬い感触が突然現れる。



驚いて手を出して広げると、そこには銀色に輝く硬貨があった。



「丁度二枚だな。貰うぞ」



ロブが広げた掌から硬貨をつまみ上げるのを呆然と見ていたカイトに、肩に乗るネロが嬉しそうに話しかけてくる。



『あるじが困らないよう、この世界の貨幣については学習済みにゃ! お金も、アドラウスさまから十日程度なら余裕で暮らせる額をご褒美で預かってるのにゃ』



「………そうか。ありがとう、ネロ……」



本当に、うちの子達は優秀すぎやしないか。



宿についたら絶対に誉めて可愛がろうとカイトは思った。











「ーーーこのあたりが、主要な施設が集まった通りですよ」



「ありがとうございます、ツァールトハイトさん」



「長いですから、ハインでいいですよ」



門を潜ったカイトたちは、ロブにつけて貰った案内役ことハインについて町を歩いていた。



「まず、どこに行くべきでしょうか」



「通常であれば宿を取ったりする必要はありますが、それは自分がいますので大丈夫です。まずはギルドへ向かいましょう」



「ギルド?」



「いわゆる仕事斡旋所、といったところでしょうか。身分証の発行もしていますから、カイトさんは登録しておくべきだと思いますよ」



そうしてハインがカイトの胸元あたりに視線を落とす。そこには、包帯で頭をぐるぐる巻いて隠したレンが抱き抱えられていた。



希少種のなかでも幻とまで言われるカーバンクルたるレンを狙う輩が多いと注意を受けたカイトは、町に入って早々にレンがはぐれないように最も簡単かつ有効な手段として、抱えて運ぶことを選択した。



勿論他三匹も心配だが、一番狙われやすいレンを抱えなければならないので、三匹には自分から離れないよう強く言い含めてある。その際、ルイに縮小化で小さくなろうかと提案されたが、そのスキルを人前で使うのはまずいと直感したため、止めさせた。今はルイの背にアルとネロが器用に座り、ルイがハインとは逆の左側に並んで歩いている。



「ギルドで登録するときに、四匹が自分の従魔だと証も作られますので、もし彼らが拐われたとき証明になります」



「なるほど、それはとっておくべきですね」



素直に頷き、カイトはハインについていく。そしてたどり着いたのは、木造建築の三階建ての建造物だ。



「ダイヤウルフのルイさんはそちらの厩舎(きゅうしゃ)へ入れてください。他の子達はカイトさんから離れない限り大丈夫かと」



『僕だけ入れないのー?』



クゥン、としょんぼりしているのがあからさまに分かるルイの落ち込みように、ハインが困ったように言う。



「申し訳ないのですが、ルイさんはギルドへ入るには身体が大きいので、注意を受ける可能性が……はじめてのギルドで問題視されることはおすすめできません」



『カイトの迷惑にはなりたくないの。仕方ないのー』



『なら、アルはルイと待ってるピィ』



ぱたぱたと翼をはためかせるアルの言葉に、ルイが『ありがとなのー』と言って喜んだ。ルイが厩舎へ足を向けると、すかさずネロがカイトの左肩へ飛び乗り、楽な姿勢をとる。



『ネロは一緒に行くにゃー』



共に入るメンバーが決まり、ギルドへ足を向ける。ハインに促されるままに入った途端、無遠慮な視線を向けられ自然と背筋が伸びる。男女問わず品定めするかのような目付きで、少なからず意識してしまい身体が強張る。



それでもハインに遅れぬよう自身を叱咤し、カイトは一番左の受付まで足を運ぶ。そこには柔和な笑みを湛える妙齢の女性が座っていた。



「いらっしゃいませ。御用件はなんでしょう?」



「彼のギルドカードを作ってほしいのですがよろしいですか? 門番長のローバストの口利きで案内したハインです」



「ーーーかしこまりました。では、こちらに記入をお願い致します」



穏やかにカウンターの中から紙を取り出し、にこやかに言われてカイトは戸惑いながらそれを覗き込んだ。そして、微かに目を見開く。



まったく知らない文字だ。だが、読める。



差し出されたペンを受け取り、書かれている内容をに応じて頭に浮かんだ言葉を母国語で記入しようとすると、さらさらと手が勝手に動く。不思議に思っていると、レンが言う。



『カイにぃには、アドラウスさまの祝福があるキュー。言語理解もそれに含まれてるから、読み書きも大丈夫だキュー』



なるほど、と理解はしたがなんだか変な感じだ。頭のなかでは日本語が渦巻いているのに、手は違う言語を慣れたように書き進めている。



名前はカイトだけでいい。職業はルイたちと行動するからテイマーでいいはずだ。



だが、従魔の種類という項目に躓く。ーーー誤魔化せる部分は、誤魔化すか。



レンはともかく、ルイ、アル、ネロに関しては似た魔獣がいることは把握済みだ。事を大きくしたいとは思わないし、そちらで書こうと再び手を動かす。



「書きました」



「確認します」



受け取った女性が肩で切り揃えた胡桃色の髪を耳にかけながら、書類を確認する。



「名前はカイトさま。職業はテイマーですね。従えている魔獣は四匹ですね。種族はーーーなるほど」



女性が考え込むように指を顎先に当て、近くにいた職員を呼び寄せる。その職員も書類を覗き込み、目を瞠ったあと、こちらを見てから女性に頷いて見せた。



「能力に関しては書かなくてもよろしいのですか?」



「この子達に頼りきりなので、自分がどれだけ出来るか分からないので。すぐにでも書いた方がいいんですか?」



「いえ、あれば仕事を斡旋しやすいだけで、なくても問題はありません。ですが、こちらから紹介するより、そちらから選んで頂くことが多くなるかと存じます」



女性が示した右手側の壁には、様々な紙が貼られており、このギルドにいる人々は、それらの内容を吟味し、気に入ったものを剥がしてこちらへ持ち込んでいるようだ。



「なるほど。でしたら、大丈夫です。自分に何が出来るか把握した上で、また書きます」



「真面目なんですね。ですが、この書類はこちらで管理したうえで、あなたの適性を把握した上でこちらで更新していきますので、大丈夫ですよ」



にこりと青い瞳を細めて笑う女性が、手にした書類を待機していた職員に預ける。その職員は裏へ周り姿が見えなくなった。



「それでは、初めてのためEランクになりますが、よろしいですか?」



「Eランクーーーですか。あの、そのランクについて聞いても?」



「構いませんよ。ギルドでは能力に応じ、E、D、C、B、A、Sの六段階に分けて評価されています。初心者の方は基本的にEランクですね」



「ランクは依頼をこなすことで上がるんですよね」



「その通りです。ですが、ランクはこちらの指定した依頼を完遂していただかなければ上がれません。これは仕事を斡旋する上で必要な処置ですので、ご理解を」



女性の話を聞いていると、裏に回っていた職員が戻ってきた。職員が持つ小さなプレートを受け取り、女性がこちらへ差し出してくる。



「こちらが身分証になります。確認してください」



手渡されたプレートは鉄で出来ている。表にカイトの名前と職業、裏にルイたちの名前と種族が書かれている。レンだけは誤魔化せなかったが、他の三匹はそれぞれ本来とは異なる種族として、ダイヤウルフ、ファイアーバード、シャドウキャットと刻まれていた。



「それではこちらもどうぞ」



女性に差し出されたのは、白い紐だ。首を傾げながら受け取ると、彼女は笑いながらプレートを指差した。



「そのプレートの穴に通して首にでも掛けておいてください。失くさないようにギルドからの餞別です」



「ありがとうございます」



言われるままに首に取り付けたカイトに、女性は笑う。



「それではこれで登録を完了します。これからよろしくお願いしますね」



「こちらこそ」



かくして登録を終えたカイトは、今日のところは依頼を受けずに休むことを選択し、ギルドから出た。

皆々様、コロナや雪による交通障害などで大変な状況から始まった本年ですが、体調はお変わりありませんか?



こちらは雪掻きだけで腰痛めそうなくらいひっどいです。インドア人間に体力使う労働はしんどい。介護の援助よりこういった作業の方が孤独だからツラい。



さて、今回はちょっと個人的に嬉しかったのであとがきで思ったことを。



新しく更新始めた新作ですが、できてわりと早めに自分がフォローされるという奇跡を見ました。←本気でビックリした人



もうひとつの作品とこちらの作品のブックマークが一件ずつ減ってたので、「何か気にくわないトコあったんだろうな、楽しんで貰える作品書けなくて申し訳ないな」とか思ってたら、間違って逆お気に入りユーザーのボタン押してフォローされてるのみて「あれー?!(; ゜ ロ゜)」となりました。



たぶん、二作とも気に入って下さったんですよね。遅筆なダメダメ作者なのに、凄く励みになります。あまりあとがきでは触れませんが、ブックマークや評価なども、皆様に作品を楽しんで頂けているのだと分かる指標のひとつとして、大変嬉しく思っています。本当にありがとうございます。



まだまだ未熟ではありますが、読んでくださる皆様に楽しんで頂けるものを書いていきたいと思っています。ですので、まずはひとつひとつの作品が完結まで走り抜けられるよう頑張りますね!



それでは皆々様、今後も作者のリアルの状況と構成下手ゆえの遅筆でご迷惑をおかけしますが、気長にお付き合いくださいませ。


もう一方の作品はシリアス成分が濃厚な分、一話一話を試行錯誤しながら書いたり消したりしてるので、中々更新できないことが申し訳ないのですが、こちらは展開などはノリと勢いに任せて書いてるので、作者の調子が良ければ不定期とは言え多少更新は早いとは思います。



長くなりましたが、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました(*´∇`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] E,D,C,B,A,Sなら6種類だと思う
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ