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現状打破のため狩りに向かいました

本日二話目です。


未読の方はひとつ前にお戻りくださいませ!

事態の重さに亭主から話を聞き出そうとしたとき、再び朝に見た馬車が宿の前に泊まるのを見た。



警戒して身を強張らせるカイトを亭主は厨房へ押し込み、「静かにしてろ!」と言い放ち宿の表へ出ていく。共に厨房に押し込まれたマーヴィも、状況を呑み込めないながらも異変を感じて息を潜め事のなり行きを見守る体勢に入る。



「何の用だ。今そちらの話を聞いている余裕は……」



「おや。そんなことはないでしょう? 仕込みをするための食材の流通が滞っているようですから」



「……まさか、お前……!」



その言葉に、亭主が現状の原因を理解して気色ばむ。



「そこまでして料理長をやらせたいか!」



「おや、心外ですな。町の食材の流通が滞っているからこちらの経営も難しいと思ったまでですが」



「それもこの店の取引先を中心に圧力をかけたからだろうが!」



噛みつく勢いで叫ぶ亭主に、男は笑う。



「身に覚えがありませんな。わたくしは何もしておりません」



「その言葉を信じられると思うのか!」



怒号する亭主に説得は難しいと思ったのか男は身を翻した。



「今回は話し合いにならなそうなので失礼しましょう。またお邪魔しますよ」



馬車へ戻っていく男をねめつけ、苛立ち紛れに机を殴り付けた亭主に、カイトは馬車が走り去ってから駆け寄った。



「すみません、俺がこんな料理を教えなければ!」



「……言っただろうが。俺がてめぇの味に惚れ込んで無理言ったんだ。気にするな」



「………ねぇ、どういうことか、説明して貰って構わないかな」



振り返り、しまったと手で口をを覆ったカイトと亭主に、笑みを湛えてマーヴィが問う。



「この店の味……カイトくんがレシピを提供したというように聞こえたんだけど」



誤魔化しは効きそうにないが、どうしたものか。



迷うカイトの耳に、最近まで聞き慣れた声が入ってくる。



「Cランクパーティーの“野獣の牙”のマーヴィですね。養父(ちち)から気分にムラがあることと討伐以外の依頼を断ることが多くなかなかランクこそ上がらないが受理した依頼達成率は高いと評価されていたのを記憶しています」



振り返った先に、最近までともに行動していた青年が立っている。



「ハインさん……」



「すみません。期限まで日数があるのは理解していますが非常事態であることを知って参じました。不快ではあると思いますが少しだけご承知ください」



「いえ、自分の招いたことですから」



それでもまだ顔を見るのは苦く、ふいと視線を背けるカイトである。



「………カイトくん。彼は?」



「………このメウターレの領主の義息子(むすこ)ですよ」



「なるほど………つまり領主にうちのノイジの暴れ馬ぶりが筒抜けということだね。………何てことだ………」



ずぅん、と壁に手をついて落ち込むマーヴィに、ハインが苦笑する。



「領主ですからね。冒険者の情報収集は欠かせないんですよ。有益か有害か、判断して対応しなければならないので。ーーーそれはそうと」



ハインは亭主に視線を滑らせる。



「申し訳ありません。商業ギルドがいくつかの商店に商品を下ろさなくなったという情報が入ったので駆けつけたのですが、いろいろと遅かったようですね」



「いいや。来てくれたってことは、方策があるんだろ? 一応この宿は本家側だからな」



「ええ。とりあえず野菜などに関しては本家が税として取り立てた備蓄をあなたの提携先に下ろすかたちで売却します」



「いいのか?」



「後で少しずつ店舗で補充しますよ。私もあちら側のやり口に腹が立っているんです」



にっこりと笑ったハインは、次にマーヴィとカイトに視線を滑らせる。



「しかし肉に関してはこちらも備蓄はありません。冒険者であるあなた方に依頼の形で魔物を狩ってきてほしいのですがよろしいでしょうか」



「………それを、あなたに売ればいいのでしょうか?」



カイトが尋ねると、ハインは頷く。



「はい。それを店に本家が売却して流通を通常通りに回します。二年で貯めた備蓄のため数は少ないですが、この街だけの事態なのでいくらかは持つはずです」



「……なるほど。了解した。尋ねたいことはいろいろあるけれど、とりあえずはこの宿の料理が食べられなくなるのはこちらも困る。その依頼は受けよう。ーーー普段使っている肉は何かな?」



マーヴィが亭主に視線を向けて尋ねる。亭主はそれに簡潔に応じた。



「牛と鶏系の魔物ならある程度違いこそあれ大丈夫だ」



「なら、近隣なら斧嘴鳥(アックスビーク)とランペイジボーだろうね。了解した」



マーヴィはひとつ頷いて、カイトに視線を滑らせる。



「ノイジを見つけて早々に狩って夕方には間に合うようにしようか。何やら因縁があるようだけど、それは事態が片付いてから話し合いでもしてくれ。今は時間がない」



マーヴィの言葉に、カイトは目を瞑って大きく息を吐き出して諸々の感情を吐き出した後、頷いた。



「……分かりました。なら、すぐ動きましょう」



とりあえず現状打破のため、カイトは部屋で待機している四匹を呼びに階段を駆け上がった。







『十匹、ゲットなのー!』



『こっちは三匹捕獲キュー。誰か仕留めてキュー』



『了解ピィ! 一気に仕留めるピィ! 結界解除よろしくピィ!』



『こっちにも逃げ出したやつも仕留めたにゃー!』



「………ねぇカイトくん。君、自衛しなくても大丈夫じゃないかな………」



「……だからってルイたちに任せきりになりたくないんですよ……」



「……マーヴィ、今からでも別行動しないか。一匹も狩れんのはつまらん」



「……僕たちが見つけるより早くこの子達が見つけて狩る方が早いと思うから無駄じゃないかな……」



マーヴィと共にノイジを捕まえメウターレから出てカイトの体感で一時間ほど。丁度よく見つけたランペイジボーの群れを上空索敵によってアルが見つけ、ルイが群れを氷の檻で閉じ込めた。後はルイとアルが乱獲するかのように串刺しにしたり首を断ち切ったりして仕留めていく。それから逃れた標的をレンが結界で閉じ込める。ネロも影の鞭を奮って叩きのめしていく。



然程時間もかからずランペイジボーの群れが狩り尽くされる。



「とりあえず、これ、収納しましょうか。その後、アックスビークを狩りに行こうか」



『それならもう見つけてあるピィ! ここからあっち側ピィ!』



上空を旋回しながら周囲の警戒をしていたアルが、マーヴィたちとともに鞄の中ーーーと見せかけてネロの異空間ーーーに魔物を収納しているカイトに向けて、身体の向きで方角を示す。



「……既にアルが捕捉済みみたいです。南西の方向ですよ」



「………本当、君、戦闘学ぶ必要ある……?」



「……言わないでください……」



マーヴィの問いに、カイトは目を背けるしかなかった。

暫く更新できてなかったので、今日は二話更新で。



マイペースで大変申し訳ありませんが、たぶん今後も他の趣味と平行して書いてくし、仕事も忙しければまったく書けないと思うのでご了承くださいませ。



それでは、今回も読んで頂きありがとうございました(*´▽`*)

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