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何やら問題勃発しました

「あれ、君は……たしか、こないだの訓練で会ったね」



薬屋から離れ、街中を散策していると、向こう側から来た男に声をかけられた。



「あっ、こんにちは! この間は、いろいろお世話になりました」



「いいや。こちらも久しぶりに新人たちの訓練をしたからね。良い経験になってくれているなら何よりだよ」



にこやかに笑む男ーーーマーヴィに、カイトも微笑を浮かべて応じる。



「武器の扱いも戦闘もからきしなので、まだまだ腕は未熟なんですが…」



「最初はそんなものさ。僕だってまだまだ技術的には中間程度だしね。経験を積むのが一番の技術向上に繋がるのは間違いないよ」



「そういうものですか」



「あぁ、現に僕はノイジの手合わせに付き合わされていくうちに技術がめきめき上がったからね」



目がやや死んでいる。経験者の言葉は重みが違うが、それ以上に戦闘狂(バトルジャンキー)な相方がいる彼が可哀想に思えてくるカイトである。



とりあえず話題を変えよう。そう思ってカイトはマーヴィに尋ねた。



「マーヴィさんはこれからどちらに?」



「あぁ、最近人気の料理を食べに行こうと思ってね。人気すぎて中々食べるまで待つから時間がかかるんだが、その待ち時間すら食べた途端吹っ飛ぶくらい美味しいから最近行きつけなんだよ」



「そうなんですか。どこのことでしょう?」



「あぁ、宿屋も併設されている食堂なんだがーーー確か“雪風の徒亭”というところだ」



知っている。というかそもそもの元凶である。



「宿に泊まっている者なら待たなくても言えば毎食食べられるようだが、僕は別のところに泊まっているからね。可能な限り出向いて食べに行っているわけだ」



「そ、そうなんですか」



「可能なら宿を移りたいんだが、料理が魅力的すぎて宿の空きがないようでね。こればかりは出遅れたことを後悔するしかない」



嘆息する彼に、実は元凶なんですと言い出せるわけもなく、苦笑いで応じるカイトに、マーヴィが不思議そうに顔を覗き込んでくる。



「どうかしたかい?」



「あ、いえ、そのー……」



目を泳がせるカイトに、マーヴィはじっと視線を固定し離さない。



上級冒険者に嘘をついて後から険悪になるよりましか。それともそれを理解した上で秘密の厳守をすべきか。



さんざん思考を回した上で、カイトは素直に公開できる情報だけを白状した。



「……その宿、俺の泊まっている宿です」



言いはなった瞬間、ぱしっと左手首を掴まれた。思わずびくりと肩を揺らしたカイトだが、それより早く喜色の滲んだ声が飛んできた。



「ーーー是非とも一緒に食べに行こうか!」



逃がさないとばかりに掴まれた手が、怖いと思ったカイトはきっと悪くない。







宿に戻って食堂を覗くと、亭主がこちらを振り向いた。



「おぉ、あんたか。料理が欲しいなら取り分けるから待ってろ」



毎日仕込んでいるのに売れ行きが好調なおかげで大鍋でたくさんのスープを拵えている亭主にとって、カイトの要求するそれなりの量は大変なはずだが快く取り分けてくれるのはレシピを教えた特権か。とりあえず料理を貰い、厨房から出る。



「待っていたよ、カイトくん! 僕が持つから、部屋まで案内してくれる?」



喜色満面で出迎えられ、カイトは苦笑しつつ泊まっている部屋まで向かう。後ろから軽快な足取りでついてくるマーヴィに、ルイがぽつりと『ルイの取り分減っちゃうのー』と悄気ていたが、その辺は抜かりなく多めに貰ってきているので安心して欲しい。



扉を開け、マーヴィが料理を床に置いた。料理を取り分けるため鞄に手を伸ばすと、ネロがすりよってきたので、マーヴィに悟られることなく皿などの器を取り出せることが出来た。マーヴィも、手持ちの鞄ーーーおそらく収納魔法で拡張済みのものーーーから自分用の器を取り出してくれる。



それらに料理を盛り付けて、カイトは床に胡座をかいて座り込んだ。



手を合わせて料理に手を着け始めると、マーヴィは顔を綻ばせて料理を堪能し始めた。その量は細身の身体からは予想できないいい食べっぷりである。ルイのために多めに用意してもらったが、ルイと並ぶ彼の大食漢ぶりを見ると足りないかもしれない。



流石にこれ以上料理を要求するのは憚られるため、どうしたものかと思っていると、彼は料理が底をついたのを見て、少し残念そうな顔をしてからカイトに向き直った。



「まさか顔見知りの君が噂の宿の宿泊客だったとは。列に並ぶのは多少辛いから、並ばなくて済むならそれに越したことはないからね!」



にっこりと笑うマーヴィに、カイトは苦く笑う。確かに彼の食事量では、待つ間に腹が減るのは辛いだろう。



「けど、顔見知り程度の俺に一緒に食事をしようだなんて」



苦言のつもりで発言すると、マーヴィが真剣な眼差しで言い返してきた。



「食とは生きていく上で最も大切な時間だ。そして僕にとって、癒しの時間なんだよ…」



何て言ったって、と言葉を一度区切ってからマーヴィは俯いて言葉を溢す。



「あのノイジと組んでいくなら、楽しみがないとやってられないからね……!」



吐露された言葉が、強烈な怒りを孕んで吐き出されていく。



「毎日のように手合わせに付き合わされる上に、堅実な依頼より討伐依頼をやりたがるのを制止する」



顔の前で指を絡ませ手を組んで、静かに説明しているがその表情は大変険しい。しかも語調が強い。



「護衛や薬草採取などの地味な仕事をやりたがらないあれの尻を叩いて仕事をさせ、気分を損ねて仕事をしなくならないよう息抜きがわりに手合わせもやらなきゃならない」



荒々しい語調ではないが、力んで語る彼の顔は今までの記憶を想起しているのか苛立ちが顔に現れ始めている。



「とてつもなくストレスになるこの苦行、食べなければやってられないんだよ……!」



「……あの、なんでノイジさんとパーティー組んでるんです?」



とても不思議なので尋ねると、彼は疲れたような表情で笑った。



「お互い同じ孤児院育ちなんだよ。腐れ縁とは言え長年一緒に育ってきたからね。それに彼、意外と料理上手でね。それがなければ死ぬ気で逃げてるよ」



彼は苦く笑う。



「それに、あいつのダメ人間ぶりを知りながら他の人に任せるのも申し訳ないしね」



ーーーなんというか。苦労人な方である。



「さて、長居してしまったからそろそろ帰るよ。くだらない話に付き合ってくれてありがとう」



立ち上がったマーヴィが空の鍋を持ち上げ笑う。



「これは僕が運ぶよ。お金も払って帰るから」



「あぁ、送りますよ」



四匹に部屋で待つよう言い置いて、宿の厨房へと向かう。その先で、難しい顔をして黙り込む亭主がいた。



「あれ、どうかしました?」



「あぁ、あんたか。いや、ちょっとな……」



言葉を探すように視線を彷徨わせた亭主が、躊躇いがちに言う。



「晩の仕込みのための食材が、届かなくてな。どういうことかと買いに行ったんだが、食材を下ろしている店すべてに、食材が届かないと頭を下げられたんだ」



知らないところで問題が勃発していたことを知り、カイトは目を瞠って亭主の顔を凝視した。

生きてます。一応、生きてます。



オリキャラたちの設定振り返りつつキャラデザしたけど人はともかく動物たちが描けない。



普段人しか描かないしなぁ。十代から二十代あたりの男女のみ。イケオジとか肝っ玉母さんとか描けない。今更ながら自分の画力の低さに気づいた。



いや、小説書けって話なんですけど書き出したら止まらなかったので。暫くいろいろ描いてました。そこそこなものばかりだけど、ぐちゃぐちゃな線を綺麗にしたらそのうちあげるかも。



ただし色塗り苦手だから線画になるとは思う。いや、影の付け方とかよくわかんないし、ちっちゃい頃鉛筆と紙は手元によくあったけど色塗りの道具なんて常備してなかったから未だに不得手で手を出せなくなってつい。忙しさにかまけたのと読書やゲームに時間を費やしたのもあると思うが。



まぁそんな言い訳をしつつ、のんびりと書いてますので気長にお付き合いくださいませ。



今回も読んで頂きありがとうございました(*´▽`*)

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