【PVアクセス数二万達成! お礼SS】幻獣たちの子守時間
『むぅ。カイにぃと行けなかったキュー』
『仕方ないの。レンの力が頼りにされてる証拠なのー』
『……それなら、頑張るキュー』
カイトが買い出しに向かった後。家に残されたルイとレンは、そんな会話をしながらティオの看病をしつつ、ユニの面倒も見ていた。
『あんまり近づいたら駄目なの。移るのー』
姉が心配でティオから離れないまま眠っていたユニを背中辺りの服を軽く噛んで起こさないようずる、ずると引っ張り一定の距離を保たせてから、ルイは別部屋で見つけた薄い毛布を掛け、己の尻尾で小さな身体をくるんで温める。
「あ、ありがとう。頭いいのね」
目を丸くしながらも、ルイの行動に感謝を述べたティオにルイは使えない尻尾の代わりに前足を軽く振った。気にするな、の意である。
「ほんと賢いのね……。こっちの言ってること、分かるみたい」
『そのとおりなのー』
肯定をするが、その言葉は届かず、ティオの耳には犬が鳴いたようにしか聞こえない。ーーーまぁ、気持ちを解するカイトと同じようにはいくまい。
『とりあえず休むキュー』
レンがティオの身体をぺたん、ぺたんとリズミカルに叩く。カイトが見れば子どもを寝かしつけているみたい、と言うだろう。
「っふふ、うさぎに、子どもみたいにあやされるなんてね」
初体験、と笑うティオが、こほこほと軽く咳き込む。
「なんだかのどが渇いたわ」
『了解なの! お水、用意するのー』
ルイがユニを温めているその場で氷で吸い飲みの器と水を生成する。そして氷を棒のように伸ばし、その吸い飲みをレンのもとへ届かせる。
氷の棒にくっついた吸い飲みをレンが器用に前足で取って、ティオの口に持っていく。
「何から何まで、ありがとね」
笑って礼を口にしながら、彼女は顔を傾けて水を飲む。口腔を伝って喉に降りていく感覚に、ティオは満足感を得て口許を緩める。
『満足したなら片付けるのー』
『ごはんはカイにぃが戻ってくるまでお預けキュー。今は休んで身体を労るキュー』
ティオが口を離したのを確認して、レンが宙へ放った氷の吸い飲みはルイが魔力によって砕け散り、水となって空気中に霧散した。
「ほんと、器用なモンスターたちだわ……」
そんなルイの魔法にぼんやりした目で苦笑したティオが、風邪によって失われた体力を保持するために深い意識の奥へ旅立っていく。それを確認して、レンが体力を回復させるため魔法を放つ。ティオの表情が和らいだのを見て、レンは一度ベッドから降りた。
『暫くは起きないキュー』
『了解なのー。カイが戻るまで守り番するのー』
ルイがのんびりと応じ、尻尾にくるんだ小さな身体を労りつつ横になる。
『レンはすごいのー。あっという間に怪我も病気も癒すのー』
『当然キュー。カイ兄が怪我をしてもすぐ治せるよう頑張ったキュー』
『ルイもカイが怪我しないよう守るけど、そっち方面はレンにおまかせなのー』
『お任せされたキュー! ルイも、怪我したらすぐ治すから言うんだキュー』
『ありがとなのー』
ほんわかする会話を繰り広げつつ、ルイとレンはカイトたちの帰宅を待つ。
『でも、カイはどんな料理を作るのか興味があるの。カイのママは料理作ってたけど、カイはまだやってなかったのー』
『レンもカイ兄の家に行ったことはないから分からないキュー。アルやネロは知ってるのかもしれないキュー』
『カイのママがスーパーへ出掛けてるとき、家で昼寝するカイと二人で過ごすことは多かったの。でも、流石にその頃は料理を教わっていなかったので知らないのー』
ルイはカイトが七歳の頃に死別している。レンも飼育小屋からカイトの家に行くことは叶わなかったため、彼の料理の腕前は未知数だ。
『どんな料理ができるのか楽しみなのー』
『美味しい料理が食べられたら嬉しいキュー』
そんな会話を妨げるように、ユニがルイの尻尾の中でなにやら呻いて身を捩らせる。
『起きたキュー?』
『違うの。魘されてるのー』
ティオのこともあり、夢の中でも嫌なものを見ているのかもしれない。ルイはあらためて尻尾でそっとユニをくるみ直して、前足でその頭を撫でた。
『ちっちゃい頃のカイみたいで可愛いの』
暫く撫でればふにゃりと口許が緩んだユニの表情に、ルイが、小さな身体に巻き付いた己の尻尾を稼働できる範囲で小さく振る。
レンもティオにしたように、ユニの傍へより、ぺたんぺたんとあやすように優しく叩く。
『レン、看病はしなくていいのー?』
『カイにぃに任された仕事はこのふたりの面倒を見ることキュー。だったら落ち着いている上の子の方は今は大丈夫キュー』
再び穏やかな寝息を立て始めたユニを確認して、二匹はのんびりと会話を再開する。
『カイにぃが出掛けてどれくらいキュー?』
『たぶん結構経ったと思うのー。もう暫くすれば戻ってきて御飯作るはずなのー』
『了解キュー。戻ってきたらお料理手伝うキュー』
『ルイもするのー!』
そんな会話をしている二匹が、母親に料理を教わり料理男子に変貌を遂げた彼の料理に惚れ込むことになるまで、あと少し。
以降、彼のレシピで作られた料理に、喜色満面で飛び付いていくようになるもふもふたちが爆誕するのも、遠くない未来となるーーー…。
これ二万お礼のやつ。なのに既にPV3万9千なんだが。………追い付く気がしない………!
………ま、まぁいいや。もう諦めた。個人的にPV突破祝いしてるだけだもん。小ネタだから多少短くなっても気にせず投下できるし。
本編現状殺伐としてるから、癒しを投下しなきゃやってらんないしね!
とにもかくにも短いですが楽しんでいただけたら幸いです。
読んで下さった皆様、ありがとうございました(*´▽`*)