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現状理解のため話を聞いてみました

翌日、朝御飯を食べてから部屋から出ず、ルイたちとまったりと過ごしていると、部屋の窓から昨日見た馬車が留まったのを見つけた。



「来た」



扉を薄く開け、耳をそばだてて音を拾おうとするが、よく聞こえない。どうしたものかと思っていると、アルがカイトに寄ってきた。



『カイト兄、下の様子を知りたいピィ?』



「あ、あぁ、そうだけど。昨日のこともあるから」



『了解ピィ! アルが上手くやるピィ!』



そう言ってアルが魔力を練り始める。



大気の囁きルヒト・フリュステルン



アルの魔法が起動し、風がカイトを取り巻く。途端、聞こえなかった音が聞こえてきた。



「ーーーでは、我が主の話を断ると?」



「あぁ。悪いが断る」



亭主の言葉が聞こえてきて、カイトはアルを見る。



「これって……」



『空気に伝わる音を風の力で集めてここまで運んでるピィ』



「そっか。ありがとう、アル」



頭を撫でてやると『誉めて貰えて嬉しいピィ』とぱたぱたと翼を動かすアルに淡く笑んで、カイトは声に集中した。



「ーーー俺は自分の作ったもんをあったけぇうちに食べて貰えるこの環境に満足してる。他へ行く気はさらさらねぇよ」



「我が主のお言葉さえあれば、名声も金も思いのままだ!」



「興味ねぇ。だいたい、俺みたいな下町育ちの野郎がそんなお堅い上流階級に雇われても、嫌な思いをするだけだ」



「それは我が主が表に立つことでどうとでもなる! 多少マナーは学んで貰うことになるかもしれんが…」



「今さらマナーなんて洒落たもん覚える気なんかねぇよ。そんなん無くたって、充分ここでやっていける」



亭主の言葉に、使者が歯噛みをするような声が聞こえてきた。カイトは話の流れを聞き逃すまいと固唾を呑む。



「ーーー分かりました。一度引きましょう。ですがすぐに後悔しますよ」



かつかつと歩く音がした後、表の馬車が動き出すため馬に鞭打ち、馬が鳴く声がした。扉から離れ、窓に近づくと馬車が既に通りを曲がっていくところだった。



「……なんか最後の捨て台詞が何か企んでそうで怖いんだけど」



それでもまだ陽も登り切っていない朝のうちに訪ねてきたため、行こうと思えば出掛けられそうなのは良かった。



カイトは街に出ようと立ち上がった。







「……孫たちを轢いたやつのお仲間がこの街をねぇ」



目を据わらせた老婆が低い声で呻くのを、さもありなんと思いつつも話が進まないのでカイトは尋ねる。



「長年この街に住んでるなら、主観であれ客観であれ何かしら感じてることはないかと思って来たんだが」



「ふん。まぁ確かに物の値段は上がったね。後、薬を買う連中は減ったのは確かさ」



「普通は怪我や病気を治すために買わないか?」



首をかしげたカイトに、老婆は腰掛けた椅子の背凭れに身を預け、考え込むように視線を落としたまま口を開く。



「そんな金すら食糧のために貯蓄する必要があるってこったね。あるいは単純に買える金がないだけかもしれないが」



嘆かわしいことだよ、と溢す老婆に同意を示すカイトである。



「うちも商売だからね。可能な限り原価に近い値段で売ってるが、それ以上はうちの生活が破綻するさね。悪いが孫を道連れに死ぬ気はないからね」



「まぁ、当然だな」



むしろそこまで価格を押さえているなら良心的な商売をしている。それ以上を望むのは酷だろう。



「食糧問題はどうにかならないのか?」



「侯爵家の土地とはいえ、つい三年ほど前に冷害があって食糧の備蓄は殆ど放出されたばかりさ。そんな連中がのさばってるならその備蓄も大して補充できてないだろうしねぇ」



詰んでいる。



本家たるセリエラたちは民たちのためにと献上されたものを蓄えているだろうが、分家たる家の方が信用できない。多少は備蓄しているかもしれないが、よろしくないものを隠すための裏金作りや、宴会のような派手なことをするために使っている可能性がある。



思わず天を仰いだカイトだが、何の解決にもならないと頭を振って後ろ向きな思考を振り払う。



「貧富の拡大、食糧問題、上層部の悪事……挙げればキリがないな」



「それだけ追い詰められているのさ。このメウターレはね」



老婆の言葉に、盛大な息を吐いてカイトはごちる。



「政治は男がするもんだー、じゃなくて、出来るやつがすべきだ、なんて思うのは俺だけかねぇ」



「仕方ないさね。この店だって女だからって最初は客足が遠退いてたくらいだよ。上手いこと作ったもんが売れてからは少しずつ軌道に乗ったがね」



「結局は結果を示すしかないわけか」



しかしそんな猶予がメウターレに残されているとは思えない。



「あー、手詰まりだこれ…」



「何も浮かばないなら悩むだけ無駄さ。別のことでもして気分を変えることだね」



老婆の言葉に、確かにと同意したカイトは立ち上がる。



「じゃあ、今日のところは失礼しますね」



二人の会話をじっと聴いて待っていた四匹を連れて、カイトは扉を開ける。



「この件に関してはいつでも相談受け付けてやるさ。こちらも他人事じゃないし、娘たちのこともあるからね」



「覚えておくよ」



最後に投げ掛けられた言葉に、了承の意を示し、カイトは扉を後ろ手に閉め歩き出した。

さて3月になってから、系列の施設から入れ替わりで異動してきた職員や新しく社員も入りました。4月になったら産休取ってた社員も戻ってくるので、フォローのため忙しくなり始めました。



いや、人増えるの助かるけど、育つまでどこまで仕事が増えるのかが不安です。私は趣味に没頭していたいんだが。



もう、最近アニメも休みの日に四、五話くらい連続して見てる感じです。とりあえず怪物◯変、カ◯ネくっそかわええ。コ◯ちゃんとのやりとり尊い。お互い胸のうちの感情分かってないあたりがもう……!



まぁ、そんな話は置いといて。



また更新ペース落ちると思いますが、どうぞのんびりとお楽しみください。



今回も読んで頂きありがとうございました(*´▽`*)

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