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さしむき街中を見て回りました

街へ戻ってきて、カイトはネロに仕舞っておかせた青い布を四匹の首に巻き付けた。



自分のことを騙していたことを知ったとは言え、頭のなかでは物に罪などないと理解しているからだ。それに、これを見るたびに自分の愚かさを思い返せるので今後行動を起こすたびこれは大丈夫だろうかと一度立ち止まるための戒めにも丁度いい。



ただ、四六時中つけていると自分の情けなさや騙されていたことに対する怒りが再燃してしまう。成人済みとはいえ、まだ大人になりきれるほど、世間の荒波に揉まれていない。結果、頭のなかではいくら理性が働こうとも、感情の面が抗う気持ちを捨てきれていないのだ。そのため、これは少しずつ付き合っていくしかないものだと、カイトは早々に布をつける場所、つけない場所を明確に分けることで、自分のなかで折り合いをつけた。



町中をうろつくときはつける。街の外や自分達しかいない個人スペースではつけない、といった具合に。



閑話休題(それはさておき)



ギルドへ赴き依頼達成報告をした後、カイトは今まで見ていなかった区画を見るためにも、少し寄り道をしつつ宿屋へ戻ろうと歩きだした。



「こうしてみると、酷いな……」



表通りは見目も気遣っているのか整然としているが、路地に入って角をふたつほど曲がれば、まるで違った景色が見えてくる。



草臥れた衣服を纏った人々がよろめきながら歩いたり、壊れた家屋に寄りかかりぼんやりと視線を彷徨わせている。あまりにも自分の知っている世界とは掛け離れた異質な空間に、カイトは立ち入ることは出来なかった。



すぐに表通りに戻り見た景色を反芻して、気付かなかった現実に自分の呑気さを思い知る。



それを理解しただけでも今日のところは充分だ。



カイトは今度こそ宿屋へ向けて足を進めた。







「ーーーでは、明日(みょうにち)あらためて来る。その際、此度の返事を聞こう」



宿屋から偉そうに居丈高に振る舞いながら、やけに小綺麗な身なりをした男が出てきた。周りに迷惑になることを厭わず堂々と宿屋の正面に停められた馬車に乗る男に、カイトは何者だと胡乱な目で見つめていた。



馬車が立ち去り、カイトは宿屋へ向けて足を踏み出した。そっと中を覗き込み、食堂のテーブルのひとつに腰掛けた宿屋夫婦が難しい顔で黙り込んでいた。



「………えっと、女将さん、どうしたんです?」



躊躇いがちに尋ねると、こちらに気づいた二人が視線を向けてくる。



「ーーーあぁ、お客さんか…。どうしたも何も、どっかのお偉いさんがコックに暇を出したから新しくコックになれと言ってきただけさ」



「てめぇの食べる飯より上手いもん食ってる庶民が許せねぇだけだ。かといってここまで来て食べるのもプライドが認めねぇ。だからこんな回りくどいやり方してきたんだよ」



馬鹿にしやがって、と吐き捨てる亭主に、カイトは困惑と罪悪感がない交ぜになったような複雑な面持ちで黙り込む。自分のもたらしたものがまさかこの宿に魔の手が忍び寄る結果を招き寄せることとなるとは。



「てめぇの味に惚れ込んだ俺が頼んだ結果だ。気にすんな」



周囲に聞かれぬよう、宿屋の入り口に立ち尽くしたカイトへ寄り、そっと囁いた亭主に目礼を返し、カイトは部屋へと戻るため階段へ向かう。



借りている部屋に入り、ルイたちを抱きしめぬくもりを分け与えあいながら、カイトは重く深い溜め息を吐き出した。



「これも自分が招いた結果か……」



『カイ、大丈夫なの。何かあったらルイが、なんとかするのー』



『レンもカイにぃのために頑張るキュー』



『アルもやるピィ』



『当然ネロもにゃー!』



「うん。ありがとう」



彼らに励まされつつ、カイトは天を仰ぐ。



まだまだ知らないで済まされないことは数多ある。



それを知るためにも、出来ることはしなければならないと、あらためて決意を新たに貰った猶予のうちの一日が過ぎ去っていく中を穏やかに過ごした。

すみません、切りのいいところで切るため今回短い……!



段々と物語が回り始めましたがどうなるか。というか、自分の物語が他者に受け入れられるのか心配になりつつ更新は頑張らないとと気合いを入れる毎日です。



それでは皆様、ご閲覧ありがとうございました。

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