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予想外なところで足止めを食らいました

ユニとハインを料理で労った後、カイトは特に立て込んだ予定もなかったため、そのままギルドへ直行した。



「今日は何の依頼を?」



「実践に勝るものなし、なんて言葉もありますし、冒険者らしく討伐依頼を受けようと思って」



まぁ、まだまだ技術については未熟なので、その向上のための依頼を見繕いたかったのが本音だ。戦闘技術訓練で剣、弓、槍など、諸々試したのに未だ戦闘は行えていない。このままでは、折角学んだ技術も錆び付くので、予定が空いた今、少しだけでもいいから鍛えたかった。



掲示板の依頼を眺める。アルミラージ、ゴブリン、スライム……Eランクでも受けられる魔物は多くいるが、さて、どれなら問題なくやれるだろうか。



「何かお困りですか?」



突然掛かった声に悲鳴が漏れ出そうになり、咄嗟に口を覆って振り向く。そこにいた声の主に、カイトは動揺を隠しきれないまま言葉を返した。



「り、リライノさん。こんにちは」



「こんにちは。昨日は素晴らしい成果を出してくださりありがとうございます」



「い、いえ。頼まれた仕事をやっただけですから。それより、何故急に声を?」



塩漬けになっていた未達成依頼が一部とはいえ解消され、昨日とは打って変わって晴れやかな顔をしているリライノが、折り目正しく一礼をした。それに無難に応じたカイトは、急に声を掛けてきた理由を尋ねる。



「昨日のお礼とともに、困っているようでしたので依頼に悩んでおられるなら相談に乗ろうかと。ーーーどんな依頼をお求めですか?」



「討伐依頼をしようと思って。普段この子たちに頼りきりなので、先日習った近接戦闘の訓練がてら、丁度いいのはどれかと……」



「左様ですか。でしたら……」



リライノが視線を滑らせ、一枚の紙を指差す。



「アルミラージはいかがでしょう? スライムのように物理が通らない個体ではありませんし、ゴブリンやコボルトのようにある程度の知性を持ち、集団で攻めることもない。一対一の戦闘に持ち込みやすいモンスターだと思いますが」



「へぇ……」



「また肉も美味しいので、下位の冒険者には人気のモンスターですよ。カイトさんでしたら、討伐後の肉の鮮度も落ちないまま運べるでしょうし」



「なるほど。なら、これにします」



「承りました。自分が処理をしておきますので、受付を通さなくて大丈夫ですよ」



その提案に、瞠目する。



「いいんですか?」



「はい。昨日の件のお礼としてはささやかですが」



にこやかに笑うリライノに、ありがとうございますと微笑む。



「討伐をするなら、装備も見直して行って下さいね。ギルドが紹介している武器屋をお教えしますので」



「何から何まで助かります」



リライノの好意に存分に甘え、カイトはギルドを離れた。










「……ここですね、ギルドの紹介してくれた武器屋」



「ええ。そのようです」



ハインと共にリライノから渡された簡易地図を確認して、店へ踏み込む。ごめんください、と声を掛けると「はいはーいっ」とやけに気安い声と共に、奥から青年がひとり出てきた。



「おっ、お客様っすか? いらっしゃいませっす!」



「こんにちは。討伐依頼を受けたので、武器を見繕いに来たんですが」



「了解っす! 使用武器はなんです?」



「……一応、近接戦闘の講習で一通り習ったけど、どれが向いてるかと言われると……」



「なるほどっす。つまり初心者さんっすね!」



明け透けな物言いで青年が笑う。



「じゃあ適当に何か振ってもらって向いてそうなの見繕う必要があるっすね! 時間はあるっすか?」



「は、はい。今回の討伐依頼は五日後まで期限があるので」



標的の居場所の探索、討伐諸々にかかる時間を鑑みれば、モンスター討伐にここまでの配慮がされているのは当然だ。ものによっては準備も要するから、下位のモンスターに関してもそれを含めた日程が組まれているのだろう。今日一日潰れたところで不都合はない。



「そんじゃあ、適当な剣で素振りでもーーー」



「ーーーごらあああぁぁぁっ! 馬鹿弟子いぃぃ!!」



「あ、やべ」



店の奥から聞こえてきた大音声に、カイトは思わず耳を押さえる。店員たる青年が、やっちまったとでも言いたげな顔をしている。店の奥から憤懣やるかたない様子でのしのしと歩いてきたでっぷりとした小柄な老人が、カウンターにいる青年に掴み掛かった。



「てんめぇ! 大事な資材をまた変ながらくたに変えやがったな! なんなんだあのおかしな半端ものは!」



「いやぁ、あれは俺なりのロマンをこれでもかと詰め込んだ武器でしてねー?」



「んなこと、まともなもんを作ってから言いやがれ! 特にこれ! 剣を丸めて平たくしたら使いづれぇだけじゃねぇか!」



そう言ってカウンターに叩きつけられたそれに、カイトは目を瞬かせる。



綺麗な円形の武器だ。リング状になった内側は持ったとき手が傷つかないよう鋭く研がれてはおらず、やすりでもかけたように丸みを帯びている。反して外側は触れただけで軽く皮膚が切れるだろうと傍目から見ても分かるくらい丹念に磨かれている。



前世では物語やゲームなどでしか見たことはない。だが、確実に見覚えがある。たしか名前はーーー



思考が答えを導きだそうとする中、何気なくそれを手に取ったカイトの背後で、武器屋の扉の開かれる音がした。



『カイー、なんかすごい声した、のー……』



交錯したルイの目が、カイトの手にしたそれを見て。



ーーー数秒の沈黙が降った後、喜色溢れる言葉が飛来した。



『フリスビーなのー!!!』



「断じて違う!」



確かに形は似ているが!



しかしそんな言葉が届くわけもなく、ルイが我を忘れて突進してきた。



『フリスビーなの、フリスビーなの! カイ、一緒にやるのー!』



「いや、これ買ってないから。それとフリスビーじゃない。チャクラムだ」



日本では円月輪とか戦輪とか言われる代物で、外国から伝わってきたんだったか、忍者のもつ投擲武器のひとつだったか、詳しくは知らない。



しかし、そんなルイが店内に突入してきたことで、師弟は唖然として口論を忘れ、カイトたちを見つめている。



「お、おい? お前、その武器、知ってるのか?」



やがて頭のなかが整理できたのか、先程までのルイとのやりとりーーーまぁ、カイトの言葉しかわからないはずだがーーーで、弟子の作った武器が実用に足るものなのかという疑念を抱いて老人が問うてくる。



「あ、えぇ、はい。俺の故郷でチャクラムと呼ばれる投げる類いの武器ですね。持ち手を作れば格闘戦にも使えると思います」



「ほらぁ、俺の考えた武器、実用されてるのもあるじゃないっすか! 師匠がお堅すぎるんですよ!」



「えぇい、たまたまこれがこいつの故郷で使われていただけじゃねぇか! 他のやつは間違いなくポシャるやつばかりに決まってるだろう、馬鹿が!」



「そこまで言うなら俺の発明見てもらおうじゃないですか! まだきっとありますよ、実用品!」



「……いえ、俺、とっとと失礼したいんですが」



ーーーそんな言い争いに巻き込まれたカイトが気迫に負けて鑑定した結果は青年の惨敗に終わったが。



「とりあえず、その武器の使い方を教えてくれ」



そんな武器屋の店主に言われるがまま、カイトは店の裏手の剣などの試し切り用に整えられた広場へ通された。

だんだんブクマやアクセスが増えてきて、「ねぇ、これ大丈夫? こんな気儘に書いてるのにこんなに評価されていいの?」と嬉しさとともに困惑や続きを書く不安など、諸々が吹き出そうです。



だってもふもふがこんなに人を魅了すると思わなくて……!



もう続きを書く手が震える。筆休めのつもりだったのにそんな軽い気持ちで書く状況じゃなくなってきた(;>_<;)



み、皆様に楽しんで貰えるよう頑張ります。



今回も読んで頂きありがとうございました……っ

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